外食史に残したいロングセラー探訪(25)ファーストキッチン「ベーコンエッグバーガー」
「ベーコンエッグバーガー」
1977年10月6日、ファーストキッチン第1号店、池袋東武店がオープン。当時、大手ファストフードチェーンが既に出揃い、最後発としてのスタートは苦戦が予想された。だが、“ここでしか食べられない味”として幅広い層から支持を得た「ベーコンエッグバーガー」は超ヒットメニューとなり、メジャーチェーン化への足がかりとなった。
ファーストキッチンが、サントリー(株)の外食事業の要としてスタートしたのは1977年のこと。
「しかし、市場参入の最後発だったので、強烈なインパクトを持つ個性的な商品の開発が必須でした」と語るのは、ファーストキッチン(株)お客様相談室長の森茂樹氏。
先行チェーンのハンバーガーは、いずれもアメリカンスタイル。ならば、“ハンバーグ”の発祥地、ヨーロッパに着目し、「ヨーロピアンで行こう」とのコンセプトが決定し、店舗デザインや商品開発に反映された。ハンバーグとイギリス式朝食の定番ベーコン&エッグスを組み合わせた「ベーコンエッグバーガー」の案が採用されたのも、ヨーロピアンにこだわった結果という。
当時、専用のテストキッチンなどなかったため、商品開発が行われたのは、サントリー東京支社の8階にあった小さな給湯室。だが、ファーストキッチン事業プロジェクトは、サントリー社内でも極秘扱いであったため、モクモクと煙りの上がる給湯室の様子を、女子社員たちはけげんそうにうかがっていたという。
商品開発に当たり、役員からの要望は、「ハンバーガーは外国のものだが、日本人の味覚に合った味付けに」。元新宿東京会館のシェフ奥田佑三氏のアドバイスをもとに何度も試作を行い、100%ビーフのパティを使い、味付けはマスタード、ケチャップ、そして特製タルタルソースに決定。さらに、卵やベーコンの焼き方など、すべて日本人の味覚に合わせた純国産バーガー「ベーコンエッグバーガー」が誕生し、第1号店オープンと同時に発売された(当時200円)。
そして1979年からテレビCMが始まると、「ファーストキッチンといえばベーコンエッグバーガー」といった認知がさらに高まり、常に売上げトップを続ける超ロングセラーメニューへと成長する。
2007年、創業30年を迎えたが、溶けたベーコンの脂から立ち上る香りを卵にまとわせたベーコンエッグは、現在でも全店舗で1つ1つ丁寧に焼き上げられる。脂が溶け始めたベーコンの上に型を置き、卵を割り入れた後、黄身と白身をかき混ぜるのが「最初から最後まで変わらない味を楽しんでいただくための、大切なひと手間」(商品開発部マネージャー・森田泰彦氏)。
こうしたおいしさのための努力は、これからも変わらずに行われていくはずだ。
◆店舗データ
「ファーストキッチン」/経営=ファーストキッチン(株)/本社所在地=東京都新宿区四谷4-34-1 新宿御苑前アネックスビル5階/第1号店開業=1977年10月/店舗数133(直営126、FC7/2008年10月末現在)
●こだわり食材:ベーコン
ベーコンは、デンマーク産の豚ばら肉を、桜のスモークチップで薫煙したもの。形や歩留まりより香り重視のため、リテーナー(型)に入れずに、じっくりいぶして肉の内部まで香りを付ける。
創業時は、現在と比べると約半分の大きさで、さらに外側から見える盛り付けではなかったため、「ベーコンが入っていない」とのクレームが多かったという。
「厚みがあった方いいと、約2倍の大きさにしたこともありましたが、さすがに入れ過ぎでした」(森田氏)。厚みがあると脂が溶けにくく、味も香りも劣るため、現在の厚さ(約9g)がベスト。
さらに、卵と別々に焼き上げるのではなく、ベーコンを卵に貫通させた状態に仕上げ、盛り付けた際にベーコンが見える工夫もしている。