電化厨房最前線:カストール「レストラン カストール」

2009.01.05 352号 22面

東京都渋谷区上原は、今でこそ有名料理店の多い地域であるが、その草分け的存在だったのが、1984年9月にオープンした「レストラン カストール」。当初はガス厨房から始まったが、10年以上前から改装のたびに電化厨房機器を増やし、最終的には8割ほどの導入率であったという。そして2005年9月にケーキブティックを併設した店舗を京橋に移転開業。シェフの思い通りに作ったという厨房は、ほぼオール電化である。

「新店舗の厨房をほぼオール電化にした最大の理由は、労働環境を考えてのこと。私は現在56歳ですので、若いころと比べて確実に体力が低下しています。夏場ともなると軽く45~50度Cを超える厨房内で1日中働くことは、この先、体力面や健康面で厳しくなるでしょう。そこで、温度と湿度をコントロールして、汗をかかない、疲れない環境を求めた結果、電化厨房を採用しました」と藤野賢治オーナーシェフ。

確かに電気は調理中に排熱や輻射熱といった“捨てるカロリー”がなく、排出される水蒸気量も少ないので、温度・湿度のコントロールが容易だ。

「客席に厨房のにおいがまわる、外気に影響されて快適な室温を保てないというのは、電気、ガスに限らず、そもそもの空調設計がきちんと考えられていないから。空気の流れを考慮することで、温度や湿度をコントロールしやすいという電化厨房のメリットを最大限に引き出せるようになります」

さらには冷蔵庫のコンプレッサーも室外に設置するなど、室温安定のための工夫を行っている。

現在、導入している電化厨房機器はIHコンロ2台、平釜2台、スチームコンベクションオーブン、ブラストチラー、真空パック器、ホイロ、ウォーマー、洗浄機、サラマンダー、赤外線ヒートランプウォーマー、スモーカー各1台。そして厨房の中央に設置された、船舶用鋳物鉄板を使ったヒートトップレンジ(プラック)は特注品。IHコンロのように全体を均一温度に保つことではなく、場所によって高温・低温の差があることを求め、個別に温度調節のできる95×145cmのプレートを4枚並べたものだ。厚さ約2cmの鉄板内部にはニクロム線が入っており、400度Cまで加熱できる。温度差を利用して、1台で沸騰・加熱・保温と同時進行で調理できる。また、食材を直接焼くことも可能で、ステーキならば一度に30枚焼き上げられるという。

以前の約3倍、12坪の厨房にかかったイニシャルコストは4500万円。

「『個人経営のレストランで厨房にこんなに金をかけて…』と言われることもありますが、自分の思うように設計をし、満足しています。ランニングコストに、この快適な環境で得られるさまざまな効果も含めるのならば、結果として電気の方がコストパフォーマンスはいいのでは」と藤野氏。さらに、空気が汚れないことで空調をはじめとした設備が長持ちすると見込んでいる。

自分の働きやすい環境を追求していった結果、ほぼオール電化となった厨房づくり。しかし、料理の種類、作業内容など、さまざまな面で電気・ガスそれぞれの利点があるので、「すべてにおいて電気が優れていると言うつもりはない」と藤野氏。例えば、大量の洗い物を処理するための給湯設備には、ガスを選択した。

同時に「『絶対に火でなければいけない』という調理人は勉強不足だと思う」とも。ほかと比べると工程が多岐にわたり、道具立てが複雑といわれるフランス料理を、実際に電化厨房で手がけているシェフならではの説得力ある言葉だ。

◆店舗メモ

「レストラン カストール」/所在地=東京都中央区京橋2-4-14 BUREX京橋1階/坪数・席数=60坪・30席/営業時間=平日・午前11時半~午後2時半(LO1時半)、5時半~10時半(LO9時半)/定休日=日曜/客単価=ランチ・3500円、ディナー・1万円/ http://www.2castor.com/

◆現場のコメント:「カストール」オーナーシェフ 藤野賢治氏

10年以上前から電気厨房機器を少しずつ導入してきましたが、私が感じている電化厨房の3大メリットとは、「燃焼のための酸素がいらない」「鍋の周辺がガスより熱くならない」「短時間で湯を沸かせる」ことです。

私の目指した、汗をかかない厨房の効果として、以前と比べてコック服がさほど汚れなくなったというのは、一番分かりやすい例でしょう。体の疲れ方も違いますね。

電化厨房機器の方が、掃除をしやすいといったメリットも確かにあります。しかし、「電気・ガスだから」ということは関係なく、常に清潔に保つということは、調理人としては当たり前ではないでしょうか。

よその店で経験を積み、この店に戻ってきたスタッフは、「やっぱり電化厨房の方が働きやすい」と言っています。

○季節のジビエおすすめ肉料理 エゾ鹿のロースト(5600円)

毎年10月半ばから始まる期間限定のジビエメニュー(4500円~)を、冬の楽しみとするファンは多いという。

エゾシカは、北海道・知床斜里岳付近で猟師さんが撃ったもの。ほかにも、九州祖母山系でシェフの義兄が取った赤シカや、フランス産ペルドロー(コジュケイに似た鳥)、イノシシなど、そのときどきに手に入った食材が使われる。

写真は、エゾシカのローストに、キノコのソテー、ニンジンのピューレを添えたもの。

◆使用機器紹介:(株)フジマック「IHコンロ(FIC456050F)」 燃焼排気ゼロでクールキッチンを実現

鍋による煮込み調理からフライパンなどの焼き物、炒め物に至るまで幅広く使用できる加熱調理機。鍋自体を発熱させる電磁誘導加熱方式で、8090%という優れた熱効率を発揮する。

発熱量(火力)は、ダイヤル操作でトロ火から強火まで自在に調節することが可能。発熱量を一目で確認できるLED表示。

長時間の加熱調理に便利なタイマー機構は、加算・減算の選択ができ、目的に応じて使い分けできる。消費電力=三相200V/5kW

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