コンビニおでんは「コミュニケーション売り」から「パッケージ売り」へ転換期

コンビニエンスストアのおでんは転換期のようだ。セブンイレブンで販売を停止する店舗があるほか、ファミリーマートの一部店舗では今までのおでんを一変させた。数あるコンビニの商品の一つに過ぎないのだが、「おでん」の変化に様々な消費側と提供側の事情が見えてくる。なぜなら、コンビニの商品の中で、「おでん」という商材は、客側が自分で取り分ける唯一の特異性のある商材だったからである。

レンジで温めるパッケージおでんを導入

ファミリーマートが今までのおでんの代わりに一部店舗で1月14日から発売したのはあらかじめ数種類の具材が袋詰めされたタイプのおでんだ。注文を受けると店側で容器に移してレンジで温めて提供する。

商品アイテムは2種類で、大根、さつま揚げ、ちくわ、こんにゃくが入った「おでん4個入り」(税込み268円)と、それに昆布と竹の子が加わる「6個入り」(税込み358円)だ。今までのような1個売りはなくなった。

今のところ、週替わりで中の具材が変わるといったことはなく、例えば人気のある卵や白滝などは電子レンジで温めると破裂や変形の恐れが生じるため、提供しないという。

ファミリーマートでは、カウンター前でレンジアップおでんのサンプルを置いて訴求している

コンビニおでんは冬のコンビニの風物詩でもあった。真冬より9月が勝負と言われるのもコンビニおでんの特徴の1つ。真夏の暑さが和らぎ、体感温度が下がった上に、室内はまだ冷房が効いているため温かいおでんが欲する消費者が多いのだ。

毎年の定番商品でありながら、年ごとに各社はしのぎを削ってリニューアルを重ねて今日に至る。匂いを工夫し、汁を変え、具材の種類を変え、さらには大根の切り込みを変え、白滝の切り方や結び方や食感まで改良を重ねて、消費者ニーズに応えてきたといえる。

コンビニのおでんは非常に特異性のある商品だと感じる。コンビニに売られている食品はほぼ全てパッケージされて売られているが、おでんだけは、客側が好きな具材や数量を自由にその場で選択できる。一品100円前後のお手頃な価格も買いやすいとされた。

一方で、以前から衛生面を懸念する声は多かった。手で触る人や一端容器に入れた具材を鍋に戻す人、おしゃべりしながらすくえばそれなりの異物も入っているかもしれない。

人手不足など売り手側の悩ましい課題

コンビニ側にもおでん販売の廃止を望む声は以前から聞かれた。大きく分けると、管理の手間の問題、食品ロスの問題、マンパワーの課題などが挙がるだろう。

おでんは鍋を温め、毎日の清掃や具材の補充にも手間がかかる。消費者が購入する時間帯もある程度限られており、その中で最大限の利益を出さないと赤字になってしまう商材でもある。

具材の選択肢が少ないと「売れ残っているもの」という印象が拭えないため、常に全種類を温めておくことが求められるため、廃棄量が多く食品ロスとなる。コンビニの場合は、廃棄費用の大半が店舗負担のため利益がさらに出にくいといえるだろう。

コンビニ各社はしのぎを削ってリニューアルを重ねた

日本の食品ロスは年間600万トン以上で、毎日大型トラック1770台分、1人あたりに換算すると、毎日茶碗1杯分のご飯を廃棄している計算にあたるとされる。おでんに限らず、コンビニから出る食品ロスに対して最近はさまざまに対策が行われ始めている。

マンパワーの問題も否めない。保温している最中も、単に温めておけば良いというものではなく、マメに汁をかけて具材が乾かないように気を配る必要があり、汁が減れば当然補充が必要だ。

会計の際にもするべき手順があり時間を要する。まず、具材の種類と数を確認して、フタをして、シールを数ヵ所貼らなければならない。横に傾かないように袋入れにも気を配る。人手不足の業界としては、簡略化できないものかと思って当然といえそうだ。

具材を好きに選べないことに不便さを感じる客の声も今はあるが、サラダや惣菜から御弁当まで、元来パッケージされた商品がコンビニの主流である。おでんも「パッケージおでん」に慣れれば良いと感じる。

おでんは冬のコンビニの風物詩

「コミュニケーション売り」から「パッケージ売り」へ

以前の八百屋や魚屋などの専門店で店とのコミュニケーションのある買い方はめっきり減った昨今。「パッケージ売り」(筆者作成造語)の代表ともいえるコンビニにおいて、おでんは、無言ながら、ある意味においてかつての「コミュニケーション売り」(筆者作成造語)の名残を感じさせる商品だったと感じる。

コンビニおでんも、価格が一律であるとか、グラム売りなどであれば、会計の簡略化は若干図れた可能性もある。売り方と買い方、双方に令和は転換期を迎えているといえそうだ。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)