清酒特集
◆清酒特集:國酒の魅力を国内外へアピール ニーズに即した展開を
清酒の最需要期である秋冬シーズンを迎え、酒造メーカー各社は独自の商品戦略を展開する。高まる健康志向に対応してボリュームゾーンのパック酒シリーズに新たに「糖質ゼロ」や「糖質ハーフ」といったアイテムの投入、また日本酒はアルコール度数が高いイメージがあり、健康を気遣って飲酒量を減らす傾向を踏まえた低アルコール度数商品の開発などだ。一方、女性ユーザーの開拓を狙い、美容成分を訴求した新商品が目を引く。
少量をイベントやアウトドアなどのシーンで手軽に楽しんでもらおうと、ニーズが高まっているリキャップできる小容量ボトル缶を採用した商品展開も盛んだ。サッカーJ1・ヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタ選手を「アンバサダー」に起用しTVCMやキャンペーンの展開で、新たな若い世代のユーザー獲得を目指す動きも。若者層の取り込みには「インスタ映え」といったSNSを意識した施策は欠かせない。20~30代の女性をターゲットに、ラベルに絵本のようなかわいらしいデザインを採用し、Webサイトを通じたプロモーションに力を入れた展開も見られる。(藤林敏治)
●取り込め次世代ユーザー
19年1~8月の全国清酒課税移出数量は、26万7411.7kl(日本酒造組合中央会まとめ、一部概数)で、前年比4.3%減となった。ただ減少幅は前年同期と比べ縮まっている。今年は改元に伴うゴールデンウイークの大型連休の仮需とともに、「令和」ラベルなどの慶祝商材が順調に推移。夏場も昨年の酷暑に比べ7月はあまり気温が上がらなかったことなども、プラスに動いた。パック系を中心に9月は消費増税前の仮需もあり、19年4~9月売上高は前年実績超えの酒造メーカーも多く見られた。
国内市場は少子高齢化や飲酒人口の減少、酒類間競争の激化で清酒を取り巻く環境は厳しい状態が続く。「量から質への転換」「酔うためのものから味わうためのもの」などとといわれて久しいが、酒造メーカー各社は、高品質、中小容量、健康、美容、手軽、インバウンドなどを切り口にした商品開発に注力する。
20年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、「メード・イン・ジャパン」に対する注目度は確実に高まっている。縮小傾向の国内市場とは違い、18年の清酒の海外輸出総額は約222億円、輸出数量は2万5746kl(財務省貿易統計)と、いずれも9年連続過去最高を記録。和食がユネスコ無形文化遺産に登録されて以降、日本食を通じて日本酒の良さがPRされるようになったことが大きい。
国税庁は20年度の日本産酒類の競争力強化・海外展開推進事業として、約25億円を予算概算要求。このうち、インバウンド需要開拓支援には約3億円を盛り込んだ。
9月には、京都・伏見で海外在住の日本酒の専門家や有識者らを講師に招き、国内の酒類業者を対象にした「日本酒輸出戦略ビジネスサミット2019」を開催。識者が登壇して行われたパネルディスカッションでは、日本酒を世界ブランドにするための取組みについて多くの意見が交わされた。
また日本酒造組合中央会は、10月1日の「日本酒の日」と、その前後の9月28日~10月6日を「日本酒で乾杯 WEEK」として、日本酒のおいしさなどを参加者に体感してもらうイベント「全国一斉日本酒で乾杯!2019」を今年も開催した。今年で5回目を迎え、国内外で日本酒で乾杯するイベントが行われ、公式サイトへの写真投稿分を含め、約10万5000人が乾杯を行った。
10月1日には、東京・恵比寿のメーン会場に約370人が集まり、一斉乾杯を実施。代表あいさつで同組合の篠原成行会長が「日本酒を世界の酒にしようと頑張っている。世界から注目の集まる2020年、また2020年以降を見据えて、『國酒』である日本酒の魅力・日本酒文化を広く国内外に伝えていく。日本酒業界の取組みにぜひ注目ください」と述べた。
清酒に吹く追い風を官民一体となって受け止め、着実な需要開拓につながることが期待される。
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◆清酒特集:國酒の魅力を国内外へアピール ニーズに即した展開を
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