オランダでもデリバリーやテークアウトが伸長 人気は中華&インドネシア料理

新型コロナウイルスの影響で、飲食業界でさまざまな苦戦を強いられているのはオランダも同じだ。この状況で営業形態の強みを生かして伸びた外食といえば、デリバリーやテークアウト分野であろう。オランダでも、ここ数ヵ月の伸びは目を見張るものがある。今回は、オランダのテークアウトとデリバリー業界の現状をお伝えしたい。

アジアとつながりが深いオランダのデリバリーの歴史

朝昼はパンを食べ、夕飯がジャガイモと温野菜に肉ひと切れ。これがオランダの伝統的な食生活だ。このような伝統食の中では、デリバリーやテークアウトなどは不要だし、そもそもデリバリーに向かない。ではオランダではどのようにして、サービスが広がっていったのだろう?

第2次世界大戦前から、港町ロッテルダムでは中華料理店が存在していた。このレストランは、アジアからの渡航者専用のレストランとして栄えた。終戦後、インドネシア(インドネシアは第2次世界大戦時までオランダの植民地であった)から引き揚げてきたオランダ人がインドネシア料理を持ち帰り、オランダで広めた。ジャガイモ、野菜1品、肉という、3品加熱しただけの食事をしていた人たちには、かなりの衝撃だったと聞く。

インドネシア料理のゴーストレストラン。店舗はあるが座席はない

ここで同じアジアからの料理ということで、中華レストランでもインドネシア料理を提供するようになり、オランダナイズされた中華&インドネシアレストランが登場し、現在に至る。特に当時のオランダ人にとって、レストランでの食事は敷居が高すぎるし、準備に時間のかかるアジアン料理は、自分で作るには難易度が高すぎる。そこで登場したのがテークアウトだ。

そして、人が集まるときに中華&インドネシア料理をテークアウトして自宅でみんなで食べるのが流行した。ご馳走のテークアウトを「Afhaalchinees:お持ち帰り中華」と呼ぶようになり、現在も人気である。オランダの中華&インドネシアレストランは、ほぼすべての店でテークアウトを行っている。

「ゴーストレストラン」を起業も

2000年に、当時学生だった青年がテークアウト専門の店舗を起業し、その後、ドイツや英国の業者と吸収合併を繰り返しながら発展して現在に至るのがオランダの「ゴーストレストラン」だ。中には、小さなイートインスペースを設けている店舗もあるが、基本的には持ち帰りかデリバリーだ。

テークアウトの場合15%の割引が受けられるデリバリー&テークアウト専門の寿司屋

店舗で注文して持ち帰るケースもあるが、アプリで注文してデリバリーが現在の主流であろう。テークアウトの場合には、デリバリーより割引する店舗もある。テークアウト専門店舗のメリットの第1は、開業および運営資金がレストランより少ないことではなかろうか。以下、ゴーストレストラン開業および運営のメリットを挙げる。

 ・店舗の敷地面積が少ないため、家賃が抑えられる
 ・従業員は最小限のため、人件費の削減ができる
 ・店舗にかける内装や家具類のコストがほぼ不要
 ・料理提供用の食器や什器が不要
 ・後片付けなどの労働なし
 ・収容人数の縛りなし
 ・立地条件にあまり左右されず店舗を構えられる
 ・出前にみられる、食器の回収なし

オランダのピザ宅配店

もちろん、配達に気を使うことや使い捨て容器の問題などの課題もあるだろうが、新型コロナウイルスの収束が見えない現在、まだまだ伸びる分野ではないかと思う。(オランダ在住フードコンサルタント 白神三津恵)