有機JASマークを活用しよう! より受け取りやすくなったオーガニック情報

2002.04.10 80号 2面

化学肥料や農薬などを使わずに厳しい基準で育てられ、私たちの身体をはじめ、地球・環境・生き物に“やさしさ”を与えてくれる有機食品。安全で安心しておいしく食べられるのはもちろん、健康的で地球の環境にも良いとなれば、意識して選びたいもの。その有機食品の証しが「有機JAS」マークだ。昨年4月1日から、有機食品には原則としてすべて表示が義務づけられるようになった。制定二年目を迎えた、いまが旬の新しい制度を再確認してみたい。「有機JAS」マークを見つけたら、ぜひ手に取ってみよう。

◆有機・オーガニックとは

“有機”と聞くと何となく良さそうだなぁと感じる人も多い。そもそもの意味は「炭素原子を含む化合物の総称」(『広辞苑』岩波書店)らしい。これだけでは眉間にシワが寄ってしまうが、平たくいえば生命力を持っているモノや生きものを組織して維持しているモノという意味。英語では「オーガニック(organic)」や「バイオ(Bio=生命)」という言葉が用いられる。

◆なぜ法律改正があったのか

それでは、「有機JAS」というのはいったい何なのか。農林水産省(農水省)は昨年4月1日から、“有機”を表示するものに基準を設け、有機JAS規格に適合しているかを第三者認定機関で検査、「有機JASマーク」をつけたものだけに、“有機”と表示できる制度(例えば「有機栽培トマト」など)を導入した。

ところで、なぜ法律の改正までして、有機JASという規格を作ったのか。世界的な動きからまず見てみよう。

◆国際的な関心の高まり

オーガニック先進地域の欧米では、一九九〇年代前半からオーガニック(有機食品)の統一基準を作り、第三者機関が認定したものに、認証マークを表示するという考え方を定着させていった。もともと欧州ではオーガニックへの取り組みが早く、一九七二年には生産者・研究者・消費者が世界中から集まり、オーガニック農業を促進する目的で「国際オーガニック農業運動連盟(IFOAM、本部ドイツ)」を設立。「オーガニック農業及び食品加工の基本基準」を作るなどの活動を行ってきたこともあって、欧米を中心に世界的にオーガニック食品への関心が高まっていった。

◆日本のあいまいな表示を明確化

世界的にオーガニック食品への関心が高まる中、日本でも農水省が一九九二年に有機農産物等ガイドラインを作成した。しかし、基準や認定方法があいまいなことに加え規制もなく誤解を招く表示も多かった。

例えば「有機栽培で作りました」といって「無農薬」で栽培しても「化学肥料」を使っていたものが出回るといった事態が起きていた。法的な規制がなく表示も任意だったためだが、消費者の健康や安全性に対する関心が高まり、EU統一基準や国連での検討(コーデックス委員会)も進む中で、適切な表示への見直しを図る必要があった。こうした背景から日本でも昨年4月に有機JASで有機農産物・加工食品の基準を明確にした。

◆「提携」は認定なしでも

しかし例外もある。生産農家が直接消費者に販売する場合、有機食品の宅配を行っている流通業者など(例えば「大地を守る会」)「顔の見える関係」で提携している場合は、パンフレットでの情報提供など、一定の条件下で認定を受けなくても良いことになっている。

◆マークの由来

99年秋に農水省が一般公募した応募作品217点(131人)の中から、千葉県市川市在住の島内泰弘氏のデザインが採用された。

マークの趣旨は、左に太陽、右に雲を図案化、それが重なり合った部分が葉の形を作っている。化学肥料や農薬などの化学物質に頼らず、自然界の力で育った農産物を表現するとともに、円で人や環境にもやさしいことを表したという。

改正JAS法の施行にともない、今後、農産物や加工食品が「有機」表示を行う場合には該当商品に必ずこのマークをつけなければならない。

◆有機JASマークがつけられる生産・加工基準

●有機農産物

化学的に合成された肥料や農薬の使用を避けることを基本に、(1)播種または植え付け前2年以上、多年生産作物では最初の収穫前3年以上、使用禁止資材を使わない堆肥などによる土づくりを行ったほ場において生産された農産物(2)遺伝子組み換え技術を用いて生産されていないこと‐など。

●有機農産物加工食品

化学的に合成された食品添加物や薬剤の使用を避けることを基本に、(1)有機加工食品は食塩・水の重量を除いた原材料のうち、有機農産物加工食品以外の原材料の割合が5%以下であること(2)食品添加物は必要最小限度(認可リスト以外の使用禁止)(3)放射線照射食品、遺伝子組み換え技術を用いて生産されたものの禁止‐など。

