クローズアップ現在:寿司、ラーメン、おにぎり… 次なる行列インバウンドにウケる“日本フード”
「和モダン」を追求し、漬物を合わせた東京・築地「GINZA NISHIKAWA COFFEEROASTERY 築地店」の卵サンド。卵サンド自体、独自の“日本フード”だが、さらに斬新なアレンジが加わった。写真左から時計回りに奈良漬け入り、しば漬け入り、新生姜入り、味玉入り(各600円・税込み)/外食レストラン新聞26年4月号「メニュートレンド」より
日本流にアレンジしてしまうのがニッポンのお家芸。写真はラーメンにさらにアイデアを加え、ラーメンスープに細うどんを合わせた兵庫・尼崎「春ちゃんうどん」の「切り立てチャーシューうどん」(950円・税込み)/外食レストラン新聞26年5月号「メニュートレンド」より
開店前からズラッと行列をなしている外国人観光客のお目当てはピッツェリア(ピザ専門店)やピザが人気のイタリアン。今、“東京のピザは世界一”と外国人向けの口コミサイトでも話題だ。ピザに限らず海外の料理を日本流にアレンジしている「日本フード(筆者の造語)」が外国人の間に広がりを見せている。寿司、ラーメンに続く彼らを魅了するメニューの共通項を探った。
●日本のピザの何がウケている?
海外で開催されている世界ピザ職人コンテストで優勝をしている日本人は数多い。特にナポリピッツアに強みをみせている。といっても、本土のイタリアのピザは外側の生地が厚めのナポリピザや、全体に薄くパリッとした食感のローマピザ、地方のピザなど個性も豊かで歴史もある。なぜ東京のピザは人気なのか。
彼らに人気なのは、日本にしかないオリジナルのピザだ。魚がトッピングされたものや、マヨネーズ味、明太子味、目いっぱいのった海藻や昆布、ネギと鰹節など、本土にない味わいが新鮮に映るのだとか。さらに定番のマルゲリータも「本国よりおいしい」「クオリティーが高く安価」と感じているようだ。
●数々の海外の料理を「日本フード」に
ピザ以外でも、海外の料理を日本流に変えて「日本フード」にしたメニューは数知れない。ラーメンも中国の汁そばを日本流にアレンジした日本の食べ物だ。ジャガイモのコロッケはもともとフランス料理。ジャガイモではなくクリームコロッケで、ナイフとフォークを使ってレストランで食べるメニューとして存在する。日本に伝わった時に日本人は乳製品に馴染みが薄かったため、色が白くて身近な食べ物としてジャガイモが選ばれ、大衆のコロッケができたという。
クリームとジャガイモ。素材や味ではなく「色」が決め手だったとは面白い。コロッケはレストランに行かなくても食べられるメニューになり、インバウンドにもコンビニのコロッケは気軽に購入しやすく大人気だ。フライドポテトのように、そもそも世界中に「揚げたジャガイモ」料理はあるので、外国人にも違和感はないのだろう。だが、ジャガイモそのものに味がついていたり、フライの衣の食感が楽しかったり、油を使用しているのに後味がしつこくないなど、日本のコロッケは他の国の「揚げたポテト」料理とは異なるという。
オムレツにパンではなくケチャップご飯を合わせたオムライスも「日本に行ったらオムライスが必須」といわれるほど口コミ人気が高い。生卵を安心して食べられる国が少ないので、半熟のとろとろ卵にも期待があるようだ。すき焼きのような高値の料理や生卵はハードルが高いけれど、半熟のオムレツはイメージがつくのでチャレンジしやすい、という面もある。ご飯をケチャップ味にするのも新鮮な驚きがあるらしい。食べる前は恐る恐るだった外国人も、一口食べると一気に食べてしまうという。
カレーパンにも行列ができる。カレーをパンの中に入れて、衣までつけて揚げるという発想は日本ならではの工程だろう。
●外国人が食べたくなる共通項とは
挙げるときりがないのだが、こうした料理に共通するのは、「知っている料理が基盤になっている」という点だろう。ピザにせよカレーパンにせよ本国でも食べたことのある料理がベースなので、日本でチャレンジしやすい。ヨーロッパ、中国はもとより、先駆的なイメージを持たれるアメリカも、意外と新しい料理に二の足を踏む人は多く、「日本の旅行は終始コンビニ食」という人も少なくないので、慣れている料理であることは重要だ。
加えてバリエーションや個性の豊富さが日本は群を抜いている。カレーパンという一見単純な食べ物のようだが、中身のカレーは各店舗で個性があり、量も味も具材も異なる。
加えて緻密で繊細な食材同士のバランス力が、日本のグルメは優れている。単に「これとこれを合わせる」「上に魚をのせてみた」わけではなく、見た目の美しさに加えて口に入れた時の口どけや香りなど、トータルで嬉しくなるような、感動させるバランスを作っているのだと思う。
●あらゆる料理に行列ができる可能性
モノ作りの日本として一世風靡したかつての栄光は多少影を潜めてしまったが、商品を完成するまでの根気や忍耐、繊細な感覚は、食の分野で今も生きており、高く評価されているというわけだ。
海外の人にとって馴染みのある食べ物は多々ある。そこに少しアレンジをすることで、SNS映えをさせ、日本らしさを出すことで、外国人の目に留まる可能性はどのメニューにもある。新メニューの発想は、インバウンドが教えてくれる。物価高騰で大変な現状ではあるが、どんな業態の店にも“行列店になる”チャンスがある時代といえるのではないだろうか。
(食の総合コンサルタント トータルフード代表取締役 メニュー開発・大学兼任講師 小倉朋子)














