オランダでスーパーの生鮮ミールキットが急成長 コロナ禍で内食が変化

長引くコロナ禍、まだまだ先が見えない状況が続くオランダで最近ミールキットの需要が増えてきた。時間をかけて少しずつ需要を伸ばしてきたミールキットが、ここにきてかなり成長した理由として、新型コロナウイルスの影響による内食事情の変化がポイントとなる。

生鮮野菜やスパイス・ソースなどがセットに

オランダにおけるミールキットは、共働き先進国であるスウェーデンの企業が2007年に欧州に紹介した時に始まったとされている。

ワークシェアリングの定着しているオランダでは、家事も育児も男女平等であり、従来は在宅の人が食事作りも担当するケースが多い。しかし、在宅者が全て料理作りを得意としているとは限らず、料理を義務でしている人には、ミールキットは強力な助っ人でもあるのだ。当初は宅配のミールキットサービスのみだった。こちらは全ての材料がそろっているが割高である。

野菜カレースープやチャーハンなどスーパーDEENのミールキット

これに対してここ2年ほど前からスーパーのオリジナルブランドとして見かけるようになったミールキットは、常温保存できる生鮮野菜やスパイス・ソースなどのみがセットで、肉や魚などは入っていない。トムヤムクンスープなど全体的にエスニック系の料理が多いようだ。

そのため、価格も6ユーロ前後(約740円)とお手頃なのが魅力だ。ベジタリアンやビーガンの多いこの国では「動物性タンパク質を植物性タンパク質に置き換えられる」という利点もあるセミ・キットの方が需要が高いのかもしれない。

「外食の味」を自宅でも

オランダの外食は3月中旬から6月まで、テークアウト以外が全く利用できなかった。手間がかかり、敷居の高そうなアジアや中東、南米などの料理への憧れはあるが、従来はたいてい外食でまかなっていた。複雑な工程や多くの原材料を組み合わせて一つの味を作り上げる調理方法は、オランダの日常的な食生活にあまりない。「外食で覚えた味を家庭でも」のテークアウト定着率は、日本ほど高くない。

パンプキンスープやトムヤムクンスープなどスーパーJUMBOのミールキット

しかし最近は「コロナの自粛と在宅勤務への切り替えによりできた時間」と「あの味を自宅でも」の願いからミールキットの種類が増えているようだ。店内で材料を探す手間が省けるミールキットなら、滞在時間短縮を呼びかけるスーパーでも売りやすいし、お客も買いやすい。

スーパーのミールキットの中身は

筆者もスーパーでミールキットを購入してみた。今回購入したのはクスクスキット。クスクスはモロッコや中東で食べられている小さなパスタだ。

スーパーJUMBOで購入したクスクスキット
野菜とクスクス、調味料ミックスに香辛料がセットで入っていた
お米のようなパスタ「クスクス」

1セットで4人分5ユーロ(約620円)。ニンニク2かけ、シナモン1本、ブイヨン1個と、使う分だけ入っているのがうれしい。肉類は入ってないので、別購入をする。鶏肉が推奨されていたが、今回はエビを入れてみた。難しいスパイスの調合もなく、非常に簡単にできた。

クスクス料理の調理工程
クスクス料理が完成

今回のクスクス調理でキット以外に必要だったのは「クスクスを戻す水」と「オリーブオイル」と「味付け用の塩少々」、それからタンパク源の「エビ」のみである。宅配バージョンでは肉や魚の入ったミールキットもあるが、いずれの場合も材料のカットは不要で、包丁を使うシーンはない。

買い物に行く手間や、店内での材料探しの手間、献立を考える手間などが省けるという点から、今後もミールキットは伸びていくと予想される。(オランダ在住フードコンサルタント 白神三津恵)

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