施設内飲食店舗シリーズ 「アトレ新浦安」 集客力アップが課題

1993.08.02 33号 8面

JR京葉線新浦安(千葉県浦安市)。東京‐千葉間の貨物線だったのを臨海部の開発と発展に伴って、旅客線に転用し、昭和63年12月駅舎を開設した。平成3年度の実績で、乗降客数は一日平均約六万人。対前年比一五%の増加。駅周辺に高層マンションや公団が建ち、新興住宅街を形成しているので、地域の人口増に伴って、乗降者数も年々増加の途を辿っている。地域の人口は駅を軸とした二㎞圏で、世帯数二万九〇〇〇、人口七万四〇〇〇人、三㎞圏で世帯数五万八〇〇〇、人口一五万四〇〇〇人。

駅ビル「アトレ新浦安」は、東京圏駅ビル開発㈱が四谷、大井に次ぐ駅ビル開発として総工費七〇億円をかけ今年2月26日にオープンしたもので、地上二階(駅高架下)建て、全長約二五〇m、幅約三五mの規模をもつ。

建物の床面積は一階二六〇〇坪、二階一九〇〇坪の計四五〇〇坪。ここに食料品三〇店、衣料一八店、雑貨一六店、飲食一〇店、サービス六店、その他一〇店の計九〇店の商業店舗を集積する。

駅南口には、駅前広場を囲む形でダイエーショッパーズプラザ(専門店二〇〇店)、モナ(同七〇店)の先発商業施設が展開しており、アトレはこれを追っての施設展開で、初年度売上げ五〇億円の目標を立てている。

しかし、ポストバブル経済での施設展開であることと、施設のハード面の問題、また先発商業ゾーンとの競合関係もあって、目下のところ苦戦を強いられる状況にある。

このため、売上げも二割方マイナス修正を迫られており、施設の集客面で大きな課題を残すこととなっている。

「人口の増加に加えて、ホテルやオフィスビルの建設が活発化してきていますから、将来的にみれば発展性のある都市として期待できるんです。それと、都心からの移住者が多く、消費の感性もすぐれていますから、時間がたてば施設内での消費も盛り上がってくると考えています」(アトレ新浦安営業部営業課上遠野英直課長)。

アトレ新浦安は、平日が昼三〇代、四〇代の専業主婦と中高生。夜二〇~四〇代の都心勤務のサラリーマン、OL、有職ミセスをターゲットにしており、飲食ゾーンは二階に展開している。

店舗数はそば・うどん「家族亭」、中国海鮮料理「白天鵝」、京風ラーメン「糸ぐるま」、スパゲティハウス「ロマーナ」と喫茶「マイアミ」など一〇店舗だが集客力がもう一つといったところ。この8月にはさらに和食、ビアハウスの二店が出店する。

この二店舗の追加出店によって、飲食ゾーンとしての賑わいが増すことが期待される。二階飲食ゾーンの四店舗を紹介する。

◆「糸ぐるま」女性の感性に訴える

ラーメンと甘味類で女性にターゲット。集客力に課題

西洋フードサービス(セゾングループ)の直営店。店舗面積三二坪。客席数五五席。チェーンシステムで首都圏を中心に五〇店を出店、独自の店舗コンセプトを訴求している。

店は木材を多用した民芸調の造りで、シックで落ち着いた雰囲気にある。看板メニューは味噌、醤油仕立ての京風ラーメンだが、甘味類も豊富に揃えている。

このため、客層は女性客やファミリー客が主体で、平日の日中から夕方にかけては買い物帰りの主婦や女子学生など、土・日はファミリー中心という利用形態だ。

看板メニューのラーメンは、五条セット(ご飯、サラダ付き)八〇〇円、あらしやまセット(ご飯、ギョウザ付き)八三〇円、かつらかわセット(白玉みつ豆付き)七二〇円などが人気で、甘味類はチョコパフェ五五〇円、小豆パフェ五三〇円、クリーム白玉五二〇円などがよく出る。

京風ラーメンと甘味類、女性の感性に訴えたメニュー構成というわけだが、価格も手頃だ。客単価は七〇〇~八〇〇円。しかし、客回転は昼二回転、夜一回転、平均日商一〇万円前後。まだオープンして間もないこともあって、客数は目標の三分の一といったところだ。

「近くのダイエーなどが定休日のときはお客さんが増えるんですが、日曜日なんかは会社もお休みですから、来店者が少ないというケースもあるんです。まだオープンして間もないんですが、施設全体としての集客が大きな課題という気もします」(店長代行薬師つゆきさん)。