◆特別栽培農産物

有機農産物とは別に、特別栽培農産物というものもある。店頭などで“有機”と書かれていなくても“減農薬”と書かれたものなどがそれだ。

現行(3月現在)のガイドラインでは、(1)無農薬で無化学肥料(2)無農薬で減化学肥料(3)無農薬で化学肥料使用(4)減農薬で無化学肥料(5)減農薬で減化学肥料(6)減農薬で化学肥料使用(7)農薬使用で無化学肥料(8)農薬使用で減化学肥料(図)が認められている。ただし、化学肥料を使っていても無農薬であれば「無農薬野菜」と表示できることや、減農薬の“減”とはどのくらいなのかなど問題点がまだある。この問題点を解決する検討が現在進められている。

スーパーの店頭でも、最近では独自ブランドでコーナー化する動きも出てきている。ジャスコの「グリーンアイ」やダイエーの「すこやか育ち」などだ。扱い商品の多くは減農薬、減化学肥料などの特別栽培農産物。その中で、ジャスコでは有機農産物と有機加工食品はグリーン、主原料に有機農産物を五〇%以上使用した加工食品はブルー、特別栽培農産物はオレンジなどラベルの色を変えて分かりやすく表示している。

また、外食産業のシーンでも有機食品の需要は年々拡大しており、有機野菜などを原材料としたメニューを看板にしている店も目立ってきた。『O ‐bento(オーベントー)』というアメリカ産有機米一〇〇%使用、野菜や牛・豚・鶏肉まですべて自然のものを原材料とした有機弁当も登場している。インターネットの普及とともに、ホームページ上で有機農産物を販売するところも増えている。

今後も“有機”という言葉はいたる所で目にし、耳にすることになろう。有意義な情報交換をしていくためには、消費者自身が有機農産物・加工食品に興味を持って育てていく姿勢が求められているのだ。

かつて農作物はほとんどが有機農産物であり、それが当たり前だった。それがいつの間にか農薬や化学肥料を使う化学農法が進み、農業基本法(一九六一年)のもと、生産効率重視の近代農法として促進され、定着してきた。本来食べ物は「健康の源」でなければならないのに最近では「食原病」などという言葉も生まれている。いま改めて“有機”に関心が集まっているのは、健康やおいしさ、環境、ひいては食べ物本来の姿をもう一度取り戻そうという動きなのだ。

現在、店頭に出回っている食品にはどのような有機農産物・加工食品があるのだろうか、チェックしていきたい。野菜やコメばかりでなく、普段からよく使う味噌・醤油・ソースなどの調味料から納豆・パン・ジュース・お茶・コーヒーにいたるまで、あらゆる食品に「有機JASマーク」をつけた製品が続々と登場してきている。

毎日の食事に味噌は必需品という人は多い。ひかり味噌(株)の『有機の味噌』(五〇〇グラム)やマルマン(株)の『有機生みそ』(五〇〇グラム、七〇〇グラム)などが有機JAS製品として店頭に並んでいる。

醤油は、香川県小豆島の(株)ヤマヒサが一二年ほど前からいち早く『有機無農薬醤油』(五〇〇ミリリットル)を開発し有機認定を取得。広島県福山市の(株)ロイヤルマーゴは業界で初めて原料栽培から製品までの一貫行程で有機認定を取得した『寺岡家の有機醤油・濃口』(三〇〇ミリリットル)を展開しているほか、大手メーカーでは、キッコーマン(株)が有機丸大豆と有機小麦で作った『特選有機しょうゆ』(五〇〇ミリリットル、一リットル)、ヤマサ醤油(株)が『有機しょうゆ』(二〇〇ミリリットル、五〇〇ミリリットル、一リットル)を相次いで発売している。

埼玉県本庄市の高橋ソース(株)は『カントリーハーベスト』ブランドのオーガニックソース(とんかつ・ウスター・中濃)三種類とトマトケチャップ二種類を発売。トマト、タマネギ、ニンジン、リンゴなど原料となる野菜や果実は、すべて国産の有機・特別栽培農産物を使用している。

野菜ジュース類で有機JAS認定を取得したのが、丸善食品工業(株)の『有機トマトジュース』『有機野菜ジュース』(一九〇グラム)。原材料のトマトやニンジンは、米国カリフォルニア産有機農産物を使用。トマトジュースは良質なトマトの甘みとコクが生きており、食塩を抑え素材のおいしさをいかした健康志向。野菜ジュースはトマトと六種の野菜(ニンジン、パセリ、レタス、クレソン、セロリ、ホウレンソウ)をバランス良くブレンドした。

このほか、納豆業界では初めての有機JAS認定を取得したのが(株)ヤマダフーズの『有機無農薬極小ミニ2』。このほかお茶やコーヒー、酢、ビールまで登場している。

ここでは紹介しきれない商品も次々登場してきているので、売り場で目を凝らして「有機JASマーク」を探して、安心を食べよう。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら