新しい動物性タンパク源「ミルワーム」 欧州で昆虫食に注目

かねてから検討された「ミルワーム」のヒトへの食用原料の認証が、4月に欧州連合(EU)で正式に行われた。この認証により、今後のタンパク質供給源への新しい可能性が開ける。日本では、無印良品の「コオロギせんべい」が話題になったことが記憶に新しいが、日本各地の伝統食の中に昆虫を食べる地域も多々あるので、さほど驚かれないのではなかろうか。日本における幼虫の食用は、蜂の子の知名度が高いと記憶している。

EUで食用原料に認証された背景は

ミルワームは、ゴミタマムシ科の甲虫の幼虫だ。こう聞いて皆さんが思いつくのは、魚釣りや鳥の餌ではなかろうか。ペットの餌として認知度は高いだろう。ミルワームは人工的飼育環境に適応しやすく、第2次世界大戦後から餌として飼育されるようになったようだが、ヒトの食料源としては聞かなかった。今回認証されたのは黄色の「イエローミルワーム」。EUでヒトの食用原料に認証された背景などをみてみよう。

ミルワームを原料とした食品群(写真提供:Protifarm社)

イエローミルワームがヒトの食料源として認証された背景は、ミルワームの持つ「タンパク質」をはじめとする豊富な栄養素と、近年対応を迫られる「地球環境を考えた上での継続可能な代替食品」としての条件を満たしているからだ。また、これからの食品や飼料の原料に昆虫食が取り入れられることは、社会全体の関心と実用的な利用価値を計るという部分で、今後広まっていくことが予想される。

地球環境に優しい食材

ミルワームの栄養素もさることながら、なぜ地球環境を考えた継続可能な食材と言えるのか。それは、飼育環境にヒントがあると言えよう。ミルワームは幼虫であるため、飼育期間が非常に短い。従って、飼育にかかる温度管理などのエネルギー使用量が減る。家畜飼育などで必要な、飼料や糞尿の処理などのコストなども削減できる。

ミルワームの幼虫(写真提供:Protifarm社)

加えて、家畜の飼育時に問題となる二酸化炭素の大幅削減も可能となる。こうした、飼育に伴う各種コストを大幅に削減できるのが昆虫食のメリットの1つである。幼虫の場合は成虫よりもさらに飼育期間が短いことから、昆虫飼育以上に時間とコストおよび二酸化炭素を抑えて、原価を安く抑えられるという構図が成り立つ。

アイデア次第で七変化する素材

では実際に飼育販売している企業の声を聴いてみよう。今回、協力してくれたのはオランダのミルワーム飼育販売企業 Protifarm社の事業開発担当Pablo Abellan氏。

「EUの認証以前から、前向きだった欧州市場であるが、ここにきて注目度がさらに上がった。環境問題の取組みを考えると、生育環境が地球環境に優しいという背景は推進される。さらに、高タンパクに加えて含有される豊富な各種ビタミン類も、もちろん注目を集める要因だ。昆虫食と言うと、虫そのままの形状で食卓に上がるイメージがあるかもしれないが乾燥した粉で提供しているので違和感はなく、いろいろな食材との組み合わせが可能であり、今後の展開に期待が持てる」とのこと。

ミルワームを粉末状にしたもの(写真提供:Protifarm社)

機能性食品のプロテインをはじめ、クラッカーやパスタなど小麦粉製品に混ぜることで利用の幅は広がる。また、粉末をフレーク状にしたりと、アイデア次第で七変化する原料として欧州市場に進出し、評価を挙げているようだ。実際、粉末の状態ならだしの素にしか見えず、抵抗感はない。

ミルワームの粉末をフレーク状にしたもの(写真提供:Protifarm社)

食肉の代替食材として各国で大豆などのタンパク質が注目されているが、大豆栽培のための森林伐採など、環境破壊が問題になっている。加えて天候に左右される農作物に比べて安定供給できる昆虫食に今後切り替わっていく可能性は大きい。(オランダ在住フードコンサルタント 白神三津恵)