鶏唐揚げ専門店が続々と 鶏肉のビジネス的な強みは
「鶏の唐揚げ」ブームは、令和に入って一層元気だ。大手飲食店が唐揚げ専門店に続々と参入し、多店舗展開しつつある。豚肉、牛肉と続き、いま鶏肉そのものがブームでもあるが、中でもなぜ「唐揚げ」専門店なのか?
テークアウト店の増加にみる多様化
まず「鶏の唐揚げ」の前に、外せないのがテークアウトの広がりだ。外食の消費税が10%となり、8%消費税の持ち帰りにシフトしている。鶏の唐揚げ専門店も特にテークアウト業態の開店が目立つ。
しかし、テークアウトといっても、その方法も多様化している。ファストフード、コンビニエンスストアなどの定番から、今まで持ち帰りシステムがなかった飲食店で持ち帰りを始めた店もある。
また、スーパーも生鮮よりむしろ惣菜や弁当の販売に力を入れて店舗リニューアルをしている。そのほか、デパ地下や惣菜専門店、移動販売など、今はテークアウトの方法は多々あるのだ。
そういったテークアウトができる店や宅配を含めた中食の全てに「鶏の唐揚げ」は存在すると言ってよいだろう。
豚カツやメンチカツと比べて鶏肉の優位点は
鶏の唐揚げ専門店には、すかいらーくグループや和民など、大手外食企業が続々と参入している。揚げ物というものは、揚げたて作りたてが最も香りが立つので、テークアウト店として魅力的な商材といえる。
しかし、揚げ物は、鶏の唐揚げだけではないはず。なぜ豚カツでもなく、メンチカツでもないのか?
筆者は一つには、鶏ならではの汎用(はんよう)性が出店しやすい要因ではないかと考えている。鶏に比べて豚肉や牛肉は繊維が多く噛み応えがある。しっかり噛まなくてはならず、スルスルと食べにくい。
ミンチ肉で食べやすいメンチカツやコロッケがブームになってもおかしくないのだが(いずれ来る可能性あり)、メンチは国民食のハンバーグに勝ちにくく、メンチを研究する絶対数が作り手側にも消費者側にも少ない。コロッケは、中がジャガイモなので、副菜のイメージがどうしてもぬぐえない。
さらに鶏肉は、昨今のタンパク質ブームが後押ししているといえる。鶏肉はアミノ酸が豊富で、疲労回復にも良いとされている。また、部位によってはコラーゲンも豊富なため、アンチエイジングの期待値もある。低脂肪で高タンパク質であるという栄養の面からも良いイメージが定着しつつあるので、時流に合っているといえる。
インバウンド需要にも対応しやすい
また、店側の調理面の特性からも鶏肉の利点がある。牛カツは火加減が難しい。コロッケやメンチは中まで衣を吸いやすいため、何個もパクパク食べにくい。比べて鶏肉は数多く食べても胃にもたれにくい。そのため、売上げ個数が出やすいといえそうだ。原価率も良い。
さらに、鶏肉は牛肉と豚肉に比較して宗教上のリスクは最も少ないため、インバウンド需要にも対応しやすい。こういった「鶏肉」自体の利点は多くある。今後もしばらく鶏肉は元気である可能性が高い。
ではなぜ、「唐揚げ」なのか。俗に言われる「揚げ物料理を家庭でしなくなったから」だけなのか?専門店を作るほどの魅力とは何なのだろう。次回は「鶏の唐揚げ」の魅力を探りたい。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)