取って出し注目NEWS:海外日本食「質の時代」が到来 淘汰と再編で新フェーズへ

2026.03.02 565号 09面
ロイヤルHD、銚子丸、双日の3社が設立した現地法人SUSHI-TEN USA Inc.は昨年末に米国1号店となる寿司レストラン「SUSHI NIGIRIBA」をオープン。ロイヤルHDはレストランチェーンの運営により蓄積してきたノウハウを、銚子丸は寿司の独自性と専門性、双日は国内外におけるビジネスネットワークと事業開発力というそれぞれの強みを生かし、米国での業態拡大を目指す

ロイヤルHD、銚子丸、双日の3社が設立した現地法人SUSHI-TEN USA Inc.は昨年末に米国1号店となる寿司レストラン「SUSHI NIGIRIBA」をオープン。ロイヤルHDはレストランチェーンの運営により蓄積してきたノウハウを、銚子丸は寿司の独自性と専門性、双日は国内外におけるビジネスネットワークと事業開発力というそれぞれの強みを生かし、米国での業態拡大を目指す

 ◇「日本食糧新聞」発 取って出し注目NEWS

 ●淘汰と再編で新フェーズへ

 世界で拡大を続けてきた海外日本食市場が、統計以来初めて減少に転じた。農林水産省によると、2025年の海外日本食レストラン数は約18万1000店。前回調査の18万7000店から6000店ほど減少した。06年の2万4000店から7.5倍に拡大してきた市場にとって、初のマイナスとなる。一見すると日本食人気の陰りにも映るが、実態は少し異なる。市場が成熟し、「量」から「質」への転換が進んだととらえるのが妥当だろう。急拡大を続けてきた市場は踊り場を迎え、健全な淘汰と再編の段階に入った。26年は日本食ビジネスが新たなフェーズへと移行する転換点となりそうだ。

 減少の主因はアジア、とりわけ中国にある。店舗数は約6万3500店と、前回調査から約1万5000店、2割近い大幅減となった。国内景気の停滞に加え、日本産水産物の禁輸措置が直撃した格好だ。欧州でもフランスやロシアなどで減少が確認されている。

 ただし、日本食市場全体が縮小しているわけではない。地域別では中南米が2割増、中東・アフリカも2割増と、新興地域で伸びが目立つ。日本のアニメや食文化への関心の高まり、健康志向の浸透が追い風となり、日本食のフロンティアは着実に広がっている。

 では、なぜ全体では減少したのか。背景にあるのは市場の「淘汰」だ。統計には、日本人が経営に関与していない店舗も多く含まれる。ブームに乗って開業したものの、品質や再現性が伴わなかった店が市場から姿を消した。いわゆる「なんちゃって日本食」の退場である。

 この流れを後押ししたのが、インバウンドの急増だ。観光庁によると、25年の訪日客による飲食費(速報値)は過去最高の2兆711億円に達し、1人当たりの飲食費支出は5万円を超えた。日本で“本物の味”を体験した訪日客は、帰国後も妥協しなくなる。消費者の舌が肥え、「日本食」の看板だけでは選ばれない時代に入ったと言える。

 加えて、日本の外食大手の海外展開も市場構造を変えつつある。吉野家、丸亀製麺、スシロー、サイゼリヤ、一風堂などは、現地ニーズを取り入れながら積極的に出店を拡大。手頃な価格で本物の味を提供する店舗が増えれば、模倣店が太刀打ちできないのは明らかだ。日本食は一過性のブームから、確固たるブランドへと進化しつつある。

 レストラン数の減少とは対照的に、日本の農林水産物・食品の輸出額は拡大基調を維持している。農林水産省によると、25年の輸出額は1.7兆円(前年比12.8%増)。内訳は農産物が1.1兆円(同12.1%増)、水産物が4200億円(同17.2%増)だった。輸出先は米国が首位で、香港、台湾が続く。緑茶、ホタテ、ブリ、和牛、ウイスキーなどは、高品質な「指名買い」の対象として輸出額上位を占める。

 海外の消費者は今、「安さ」よりも「本物」を選び始めている。「なんちゃって」が去った市場には、大きな空白が生まれた。世界は本物の日本食を待っている。質で勝負する日本の事業者にとって、本格的な海外展開のチャンスが広がっている。

 (「日本食糧新聞」26年2月18日付既報)

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