御意見番・外食業界とIT化について:榊芳生・OGMコンサルティング代表取締役

2001.02.05 221号 5面

外食産業はこれからハイテック、ハイタッチの時代だ。お客さんにどう接するかがハイタッチ。対して、企業の利益を出すために必要な技術がハイテックだ。

しかし、このハイテックのインターネットが仕入れ原価をすごく下げるような錯覚をしている。あくまでもネット上の情報であって、配送のインフラが整わなければ意味がない。

情報があるようでないのが外食産業。たいていの飲食店経営者は自分のエリアの情報しか持っていない。ITは全国ネットの情報を収集するのに役立つだろう。しかしコストを下げるのは難しい。

ITには光と影の部分があり、光の部分ばかり目立っているが、影の部分も認識する必要がある。

企業のホームページには、お客さんからダイレクトに、細かい赤裸々なクレームがたくさん届くようになった。これからお客さんと本当に対等な関係がインターネットの世界で作られるようになる。

私たちの業界では、お客さんが求めているのはハイタッチ。発注業務や経理はインターネットの発達で合理化されるが、裏にある怖さも知り、ハイタッチを忘れない経営をやっていかなければいけない。

ITが有効なのは、人材募集だろう。先日うちの求人に応募してきた二四〇人のうち二〇〇人がホームページを見ていた。

彼らが一番興味をもっていたのが私の私生活で、私の人生観に共感して来てくれている。それがこれから大事だ。経営者がどんな人生哲学を持っているか、先輩たちがどんなふうに働いているか、説明できるのがインターネットの力。紙の立派なパンフレットを作るより、ホームページを作った方が安上がりだし効果的だ。インターネットは新しい時代のコミュニケーションを作る。

飲食店も、お客さんの立場に立ったホームページを作ることができたら、マスコミに出たことのない路地裏で立地の悪い店でも人を集めることができる。ホームページで共感し、さらに店でハイタッチのサービスの部分も良かったら、繁盛店になるに違いない。

ITは、電話がFAXになり、それがやがてインターネットに置き換わるというような、当たり前に変化する技術は金儲けにつながらない。

しかし、インターネットを使って、これまでできなかったことで可能になることもある。企業の経営者は、インターネットは若者のものと逃げてしまうとこれから負け組になる。かといってそれで儲けようと思うのはまだ時期尚早だ。自分たちを表現する手段がひとつ増えたと思えばいいだろう。いままでは店づくりやメニュー作り、チラシをまくことが店の表現だった。

ホームページ作りは、わが社の業務の柱のひとつにもなっている。インターネットならではの使い勝手や影響力を駆使すれば、一店しかない店でも世界中にファンをつくることができる。

◆榊芳生(さかき・よしお)昭和12年香川県生まれ。中央大学法学部在学中、愛媛県松山市に和食処「へんこつ庵」を開業。以後一九店舗展開するも倒産。コンサルタントとして復活し過去の経験をもとに、地域・生業店志向の飲食店経営を説く。現在、わが国最大の外食コンサルタント企業OGMのトップとして活躍。OGMのホームページ=http://www.ogm.co.jp/

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