チーズ特集 カマンベールチーズ、いま台風の目に
ここ数年、カマンベールチーズの需要が大幅な伸びを示す中、今年上期は猛暑の影響を受け、その販売量は一時的とはいえ足踏み状態を強いられた。しかしその一方で、今カマンベールチーズには、業務筋からの熱いまなざしが注がれている。猛暑も去ったこの秋、果たしてカマンベールチーズは、外食業界に新たなブームを巻き起こす台風の目となるだろうか。
カマンベールチーズに、今最も注目しているのは、製パン業界だ。特に大手のリテールベーカリー(焼きたてパン店)チェーンでは、イカスミパンに代わる人気商品として注目している。事実、このカマンベールチーズパンの人気はすごく、新宿のデパート地下にあるリテールベーカリーで扱うパンは一日に約一〇〇〇個を軽く売り切るという。
また、このカマンベールチーズパンは、各チェーンごとに工夫が凝らされているのも特徴だ。前述のチェーンで販売されているのは、ちょうど太鼓のような形のパンの中に、カマンベール風味のプロセスチーズが包み込まれたもの。ちょうど今川焼きのような形のパンである。また別の大手チェーンでは、フランスパンの中に、このダイス状にカットされたこのチーズが入っている。
このように、各リテールベーカリーチェーンがオリジナリティーを出したカマンベールチーズパンを発売する中、今まではコストや品質保持の点で難しかった、本物のナチュラルカマンベールチーズを使ったパンを発売するチェーンも登場してくるという。それぞれのチェーン自慢のカマンベールチーズパンの食べ比べなども楽しみにしたいところである。
カマンベールの味わいを生かした目新しい商品は、まだまだある。例えば、大手CVSチェーンで販売されている「カマンベール入りチーズタラシート」。これは薄切りにして焼いたスケソウダラの身に、カマンベール風味のプロセスチーズをはさんで、全体をローストしたおつまみ。乾きモノのユニークな一品として、人気を博しているという。
またカマンベール風味のスライスチーズというのも変わった商品だ。見た目は普通のスライスチーズと全く同じだが、食べてみるとしっかりカマンベールチーズの味がする。現在は、喫茶店のチェーンなどでオープンサンドに使われているが、レストランやファストフードなどのメニューに使ってみても、目先が変わって面白そうな商材である。
こうしたブームを受けて、乳業メーカーでもカマンベールチーズの新しいメニュー集を出すところが出てきた。内容は、従来のオードブルなどではなく、パンやケーキをはじめ、スナック・デザート・サラダなどが提案されている。既成のワクにとらわれない、カマンベールチーズのメニューとして、ますますの需要拡大につながるか、楽しみなところである。
11月11日が「チーズの日」と定められて、今年は三年目にあたる。今から一三〇〇年前の平安時代中期(西暦七〇〇年11月)に、時の文武天皇によって、国内の四五ヵ国に「蘇」の製造と朝貢が命じられた、との故事に基づいたもの。この「蘇」が、現在の定説ではチーズに最も近い食品であるとされている。
「チーズの日」はこの史実に基づいて、チーズ普及協議会と、日本輸入チーズ普及協会の両団体によって制定された。当日は青山スパイラルホールとザ・スペースでチーズフェスタ’94と銘打ったイベントが行われる。国内外のさまざまなチーズ料理の紹介や、チーズオークション、帝国ホテル村上料理長による料理講習会など、盛り沢山の内容が用意されている。