百歳への招待「長寿の源」食材を追う:楊梅(ヤマモモ)

2002.10.10 86号 11面

原産地がシベリアのため、シベリア人参と名付けられた新しい食材(薬材)が、最近注目を集めるようになった。その薬理と薬能は多種多様で朝鮮人参を上回るとされる。一方、楊梅は中国の夏を代表する果物。両者とも薬効が非常に高く、多方面に活用されている。庶民性が高く、これからはポピュラーになると思われる。

(食品評論家・太木光一)

楊梅は中国語で「ヤンメイ」と読む。日本でいうヤマモモのこと。ヤマモモ科の常緑高木で中国南部から日本南部にかけてが原産地。中国では二〇〇〇年以上の栽培の歴史を持つ。机子・朱紅・樹海の別名を持つ。

この楊梅には、一般にみられるような果実がなく、その表面は多汁肉質の突起が密にみられる。山に多く生育しているのでヤマモモの名前が生まれた。中国では、冬のミカンに対して夏を代表する果物となっている。好物の一つでもある。

栽培されている品種は多く、

茘枝(ライチー)楊梅…福建省産。5月から市場に出る早生種で果重量は五~六グラム

紅梅楊梅…浙江省と江蘇省が主産地。6月上旬から出回り果重量は一〇グラム、色は紅色

白楊梅…浙江省産。果重量は一一グラム。果面は白く果汁が多く、糖度も強い優良品。6~7月に出回る楊梅の代表品種

大炭梅…浙江省産。果重量一四グラム。果汁も多く、甘酸バランスも良い

そのほか数品種あるが、地方の改良種が多い。日本でも野生種はすべて小型。徳島県産が代表種で一〇グラム前後、甘味の点でも優れている。

採取シーズンが雨の多い時期に当たるので最大の注意が大切。成分をみると甘味の中心はブドウ糖と果糖。酸味はクエン酸・リンゴ酸・乳酸など。これらの酸は食欲増進に役立つ。またビタミンCも多くみられる。

食べ方としては生食が最高。日本ではジャムや果実酒に利用される。中国では楊梅の酒は貴人の飲み物とされ、美容・健康に良く、アルコール度の高い高梁酒を用いてもよい。

楊梅は果実や樹根・樹皮に薬効が高く漢方薬として愛用されている。果実は酸味があるため唾液の分泌を良くし、口の渇きを止め、健胃・整腸の効果が高い。また吐き気・下痢・心因性の腹痛にもよく効く。さらに消炎・止血・胃痛などにも広く用いられ、内服用の製品もみられる。

そのほか益腎利尿の効果も大きく、解暑の力はすべての人が認めるところである。従って愛好者は非常に多い。

根は止血・吐血に用いられるほか、歯痛や嘔吐などにも良い。各省の漢方薬研究所でもさらなる研究が進められている。そして内服薬・煎じ薬としてさまざまな名称の製品が販売されている。

樹皮は、早春に剥いだものが良く、消炎・収斂・止瀉・止血などに効用がみられる。また悪酔いにも特効ありとされている。生食が最高であるが、干した「楊梅乾」と呼ばれるものは風味が多少落ちるものの薬効の点では期待されよう。

日本でも楊梅は煮食や砂糖漬けにされているが、中国でいう蜜餞や果醤にあたる。また楊梅の焼酎漬けは中国・河南の人たちが好む作り方でもあり、保健の点からも望ましい。

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