カクテルの料理人、話題の「ミクソロジスト」 自然素材と自由な発想
バーテンダーの枠を飛び越え、自由な発想でカクテルを作り出す「ミクソロジスト」(mixologist)が話題を集めている。
ミクソロジストとは「混ぜ合わせる者」の意。彼らは既存のフルーツリキュールやジュースに頼らず、新鮮な果物や野菜、スパイスなど自然の素材にこだわり、フレッシュフルーツカクテル(ミクソロジーカクテルとも呼ぶ)を作り出す。食材の味わいや香りを生かすのに焼く・蒸す・ゆでるなどの手間をかけるため、まるで料理をしているようだ。
ニューヨークやロンドンではすでに大きなトレンドとなっているが、最近は日本でもバーテンダー間だけでなく、健康志向の強い女性やカクテル愛好家を中心に関心が集中している。ヘルシー感やカクテルに使用する食材の意外性がその要因だ。
日本のミクソロジスト第一人者、北添智之氏(BAR RAGEオーナー)がこのほど、一般向けに3回にわたって開いたカルチャースクールには、勤め帰りの会社員やOLなど19人が集まり、独自のカクテル創作に取り組んだ。
取材したのはクラス最終日。シェーカーの振り方やバースプーンの使い方を教わった後、「春のカクテル作り」に挑戦。“旬・新鮮”にこだわる北添氏が用意したイチゴ、ブラッドオレンジ、パイナップル、メロン、ライム、バジル、ミントなどの中から各人の相性を考慮し、食材を選ぶ。新鮮な食材の選び方や切り方まで丁寧な指導だ。
「ペストル」と呼ばれる棒で果肉をつぶして果汁を絞り、そこに適量のウオツカを加える。使用したのはプレミアムウオツカ「グレイグース」。同氏によれば「味わいに大きな可能性を持つため、食材を最大限に生かしたカクテルの創作が可能」と言う。
受講者は慣れない手つきでシェーカーを振り、グラスに注いで“オリジナルの逸品”の色、味わい、香りを堪能した。生の食材を使用したフレッシュフルーツカクテルの特徴は、ザクザクとした歯触りを楽しめることにあるようだ。
20代のOLは「果物が好きなため、フレッシュフルーツカクテルに興味を持ち参加した。ぜひ家族に作ってあげたい」と話す。
福島県から参加した20代の男性バーテンダーは「独自性の強いカクテルの作れるバーテンダーを目指しており、いい勉強になった。今回受講したことで、今までのスタイルをさらに進化させることができると思う」と手応えを語った。
指導を終えた北添氏は「美と健康を意識した受講生が多かった」と感想を述べ、「今回をきっかけに家庭でのフレッシュフルーツカクテル作りにチャレンジしてもらえれば、ミクソロジストとしてうれしく思う」と強調した。