◆「ロマーナ」女性向きメルヘン調

女性客七~八割、客単価昼一〇〇〇円、夜一二〇〇円

昭和産業の子会社ロマーナフードサービスが経営するチェーン店。店舗面積一七坪、カウンター一〇席、テーブル席二〇席の小さな店で、若い女性の感性にフィットしたメルヘンティックな内装デザインになっている。

このため客層は、若い女性客が七、八割を占める。平日の昼間などには、近くのビル工事関係の人達もやって来るが、しかし、土日は人の流れが極端に少なくなる。

「施設的にみて飲食街の存在が見えにくいことや、駅の改札口から直接入れないということも、集客を悪くしているかもしれません。それともう一つは、新浦安は周辺がマンション街ですから、繁華街と違って即家に帰ってしまうということだと思うんです。やはり地域性の問題も大きいという感じもします」(須藤泰店長)。

この対策の一つとして、夜はアルコール主体にしてパスタメニューを訴求していくことを検討中だ。

目下のところよく出るめニューは、スープ、サラダ付きのセットメニューの和風たらこスパゲティ一〇八〇円、単品メニューのバジリコトマトスパゲティ八五〇円、めんたいこシメジ八〇〇円、サラダ四~五〇〇円など。

客単価は昼一〇〇〇円、夜一二〇〇円。この金額は都心の店と比べて二、三〇〇円は低い。

◆「家族亭」“夜の部”充実で集客へ

売り物のそば・うどんに加えて、丼物メニューもよく出る

店舗面積三四坪、客席数五八席の中規模の店舗。客席は四人掛、六人掛のテーブルで、内装は木造り感覚で落ち着いた雰囲気にある。

手打ちのそば・うどんメニューが売り物だが、人気メニューの太打ちせいろそば八八〇円、本打天せいろそば八八〇円、(五目ご飯付き)、ざるそば六二〇円に加えては、焼肉弁当八八〇円、親子丼七五〇円、天丼九〇〇円などご飯ものもよく出る。

客層は平日は昼、夜ともにサラリーマンが多く六、七割を占めるが、休日にはショッピング帰りの主婦や家族連れが主体になる。

アルコールメニューも、生ビールをはじめ、焼酎、日本酒と一応のものを揃えているので、夜は帰宅途中のサラリーマンが軽くやるという図式で、煮物、揚物、刺身など単品のつまみ料理四〇〇~五〇〇円も多く揃えている。

客単価は昼七〇〇円、夜一二〇〇円といったところで、初年度売上げ九四〇〇~五〇〇万円を設定している。しかし、この店も二階飲食街では善戦しているものの、やはり二割くらいの落ち込みがあり、今後これをどうクリアしていくかが大きな課題となっている。

「麺類にご飯ものを付けるとか、夜のアルコールのつまみ類を充実させるとか、いろいろと考えておりまして、少しでも客数が増えるよう努力しているところです。まあ、初年度目標はしっかりとクリアしていきたいと頑張っております」(田口英二店長)。

◆「白天鵝」都心に比べ20%は安い

給食サービスを基盤にレストランビジネスを展開する東京魚国の直営店。店舗面積約三〇坪、客席数五四席。中国レストランにしては珍しいガラス張りで、モノトーンを基調としたシックな造りになっている。

料理は魚介類を主体とした一品料理から、麺類、米飯類、点心類、セット、コースメニューまでトータル的に揃えており、目的、利用人数に合わせて好みの料理をチョイスすることができる。

評判のメニューは「セットメニュー」(白天鵝・A~Dセット)九五〇円~一八八〇円で、これは白天鵝Bセット一二八〇円であれば、料理二品にご飯、スープ、お新香、デザートが付くというリッチな内容のもの。

宴会および会食対応の「コースメニュー」(四種二三〇〇~五〇〇〇円)もおすすめの自慢メニューだ。

二三〇〇円の「桂花」は六品、五〇〇〇円の「蘭花」が九品という内容で、都心の中国レストランに比べても二割前後は安い価格設定だ。

「新興住宅地ということもありまして、消費が地味で客単価も都心に比べて一、二割低いという感じですので、やはり地域特性を考えてのメニュー構成と価格設定です。この8月からさらに質を落とさず、ややポーションを下げるような形で価格を見直すことも検討しているのです。要するに消費単価が低くとも、客数を伸ばすという営業戦略です」(猪野正己店長)。

本格的料理の提供で、格安料金、快適な環境でいいサービス。これはこの店のモットーだ。8月からはランチタイムから夕方5時にかけて、シュウマイ、マンジュウ、チマキ、ゴマダンゴなどの点心類三五〇~七〇〇円をラインアップすることも考えている。

客単価昼一〇〇〇円、夜一七〇〇円。地域では善戦している消費単価だという。

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