世界の人気食材「ココナッツ」 デザートに、牛乳代わりに
ココナッツは英語名。フランス語ではヌワ・ド・ココ、イタリアやスペイン語ではココ、日本名はヤシ。世界の熱帯圏に生育し、適地は南北緯度一八度の地域である。
ヤシ科に属し二七〇〇種と多く、ココナッツだけでも品種は大型から小型まで、果実の色も緑色から金色までとさまざま。
原産はマレーシアで、木は一本の幹が真っ直ぐ伸び、高さは一五~二五m、直径は三〇㎝ほど。頂点に葉を広げ、葉は鳥の羽形で長さは五~一〇mになる。
実を植えて七年目に花をつけ、葉腋から一本の花軸が出てその先端に雄花が咲き、雌花はその下につく。花が咲いて実がとれるまでに一年を必要とする。一年間の結果数は五〇~八〇個程度である。樹齢は七〇年と長い。
ココナッツを植える者は食料と飲料を確保し、一〇〇本植えれば七年目から家族四人を養う力があるといわれ、子孫に贈り物を植える、と南太平洋地域には古いことわざがみられる。
ココナッツほど熱帯地方に有用なものはなく、未熟なココナッツの果実に穴をあけると甘い果汁が二リットル近くもとれ、生命の水とも呼ばれている。実をつけて六ヵ月たつと果肉ができ始め、ゼリー状で柔らかくスプーンココナッツと呼ぶ。
やがて実が完熟すると、白いかたい果肉と変わる。この熟したココナッツをすりつぶしてココナッツミルクを作る。牧畜のできない熱帯では、ココナッツミルクが牛乳の代わりとなって育児には欠かせない。
この成分も牛乳やヤギ乳に似たところが多く、脂肪はほかの植物油よりむしろバターの脂肪分に近いものがある。
太平洋地域、東南アジア地域からカリブ海諸国まで、ココナッツミルクはアイスクリーム、パイ、ケーキ、トッピング、プディングなどのデザートやスープを始め、あらゆる料理に使われている。
日本ではカレーに小麦粉を使ってとろみとするが、熱帯諸国ではヤシ油とココナッツミルクで作るためさらっとしている。
また、白い果肉の胚乳を乾燥したものをコプラと呼んでいる。核を割り開いて脂肪質を取り出し、天日または火力で乾燥する。フィリピン、インドネシア、スリランカ、マレーシアなどが主産地となる。
コプラは重要な油糧源で、生産国にとって外貨獲得に大きな貢献をしている。約七〇%の脂肪を含み、圧搾してコプラ油(ヤシ油、ココナッツ油とも呼ぶ)をとる。
コプラ油は精製して製菓用、マーガリン、ラーメン用揚げ油、石けんなどに利用される。このコプラ油の絞りかすは、飼料や肥料となる。このコプラを糸状に切って乾燥したものはデシケーテッドと呼び、ケーキやチョコレートなどの製菓用として広く使われている。
一時日本でブームを呼んだナタ・デ・ココは、ココナッツミルクの浮遊物を意味し、独特の歯触りを持つものであるが、一過性ブームに終わった。また、ハート・オブ・パームはヤシの芽と訳されているが、まだ外に出ないヤシの葉や葉柄がかたく巻き合ったもので、甘みがあり香りもよく、タケノコに似た味を持つ。サラダに多く利用され、ミリオネア(百万長者)サラダの別名を持つ。缶詰で日本にはブラジル産が出回る。
ココナッツの幹は家屋や丸木舟にも使われ、繊維は魚網や敷物に、殻は良質の活性炭素がとれ、まさに捨てるものなしの植物である。今年はココナッツミルクのデザートが、エスニック味で再び人気を呼ぶのではないかと思われる。