パウチ惣菜特集
◆パウチ惣菜特集:健康志向反映商品が増加、競争は熾烈に
◆ニーズの多様化に対応 高齢者・単身世帯や働く女性の増加など社会構造の変化を背景に、惣菜市場は10兆2518億円と右肩上がりを続ける中、パウチ惣菜はその簡便性・保存性の高さなどからひときわ脚光を浴びている。中でも近年は減塩や無添加など健康志向を反映した商品が増えてきた。また、日本食の再認識や訪日外国人の増加などを背景に和惣菜に対する人気が高くなっているほか、外食や食料品スーパー(SM)向けに素材系商品を投入するなど、さまざまなニーズに対応していくことが求められている。2018年のパウチ惣菜の市場規模はついに7000億円の大台を突破。封を開ければすぐに食べることができるといった即食性が高く評価され、忙しい現代人にとっては手頃な簡便食となっている。メーカー各社の業績は比較的好調だが、新規参入が増えて競争は激化。生産ラインを増設して対応するメーカーも一部で見られ、新商品を軒並みラインアップしていく体制に入っている。本特集では、メーカー、小売業の取組みを通じて、パウチ惣菜市場の動向と展望をまとめた。(小澤弘教、徳永清誠、立川大介、福島厚子、三井伶子、山本仁、藤村顕太朗)
●6年間で市場規模3.6倍に
日本惣菜協会の「2019年版惣菜白書」によると、18年の「袋物惣菜」(容器包装後低温殺菌処理され、冷蔵で1ヵ月程度日持ちする調理済み包装食品)の市場規模は、7253億4700万円で、前年から9.7%成長した。同白書では12年の市場規模から発表してきたが18年までの6年間で5257億7200万円市場規模を拡大、12年比で3.6倍の成長を遂げてきた。「袋物惣菜」はチルド帯を対象としているため、常温商品も含めると、その規模はさらに大きいとみられる。
惣菜市場全体の拡大に伴い、その存在感も増している。米飯類、調理パン、調理麺、一般惣菜と比較した18年の市場構成比は7.1%、12年比で4.8ポイント増加した。12年当時は惣菜の中でもシェアは最下位であったが、18年には米飯類、一般惣菜に次ぐ上位3位に上昇している。
マーケットを業態別に見ると、主戦場は圧倒的にコンビニエンスストア(CVS)で構成比61.8%、市場規模4482億4400万円となった。以下、SM21.6%、1567億1200万円、総合スーパー(GMS)8.9%、642億0400万円、専門店ほか363億3300万円、5.0%、百貨店198億5400万円、2.7%と続く。業態別カテゴリーで見てもCVSのパウチ惣菜は他の業態と比較して比重が最も高く、全体の13.6%を占め、次いでGMS6.8%、SM5.8%と続く。
依然としてCVS、SMで市場の8割以上を占める構図が続く。CVSでは、消費者の多様なニーズに合わせた商品を展開。魚惣菜、つまみ惣菜、トレー型容器、カップ型容器、ワンハンド商品といった商品開発を推進している。中でもトレー型容器は焼き魚などの風味や形を崩さず、簡単にレンジアップできる利点もある。一方でSMでパウチ惣菜を購入する頻度が増えているとのデータもあり、小売業の間での顧客獲得競争も今後の注目ポイントとなっている。
●日本食再認識で和惣菜順調
各主要メーカーの動きを見ると、フジッコでは主力の和惣菜が好調に推移。1人前食べきりサイズの「おかず畑おばんざい小鉢」シリーズでは、手作りのような「食感」や「風合い」を実現。豆類、根菜類など不足しがちな食材をおいしいおかずに仕上げた「おかず畑」シリーズは、料理の材料としても使用されるほどの人気ぶりだ。また、“日本の伝統とおもてなしの心にふれる”をコンセプトに掲げたケンコーマヨネーズの「和彩万菜」シリーズも順調に売上げを伸ばしている。こうした和惣菜は、ホテルの朝食バイキングなどに歓迎され、近年の和食ブームやインバウンド向けに需要がある。外食向けでは、煮込む手間が不要となるので、人手不足の現場に重宝されているようだ。
一方、洋惣菜の人気は高い。明治は「デイリーリッチ」ブランドでスープ・カレーの拡販を推進している。チルド洋風食品として初めて日本野菜ソムリエ協会の公認を取得しており、同協会とコラボしたアレンジレシピを提案。また、売場作りにも貢献し、他部門とのクロスMDにより店舗全体の業績を押し上げる商品としてブラッシュアップを図っている。
野菜関連を見ると、ヤマザキの「もう一品」シリーズは、畑で収穫した野菜を採れたてのまま調理して食卓に並べることを目指したもので、素材の味を生かした商品群で構成。そのため原料の基礎研究までさかのぼった「あくなき良品づくり」を徹底して行っている。近年は、家庭で調理したような温かみのある味付けを実現した「いろどり」シリーズが好調。さらに大容量タイプの「ファミリー」シリーズが大きな伸長を見せている。
ロングライフ惣菜はCVSを中心に大きな広がりを見せている。ファミリーマートでは40代の女性客をターゲットにした「お母さん食堂」ブランドで展開。夕食のおかずにそのまま出せる食べ切りサイズのトップシール商品をはじめ、弁当のおかずや週末の献立のために買い置きができるスタンドパック商品など、さまざまなシーンに沿った豊富な品揃えとなっている。来店客はパウチ惣菜単品ではなくサラダなどと組み合わせて購入する傾向があるようで、前年を大きく上回る業績を上げている。
人手不足や廃棄ロス問題などを背景に容量の少ないパウチ惣菜のニーズが高まっている。ケンコーマヨネーズでは、ロングライフサラダを従来の1kgタイプから近年は500gタイプのラインアップを増やし、今後も小型化を進めていく考え。また、洗浄や下処理が不要な素材系商品を投入することで、時短ニーズに応えるとともに新しい市場開拓につながっている。
●健康志向がサラダチキンに追い風
パウチ惣菜市場において、健康面から注目されているのはサラダチキンだ。高タンパク質、低カロリーという理由で比較的若い世代に人気が高い。特に鶏むね肉にはイミダペプチドが多く含まれ、疲労を抑制する機能が知られている。そのため、健康・ダイエット志向の消費者には今後も歓迎される食品として成長が見込まれている。
プリマハムでは、サラダチキンのバリエーションを拡充。簡便な切り落としタイプや少量使い切りタイプといった商品ラインアップを図っている。ダイエットに気遣う人や主婦層によるサラダトッピングといった食べ方も広がっており、サラダとサラダチキンは一定度の補完関係にあると見られる。
健康意識の高い消費者には添加物も気になるところだ。石井食品では、無添加調理による商品を展開。農産物を旬に収穫して商品化することを実践するとともに、生産者と消費者の距離を縮めた商品開発などを手掛ける。主力の「ミートボール」ではおかずに限らず、普段の料理にも使用してもらえるようなレシピ提案も行っている。
また、減塩ニーズも増え、イチビキが常温保存できる塩分25%カットのパウチ惣菜シリーズを2月からラインアップした。プリマハムも塩分25%カット・糖質ゼロのサラダチキンを今春に投入している。
また、魚に含まれる栄養素のDHA、EPAに着目した水産系素材も注目され、日本アクセスはプライベートブランド「Delcy」シリーズから骨まで軟らかく食べることができる「さばの味噌煮」「ぶり大根醤油」などを展開。魚調理が苦手な消費者の取り込みも狙う。
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