小麦の急激な値上げがオランダ人の食生活に大きな影響

オランダでのヒマワリ油の値上げについて前回のコラムでお伝えしたが、値上げは食用油だけではない。オランダは1月から5月までのわずか5ヵ月で平均10%のインフレを記録している。確かに、今年に入って日々の小さな買い物の支払い時に、レシートを二度見三度見するのが続いている。日本のように「来月から○○が値上げ」という告知のないオランダでは、すべてが平然と行われるため、買物の現場で現実を突きつけられる。

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ウクライナ産ヒマワリ油が品薄、オランダの食生活にも影響

ロシアもウクライナも小麦輸出大国

小麦の値上げも、ウクライナ情勢の悪化に伴い行われている。オランダで使われている小麦類は輸入品が多い。輸入国の上位は米国、カナダ、欧州、ロシア、オーストラリアだ。欧州はドイツ、フランス、ポーランド、ウクライナを指す。農水省のデータによると、世界の小麦輸出国の上位はロシア、米国、EU、カナダ、オーストラリア、ウクライナとなっており、ウクライナは全世界の約7%の小麦類を生産していることになる。

オランダで常に品薄の小麦

農産物輸出で世界2位を誇るオランダは、ハウス栽培の生産量の占める割合が大きく、穀類の生産は意外と少ない。オランダ国土全体の農地が占める割合は約54%なのに対し、小麦市場に影響を与えているウクライナは71%だ。状況の悪化により、さまざまなひずみを生みだしているのは言うまでもない。オランダにおける小麦価格の上昇率は、1月との比較で5月は「倍」と発表されている。

小麦栽培を開始したオランダ農家も

小麦価格の上昇を受けて、オランダで新たに小麦栽培に乗り出した農家もある。実際、5~10%の農家が植え付けしたのではないかと言われている。とはいえ、穀類栽培に適した農地はあっても、穀類に切り替えない農家の方が現状では多い。理由は、穀類よりもジャガイモやタマネギの方が高額で取り引きされるため。現在、年内の小麦類の確保はできているとされるが、来年以降が心配される。

レストランの焼き立てパン

オランダ人の食生活に小麦は不可欠

さて、オランダ人の食生活は小麦類抜きに成り立つのだろうか。答えは「不可能」である。平均的なオランダ人の食事パターンを見てみればよくわかる。

まずはパンかグラノーラ、オートミールの朝食。10時のおやつはクッキーかケーキ類。ランチは大概がサンドイッチ。午後3時のおやつはクッキーやケーキ類。夜は伝統的にはジャガイモと温野菜と肉であるが、パスタや麺類、バケットやピタパン、ナンなども人気だ。

オランダ人が大好きなパンネンクック

週末のランチはパンネクックと呼ばれるパンケーキや、ポッフェルチェと呼ばれるミニパンケーキも定番。夜はビールで乾杯する人も多い。オランダ人にとって、小麦類は一日足りとて欠かすことのできない原料なのだ。(オランダ在住フードコンサルタント 白神三津恵)

これからは、気軽にケーキも焼けなくなるのだろうか