フードコンサルティング 上場企業にモノ申す(19)チムニー 数少ないMBO成功例
◆2年半で異例のスピード再上場
同社は昨年12月、東証2部に再上場を果たした。この再上場は、2つの意味で「異例」であった。1つは、投資ファンドと組んだ経営陣が、2010年4月にMBO(マネジメントバイアウト=経営陣による買収)のため上場2部から上場を廃止してから、わずか2年半という短期間で再上場を果たしたこと。2つめは、数少ないMBOの成功例であったことである。
◆親会社の変遷に嫌気?
もともと、ジャスコ(現イオン)の外食子会社として1984年に設立され、居酒屋チェーンを展開してきたが、97年に食肉加工大手の米久に売却されてからは、米久の親会社の変遷(キリンビール→三菱商事)のたびに仕入れや出店といった、外食経営の根幹の部分で大きな制約を受けてきた。
そもそも子会社化とは、当然ながら親会社の意向が優先され、子会社の経営の裁量には制約が課せられるものであるが、90年から同社社長として躍進の基礎を築いてきた和泉社長としては、繰り返される親会社の変遷に我慢がならなかったのではなかろうか。10年のMBO以前も、同社経営陣が複数の投資ファンドとたびたび接触していることは、証券業界では広く知られていた事実であった。
◆売上げとともに収益力も向上
同社は、10年4月に投資ファンドとともにMBOを実施したのだが、それ以前にも、特にリーマン・ショック前の06~08年にかけて、投資ファンドと組んでMBOし、いったん上場廃止にする外食企業は珍しいことではなかった。
当時、MBOした外食企業のうち、11年から12年にかけて、「すかいらーく」(11年10月)、「あきんどスシロー」(12年8月)、「レックス・ホールディングス(牛角)」(12年10月)が投資ファンドから再度売却されることとなり話題となった。
しかしながら、「あきんどスシロー」を除き、投資ファンドが買収してから業績が大きく拡大した会社はなく、「レックス・ホールディングス」に至っては、再生どころかグループ解体という完全に失敗した結末となった揚げ句、居酒屋大手のコロワイドに身売りを余儀なくされたことは、以前、本稿でもお伝えした通りである。
このように、MBOといえば聞こえはいいものの、再生が早期に軌道に乗らない場合は、すかいらーく創業家のように投資ファンドと対立して会社を追われるか、レックスのようにグループ解体の憂き目に遭うのである。
一方、チムニーの場合は、MBOを実施した10年9月期(決算期変更前)が売上高282億円、経常利益16億円に対して、12年12月期は売上高424億円、経常利益32億円と、売上げとともに収益力も向上しており、上場を廃止していた期間、それもわずか2年半の間に着実に経営改革に取り組み成果を挙げていたことが分かる。
「外食不況」といわれ始めてから10年近くになるが、縮小が続く外食市場で、しかも激戦の居酒屋業態を中心としながらも着実に成長し続け、投資ファンドや証券市場が求めるハードルの高い要求もクリアして短期間で再上場を果たした同社と、和泉社長の経営手腕を見ていると、「不景気だから赤字」は言い訳に過ぎないことを感じるのである。
◆フードコンサルティング=外食、ホテル・旅館、小売業向けにメニュー改善や人材育成、販売促進など現場のお手伝いを手掛ける他、業界動向調査や経営相談などシンクタンクとしても活動。