食品の期待と危険(セミナーから):ファンクショナルフードの臨床的評価

1998.10.10 37号 2面

毎日食べる食事、これは健康に直結する大切なもの。長寿国日本はヘルシーな食文化と高い医療技術を持つ、といわれるものの自分の食生活に自信がないと答える日本人が現在増えている。そこで、『百歳元気新聞』では、ふだん口にする身近な食品の、期待される病気予防効果と危険性について、新甘味料・食物繊維・抗酸化食品のトップ研究者の先生方三名を招き、講演を催した。

遺伝的に大腸にイボがたくさんできやすい家族性大腸腺腫症という病気があります。一六歳くらいからイボができはじめ、四〇歳代で大腸ガンとなります。現在、大腸ガンの予防の候補として非ステロイド系の抗炎症剤スリンダックという薬があります。これは大腸のポリープを減少させますが、同時に副作用が強くまだ実用にはなっていません。そこで食生活からガンの進行を食い止めることが切に必要とされており、私たちも患者に対する食事指導に力を入れています。

同時に、疾病予防などの機能をもつといわれる食品成分(ファンクショナルフード)を有効に活用することも考えています。しかしそれらの食品は、実際に人への臨床試験からその安全性と効果を考える必要があります。そこで私たちは、大腸ガンの発ガンを予防する機能をもつと考えられる食品についての臨床試験を一九九三年から行っています(実施期間八年)。

この臨床試験の対象は、四〇~六五歳の大腸ガン高危険群の方です(内視鏡検査で組織学的に大腸腫瘍と診断された病巣が二個以上あり、それらの腫瘍をすべて内視鏡的に切除し根治的治療ができた者)。

大腸ガン予防法として、二方法を試みています。食事指導のみを行う処方(1群)、もう一つは食事指導プラス小麦ふすまビスケットを投与する処方(2群)です。

小麦ふすま入りビスケットとは、重量あたり三〇%の小麦ふすまを含有した我々が独自に開発したビスケット。これを一日に二五グラム(小麦ふすまとして七・五グラム)を三回に分けて毎食前に摂取してもらいました。これで2群の人は食物繊維を十分にとることができるはずです。

ところが結果は意外なものでした。三ヵ月後の受診で、食事指導のみの1群では、エネルギーや脂肪の摂取量も減少し、総エネルギーに占める脂肪の割合も有意に減少していました。しかし、小麦ふすまビスケットを追加した2群では、食事指導は同じようにしているにもかかわらず、エネルギーや脂肪の摂取量は減ったものの、総エネルギーに占める脂肪の割合は減少しませんでした。逆に小麦ふすまビスケットを食べることによって、ふつうの食事からの食物繊維が一日あたり一グラムも減少してしまっていたのです。つまり、人間の実際の生活のなかでは動物実験レベルでは予測できなかった、計算外の現象が起こりうるわけです。

ファンクショナルフーズを人の食生活に効果的に取り入れるには、食品の食べやすさ・味の工夫ももちろん、摂取量や期間の設定がポイントとなります。その人のそれまでの食習慣など細かなバックグラウンドにも配慮が必要です。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら