海藻事典:わかめ・めかぶ・ひじき・あらめ・板海苔・あかもく
「鳴門わかめ」の肉厚で生き生きとした歯ざわりは、渦巻きを生むほどに激しい鳴門海峡の潮流が育てる。草木灰をまぶして天日乾燥する「灰干し」という当地ならではの製法もある。わかめはビタミン・ミネラルが豊富で特にカルシウムが多い。また、コレステロールや脂肪の蓄積を防ぎ、腸の働きを活発にするアルギン酸、がん細胞の消滅作用のあるU‐フコイダンも含まれている。
鳴門わかめの春夏秋冬のレシピを満載した『鳴門菜々』(鳴門市経済部地場産品振興対策室 088・684・1111)から、『わかめのオムレツ』をご紹介。
「めかぶ」とはわかめの生殖器のこと。春になり、わかめの幼芽が段々と成長するにつれ、茎の基部の方に胞子葉と呼ばれるヌルヌルした葉状の器官ができる。これがめかぶ(芽株)だ。
めかぶには実にわかめの三倍近くのEPAなどの不飽和脂肪酸が含まれており、脳梗塞や心筋梗塞など血栓による病気を予防する。
ヌルヌルとした食物繊維が海藻の中でも豊富だが、この主成分はフコイダンやアルギン酸。アルギン酸は肝臓で作られた胆汁酸を吸着して便と一緒に排泄する。胆汁酸が減少すれば、その原材料であるコレステロールを新たに補給するので、その結果体内の余分なコレステロールが減少するわけだ。フコイダンの方は、コレステロールが血管の壁に付着した動脈硬化を促進させる悪玉リポタンパク質を分解する。血液を固まりにくくする性質もある。
わかめのオマケなんてもんじゃない。かなりすごい大物なのだ。
他の海藻類は、その食材を見れば海の中で存在していた時の形もある程度想像がつくが、ハテ、あの「板海苔」はどうやって作られるのか、考えてみるとフシギだ。
全国海苔貝類漁業協同組合連合会によると、まず9月末から10月の初めに海苔の種を付けた網を漁場に張り込む。これが太陽の光をあび海の栄養分を吸収してすくすく育ち、10月の終わりには新海苔が収穫され始める。これ(現藻)をミンチし、全自動機ですいて加工し乾燥させたのがあの板海苔なのだそうだ。
生育期間中、海苔の網の中には青海苔・珪藻といった雑藻が混生したり雑菌が付着して、海苔本来の品質を損なうことがある。そのためリンゴ酸・クエン酸といった食品添加物に認定されている有機酸を使った酸処理という方法が、施される。PH2の有機酸につけると他の雑藻類は海の中に落ちてしまうが酸性に強い海苔は残る、という仕組み。海の牧場では化学の実験の法則が上手に生かされているのだ。
海苔にはカロチンをはじめ、ビタミンB1・B2・Cが豊富。また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などを予防するとして最近注目されているビタミンU、それに葉酸、ナイアシンなども含んでいる。骨の成長や血液の増加にはなくてはならないカルシウム・鉄分・ヨウ素などのミネラルも豊富。
強力なダイエットの味方とされているのは低カロリー食品で、なおかつ身体に吸収されにくい水溶性の食物繊維が三〇%も含まれているから。これにはコレステロールや中性脂肪を抑える働きもあるため、糖尿病や高脂血症・心筋梗塞・大腸がんなどの成人病も予防する。
三重県の伊勢志摩は日本でも有数の海藻が豊かな海の一つ。木曽山脈の水系をたたえる伊勢湾の水が反時計回りに回ってたどり着いた水深浅い岩礁域は、黒潮の影響で暖かい水も上がってくるからだ。この地の特産物の一つが良質な「ひじき」だ。
干しひじきのカルシウム含有量は牛乳より一〇倍も多い一〇〇グラム当たり一四〇〇ミリグラム。また鉄分は豚のレバーの四倍の同五五ミリグラム。水に溶けず消化もされにくい食物繊維、セルロースも豊富で、骨の強化、血液の増加、便秘解消にもってこいの食材だ。
三重県ひじき協同組合(0596・37・4588)では毎年、「敬老の日」を「ひじきの日」として「ひじき祭り」を開催し、伊勢神宮内宮のおかげ横丁でひじきの無料配布を行う。お近くの人はぜひ立ち寄ってみては?
昆布の仲間の一種である「あらめ」はアルギン酸・カリウム・カルシウム・フコキサンチン・ヨード・食物繊維を豊富に含む海藻。伊勢志摩では古くからお供え物として伊勢神宮に献上していた。この地方の漁師があらめをゆでて圧縮したものを包丁で刻み干し仕上げた『きざみあらめ』は、京都方面のお寺に精進料理として売り出したのが始まりで西日本に広がった。調理食材としては一〇分で九〇%、三〇分で一〇〇%の早い水戻し効果が特徴、便利な一品だ。
あらめのレシピを満載した「あらめ あらかると BOOK」(三重県漁業協同組合連合会・三重県あらめ協同組合)がこのほど登場。問い合わせは059・228・1200
能登半島の冬の海でとれる褐藻類、「あかもく」にエイズウイルス抑制効果があるということが分かり、話題になっている。あかもくから熱水で抽出したエキスがウイルスの増殖抑制に効果を示しエイズウイルスでも同様の効果が得られたというものだ。
アルギン酸やフコイダンの酸性多糖のヌメリが多い。煮物、和え物に便利、とろろ汁にあかもくをすり下ろしてご飯にかけるのは能登の漁師の定番料理だ。