オランダは野菜など値上げラッシュ 欧州ガス問題が食産業と食卓を直撃
昨年秋ごろから急激なガス料金の値上げが始まり、インフレが止まらないオランダ。欧州のガス問題などを背景に、野菜などが値上がりしている。
ロシア頼みのガス料金が高騰、温室栽培の停止も
1月から約3%のインフレというデータが出たオランダ。今後インフレは上昇する可能性も十分あり、国民は気が抜けないのが現状であろう。通常のインフレに加えて、いま欧州全体で大問題になっているのがガス料金の値上げだ。
欧州のガスはロシアからの供給が約4割といわれている。ロシアとのガスに関する供給問題が食産業においても大きな問題となり、インフレに追い打ちをかけているのだ。今回はインフレの国際政治に関する背景については割愛させていただくが、オランダ食産業の現状を紹介したい。
オランダで暮らしている筆者も日々インフレを感じる。「これだけしか買ってないのにこんなに!」という驚きが、日常的に起こるからだ。
オランダは青果物(花きを含む)の輸出量が世界第2位である。トマトやキュウリ、パプリカやナスなどの大規模栽培を手掛ける温室栽培農家が多いことでも有名だ。自国生産品のトマトですら昨年に比べて25%~30%の値上げをしている。原因は、温室に使うガス料金の値上げだ。高騰するガス料金に悲鳴を上げ、一時的に生産停止している農家もあり、価格高騰に追い打ちをかけているそうだ。
物流コスト上昇や気候変動の影響も
オランダで栽培されていないインゲン豆は、アフリカからの輸入品。ガソリンの値上げのあおりを受けて、10~15%の値上げだ。バターなどの油脂類は、ステイホームの影響で家庭内の消費量やスナック類の売上げ上昇により15~20%の値上げ。
朝昼の主食であるパンは、小麦の収穫量減少による原料値上げに伴い10~20%値上げ。コーヒーはブラジルの天候不順による不作で15~20%の値上げ。フランスワインも天候不順で15~20%の値上げ。イタリアのオリーブオイルに至っては天候不順で30~40%の値上げである。
食料の値上げは、ペットフードも例外ではない。原料となる肉の値上げにより10~20%上がった。これらに便乗してかどうか、世界的に知られる企業の商品が異常な値上げ率を示し、オランダのスーパー数社が入荷のボイコットまでしている。
節約に励むオランダ国民
統計によると、一般家庭の負担増は月平均200ユーロ。これにより国全体の購買率は4%の減少と出ている。節約として行われているのは、季節の食べ物をいただき、過剰な間食や飲食を避けて、一度の食事量を少し減らすこと。
豊かな食生活に慣れたオランダの家庭で、これらの節約をどれだけ実行できるかが、今後の家計動向の鍵となるであろう。(オランダ在住フードコンサルタント 白神三津恵)