6月29日。今日は佃煮の日
6月29日は全国調理食品工業協同組合が制定した佃煮の日。6月29日に佃煮発祥の地・佃島で住吉神社の大祭が催されることに由来する。
結局、佃煮とは何か
さて、佃煮とはどういう定義によって存在する食品であろうかということを確認する必要があるが、これがきわめて漠然としているのである。佃煮と名づけられた 経緯については前述のとおりであるが、その後乾燥原料佃煮が生まれ、保存性を高める方法が進歩し、嗜好が移り変わり、もろもろの環境が変化するなかで佃煮の定義そのものにかなりの変化があったとしても不思議ではない。
「佃煮とは1種または数種の調味料でつくった液(煮熟液)で濃い味の良く浸透するまで煮熟または焼煮し、比較的永く貯蔵に耐えるものをいう(但し、密封完全なびん詰および缶詰を除く)。刻するめ佃煮とは刻するめを原料とする佃煮をいい、他の品種のものを1割以内混合したものを含む。昆布佃煮とは切昆布を原料とした佃煮をいい、他の品種のもの1割以内混合したものを含む」という定義をうたったのは、1940年の物価庁告示であった。
この定義は佃煮の当時の実態によくマッチしており、また多分に現在にも通用する定義である。
さらに194年の農林省告示には、「佃煮には紅梅煮、甘露煮、時雨煮、飴煮等名称の如何を問わず、佃煮上に焼煮したものを含むものとする」と記載され、いっそうその定義は鮮明となっている。
その後何人かの学者研究者がその著書の中などで佃煮の定義に触れ、「佃煮類は魚貝藻類をしょう油、砂糖、水あめ、化学調味料で煮熟調味した製品で、佃煮をはじめ時雨煮、飴煮、大和煮、でんぶ、昆布菓子などがこれに属する」 「つくだ煮はしょう油、砂糖、飴、 みりん、化学調味料などで濃厚な調味液を製し、そのなかに小魚、貝むき身、肉片などを入れ、よく煮て、水切りしたものである。でんぶは魚を蒸して肉をほぐし、軽く乾かしたのち、濃厚な調味液で 味付けしたものである。」「佃煮は 日本に古くからある干物とともに 最も貯蔵性の長い備蓄食品の一つであり、元来海産魚類を原料とし、調味料中の食塩または糖質濃度を、一般微生物とくにカビ類に対しても安定なまでに高め、原料中の水分を脱水し、しかも食品表面にこれらの濃厚調味料を付着せし めて長期保存を可能ならしめてい る食品である。」等々と定義づけをしているが、それぞれ妥当な定義であると同時に、いずれも完璧 な定義とはいい難い。言い換えれば、すべての佃煮に共通する定義は、なかなかできない、ということにもなる。たとえば「保存性の高い食品」という一面をとってみても、往時と、今日のように交通、保蔵設備などの進歩した時代とでは、国民の受け取り方に大きな違いがあり、その高低の線をどこに引くかという問題もある。また保存性は、かならずしも水分の多寡だけで左右されず、塩度、糖度との絡み合いでどうにもなるのであって、しょっぱいということが不可欠の要素でもなく、水分の割合だけでも決められないことは言をまたない。
しかし、いずれにしても佃煮は濃厚な味のものであり、煮熟法、煎付法、浸漬法など、どの方法でつくっても結果としては同じである。味が濃いということは、塩度か糖度が他の加工副食品に比して高いということで、それだけ保存 性があるということになる。
(日本食糧新聞社『食品産業事典 第九版』(引用箇所の著者:全国調理食品工業協同組合 橋本正弘))