高タンパク質ブームで植物性×動物性のダブルタンパク食品に注目

低糖質ブームとともに、タンパク質に関心が高まっている昨今、手軽にタンパク質を摂取できる食品の市場が広がりを見せている。高タンパク質商品が各社で発売されており、タンパク質補助食品に関しては、2019年の市場は前年比1割増の1453億円(富士経済調べ)が見込まれる。そこで、今までどちらかというと地味な商品であった練りものの人気が高まっている。特にかまぼこや竹輪、魚肉ソーセージなどの魚系練りものは、肉類と比較して低カロリーや低脂肪であることで、「より高タンパクで、よりヘルシーに」という昨今のニーズにマッチしているのだ。火にかける必要もなく、そのまま食べられる利便性も受けている。

より多種類のタンパク質を摂取する食べ方

続々登場しているのが、「植物性タンパク×動物性タンパク」の“ダブルタンパク”食品だ。魚肉や鶏肉などの動物性タンパクに大豆などの植物性タンパクを加えてより多種類のタンパク質を摂取する食べ方だ。手軽に食べられる商品として各社が新商品を出している。

鳥取に本社を構える「ちむら」は、なんと江戸時代に「とうふ竹輪」を考案し、現代まで販売している。江戸時代の当時は鳥取に漁港の開発が遅れていたため、ぜいたくな魚類を控えて代替として豆腐を混ぜたのが開発の背景のようだが、それが長い年月を経て、現代のニーズに合う商品になったのは興味深い。

ちむらの「とうふちくわ」

「おとうふかまぼこ」を以前から製造している老舗の直江商店では、シリーズ化してラインアップが揃っている。豆腐によるふんわりした滑らかな食感は、通常のかまぼこに比べて高齢者でも食べやすい。毎日製造分だけをカットしており、食べ手の気持ちもほっと和らぐような商品だ。

「おとうふかまぼこ」の豊富なラインアップ(画像提供:直江商店)

さらに紀文食品からは、人気の「サラダチキン」の感覚でサラダに入れるなど手軽に食べられる「フィッシュ&チキン」が発売されている。かまぼこよりも油と相性が良く、サラダや野菜炒めなどほかの食材とも馴染みやすい。

紀文「フィッシュ&チキン」

さらに紀文食品は、8月に魚肉、鶏肉、大豆、卵の4種のタンパク質を合わせた惣菜の「プロミックス」を発売。この商品は、現代人の求める利便性を補完した商品といえる。

紀文「プロミックス」

常温保存で冷蔵庫に入れなくても良いのは「かまぼこ」分野では画期的だ。さらに棒状なので、片手で、大口を開けなくても食べやすい。定番のかまぼこにある「不便」と感じる様々な点を解消させる商品といえるだろう。

身近な日本の食べ方にはダブルタンパクが満載

「ダブルタンパク」の良さは栄養面にも言えそうだ。植物性タンパク質は筋肉分解を抑え、片や動物性タンパク質は筋肉を増やす働きが期待できる。両方を同時に食べることで、筋肉の萎縮の抑制につながり、筋肉量がより増すことが期待されている。

しかし考えてみれば、「ダブルタンパク」商品は、“商品”としてわざわざ食べないと食べられないわけではない。

例えば冬の定番のおでん。竹輪やはんぺんなどの魚肉を使った食品もあれば、卵や牛すじなどの肉系タンパクに加えて、厚揚げやがんもどきなどは植物性タンパク質が入っている。加えて野菜の大根、コンニャクなどの食物繊維もある。

さらに、古くから日本人が食べてきた組み合わせには、「ダブルタンパク」が満載だ。刺身や焼き魚に豆腐の味噌汁や納豆を合わせてみるとか、寄せ鍋にも肉や魚と豆腐が入る。豚汁に豆腐を入れるのも定番だ。卵かけご飯に納豆を加える食べ方も好きな人が多い。アルコールのつまみでは、枝豆や冷や奴に鶏のから揚げやチーズなどを一緒に注文するのは居酒屋の定番である。

ちなみに筆者は、数年前に出版したダイエット本にて、「おやつは甘いもの」という概念をくつがえした食べ方を提唱していて、竹輪やかまぼこなど「あまくないおやつ」を提案している。

スティック野菜もおやつ? 小倉朋子流「有効な」おやつの食べ方 – たべぷろ

魚貝系の練りものは、豊富なタンパク質とともに実は適度な糖質も含まれているので、仕事の合間の疲れた脳を休めるのに効果的だ。さらに低カロリーでもあるし、利便性は申し分ないので、忙しいビジネスパーソンのおやつや夜食にもおすすめしたい。

今後、「ダブルタンパク」のラインアップがどう変化してくるのか、注目したい。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)