東北流通特集

小売 2021.09.06

 ●地域へのこだわり 少量美味の商品づくり
 前期の特需によって売上げ、利益を大きく伸ばした食品スーパー(SM)各社は活性化投資を積極的に行い、新たな競合に備えている。各社老朽化していた店舗が多く、その活性化も部分的な拡縮に止まるケースが多かった。それが昨年あたりからスクラップ・アンド・ビルド、レイアウト変更などに踏み込んでいるのが特徴的なことだ。仙台圏を見てみると、今期は泉区内に出店したジャパンミートが話題を集めた。これまで通りホームセンター内への出店で精肉、青果、鮮魚、グロサリーの幅広い品揃えと安さで集客力は圧倒的。仙台2号店もささやかれ、“台風の目”的存在だ。
 しかし、客は満足感を求め、日々の食生活では時間という軸が重要で、調理しなくてもおいしく食卓に並ぶ商品に価値を見いだす。さらなる軸は健康。より安心・安全な商品が求められ、こうしたところにSMの存在感が示される。ヨークベニマル(YB)は子会社で全国屈指の惣菜、デリカ、ベーカリーの製造小売ライフフーズを来年3月、吸収合併する。生鮮に加えて、この部門強化はSMの共通課題だ。両社は次世代を見据え、おいしさと簡便性、健康に応える組織へと生まれ変わる。
 宮城県内32店舗を展開するウジエスーパーも、惣菜デリカは高く評価されるSM。子会社ウジエデリカを持ち、ギョウザ、市場寿司などこだわりの商品づくりを行っている。吉田芳弘社長は「生き残るためには、YB同様に製造小売とSMの一体化が必要」と強調する。低価格の魅力は、いつの時代でも大きなものがある。人口減少、少子高齢化のスピードが速い東北では、その一方で地域へのこだわりや少量美味の切り口が重要になってくる。ウジエスーパーの「らずもねえ餃子」、ユナイト2社の少量パック「あんべいい」などは、響きのいい方言とともに地元に溶け込んでいる。(東北支局長=三沢篤)