ワクチン接種進むオランダで人気の「収穫庭」 郊外の農地でのんびり楽しむ

コロナ禍の現在、行動の自由が妨げられて窮屈な思いをしている人も多いと思う。当地オランダは、 欧州連合(EU)で発案された新型コロナワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)導入国の1つであるため、この夏からはワクチン接種を2回終了している人達への、ビジネスやバカンスでの行動範囲は広がったに見えたが、渡航先の情勢次第で状況は日々変わるため、国内で過ごす人たちも多い。国内観光の需要が高まったことで注目を集めている「Pluktuin」を紹介しよう。

日本の収穫体験との違いは

Pluktuinとは直訳すると「収穫用の庭」。訳すと「庭にある植物や果物、木の実を採ってもよい庭」という意味合いだろうか。オランダ各地にこの収穫庭は存在するのだが、形態は経営者の趣旨次第で、実に多様である。例えば、花卉専門の庭もあれば、農地を年間契約して自分で農作物を栽培できる庭もある。

オランダのPluktuin 

今回紹介するのは、野菜や果物、そして花も植えてある農家だ。日本だと、梨狩りやイチゴ狩りのような特定の農作物の収穫体験がほとんどだが、ここではちょっと違う。

「おじいちゃんが幼少期に食べていた農作物」がコンセプト

今回、筆者が訪れた収穫庭のコンセプトは「経営者のおじいちゃんが幼少期に食べていた農作物を味わってほしい」だそうだ。大量生産・大量収穫を行う現在の農業では、生産者の収穫しやすい農作物と、消費者の味覚に合わせた商品が流通していることに寂しさを覚えたオーナーが、当時の味を再現すべく設立。もう20年になる。

まず入口で収穫用のかごとはさみを借りていざ収穫

こちらの収穫庭は、訪れるのに入場無料で事前予約がいらない。カフェも設置されており、収穫はせずにカフェだけの利用も可能だ。お茶だけ飲むもよし、収穫後に一休みもよし、である。

バンダナで目印

さまざまな農作物が植えてあるが、収穫をしてよい農作物の前にはバンダナで目印がついている。それ以外は収穫禁止だ。それぞれに目的の農作物を収穫して、重さや個数で決まっている価格を支払えば、持ち帰って新鮮な野菜がいただける。

郊外の広い農地

広い農地には、豆類や葉野菜、パプリカやトマトなどの他、リンゴや梨、ラズベリーなどのベリー類も豊富にある。6月から10月まで夏は野菜、秋には果物が収穫できるのだ。

多様な作物を収穫できる

自分の畑に来る感覚で収穫

オーナーの趣味で始まったような収穫庭ではあるが、昔を懐かしむ高齢の人や物珍しさにつられてやって来る若い家族、郊外でのんびりお茶だけ飲みに来る人達など、訪問者の層は幅広い。リピーターも多く、自分の畑に来る感覚で野菜を収穫していく人たちも多い。利用目的はさまざまだが、みんな楽しんで帰っているようだ。

物産店やカフェも併設

隣接してある物販店には、畑で採れたての野菜や地元産のはちみつや石鹼など農作物加工品もあり、観光マップにも掲載されていて、国内各地からの訪問者が絶えないという。日本でもうしたアイデアは、持て余している農地の活用や町おこし、地域の活性化にも使えるのではないだろうか。(オランダ在住フードコンサルタント 白神三津恵)

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