本気の大人のダイエット 代謝を上げるには“速筋”を鍛える筋トレを
「歳を取ると太りやすくなる」「ダイエットしてもリバウンドしやすい」… は誰もが実感していること。その理由、「基礎代謝が若い頃よりも落ちているから」も大体、理解しているだろう。ではその「基礎代謝が落ちること」は、加齢していく中であらがえないことなのかとなると、即答できる人は少ないのではないか。久野助教授に話を聞こう。
◆まず代謝とは何でしょう。
「エネルギーの消費ですね。皆さん、そういうと日常の動作や運動をイメージする。でも普通の人の場合、その合計は3割程度、残り7割は基礎代謝なんです。基礎代謝とは、“私たちが生きていくために最低限必要な各臓器のエネルギー消費の合計”。座っていても睡眠中も心臓は動いているでしょう。この基礎代謝に一番使われる割合が高いのが筋肉です。ところが筋肉量も加齢に伴って低下します。だから“歳をとること”=“太りやすい体質になる”という図式になってしまうのです」。
◆それなら筋肉を鍛えれば、年齢を重ねても体質を変えられることになりますね。やっぱり運動、ダイエットにつきものの、歩いたり軽く走ったりの有酸素運動がいいのではないでしょうか。
「そこが間違いなんですね。筋肉には、無酸素運動の時に使われる速筋と有酸素運動の時に使われる遅筋とがあります。その筋繊維の割合は個人差があってほとんど変化はしません。けれどその筋繊維自体を太くすることは可能です。加齢により細くなり、量が減っていくのはどちらか。ズバリ、速筋が選択的に細くなるのです。この“老化現象”は20代からすでに始まって、全体の筋量に影響を与えるのです」。
◆だから落ちてしまった速筋を鍛えなくてはいけないのか、なるほどなるほど! でも歩いて遅筋を鍛えることも効果的に思えますが…。
「遅筋を肥大させるのは難しいのです。もちろん不可能ではないですが。ただ歩くだけでは太くならず、酸素の供給を効率的にするために毛細血管を増やす方向に働きます。それからもちろん、ダイレクトな脂肪燃焼には効果がありますよ。でもそれと基礎代謝を上げる筋肉作りは分けて考え、きたえやすい速筋をきたえましょう。そこで大人のダイエットは、(1)食事コントロール(2)有酸素運動(3)筋トレ‐‐の3本柱となってくるのです」。
(参考資料=『代謝高めて中高年ダイエット』(NHK出版))
◇“ヨゴレ腸”をきれいに 「ファイバーアカデミア」発足
日本人の食物繊維の摂取量は、野菜中心の和食から高脂肪食への急激な食生活の変化に伴い、この50年で半分近くに激減した。2004年のデータでは1日の必要摂取量20~27グラムに対し14・2グラムしかなく、6グラム以上も不足している状態。特に20~40代にこの傾向が顕著だ。
このような状況を受けて先頃、東京大学・光岡知足名誉教授ら5人を発起人とし、「ファイバーアカデミア」が発足した。便秘解消に留まらない食物繊維の新しい可能性、食物繊維の持つ「老廃物や毒素を吸着し排出する」という機能に注目し、現代人の“ヨゴレ腸”をきれいにし健康な身体をつくる“ファイバーデトリックス”の概念を伝えていくという。
賛同企業は、アサヒ飲料(株)・アサヒ フードアンドヘルスケア(株)・敷島製パン(株)・日本製粉(株)・(株)ロッテ・ロート製薬(株)。
●暮らしの中で1日1万歩を
もちろん有酸素運動は、脂肪燃焼のポイントだ。最も取り入れやすいのがウオーキング。肥満などの生活習慣病を防ぐには1週間で2000キロカロリーを消費する必要があるといわれる。目安は1日1万歩。連続した歩数である必要はなし、時間の余裕のある日に余分に歩いてもいい。「生活しながら歩く」「歩数の不足分は別の日にカバーする」意識で。
●極端な食事制限は筋量ダウンに
体重を落とすことに熱中するあまり極端な食事制限をすると、必要なたんぱく質量が不足するために筋肉量が低下してしまう。それで体重が一時的に減少したとしてもそのまま基礎代謝の低下につながり、これがリバウンドの原因になる。ダイエット中こそ、筋肉を増やし維持するためのエネルギー源である糖質と、筋肉を構成しているたんぱく質をしっかり取る。代謝を高めるための運動時に必要な栄養としては、(1)たんぱく質(2)脂質(3)炭水化物(4)ビタミンB1・B2(5)ビタミンC(6)クエン酸(7)水分‐‐をマークしたい。
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酢や柑橘類などの酸味成分であるクエン酸は、糖質の代謝を促進し脂肪の燃焼を助け、筋肉疲労物質である乳酸が発生するのを抑える。運動の後にはぜひ。
●そして速筋を鍛えよう!
大腰筋とは腰の奥にあり、太股の骨と背骨をつないでいる筋肉。いわば身体を支えている大黒柱。加齢と共に目立って減少するのでケアは早いうちから。
速筋を鍛える筋トレは1面イラストを参考に。とくに目立って減少する大腰筋はポイントにしたい。筋トレ前にはまずストレッチをしてから。