九州夏期特集

総合 2021.08.21
九州夏期特集

 豊かな自然を残す九州は面積で4万2231平方km、全国の11.2%、人口は1295万人(2016年国勢調査)、全国の10.2%を占める。
 その地理的特性から中国をはじめとしたアジア諸国の文化が流入し、食嗜好(しこう)も九州独自の世界が広がっている。一般的に関東と比べて甘口嗜好で、九州内でも南に下るほどその甘さが強くなる。九州は一つという考え方は食嗜好に関しては当たらない。
 各県独特の嗜好を持ち、その地域に根付く地場企業も数多い。九州7県、独自の文化を持ち、商品の売れ筋も各県によって大きく異なる。
 流通業からの視点では古くは各県に強大な地域卸業が存在し、特約制度の強かった時代を引きずり、メーカー勢力図も一様ではない。
 食を支える農業、水産業、畜産業なども盛んで、九州農業産出額は(2019年)は約1兆7520億円で全国シェアは19.6%。特に畜産部門では日本全体の25.7%を占めている。
 わが国の第1次産業を支える九州だが、各都市の人口増減率を見ても福岡県、沖縄県を除いて、減少が続いている。
 一方、阿蘇をはじめとした世界に誇る観光資源や久住連山の山々、この麓周辺に広がる有数の温泉地などが多くの観光客を惹きつけてやまない。
 だが、コロナ禍は大きくその魅力をそぎ落とし、日本国内だけでなく、海外からの観光流入者が激減し、インバウンドで潤った福岡も次々と建設されたホテル群も当てが外れた格好となった。
 ワクチン接種が進み、今年中には国民の大半が摂取できる見通しがあるものの、再度拡大の様相を呈してきた。食品マーケットを形作る基礎となる口数、つまり人口は如実に規模を表す。総じて日本全体が人口減少となる中で、食品業界が今後、どう戦略を打ち立てるか、その中でも際立つ一手を期待したい。(九州支局長=堀江勝)