寒天特集

寒天特集:手作りデザート見直しを好機に 粉末切り替え拍車も

水産加工 2020.07.22 12086号 06面

 ●「天然」安定供給が課題

 寒天のトップ企業である伊那食品工業。売上げの6割を業務用関連が占める。「コロナ禍で、外食や学校給食などの需要が圧倒的に減った。在宅ニーズの高まりで、ゼリー・デザートの素などの“手作り商品”は伸びたが業務用のカバーには至っていない」(塚越英弘社長)

 本社がある長野県伊那市の「かんてんぱぱガーデン」は、直営ショップやレストラン、ミュージアム、ホールなどを備え、年間約40万人が訪れる地元の観光スポット。国の緊急事態宣言に伴う外出自粛で来園者が激減、直営店の売上げに響いた。「コロナ自粛中は健康志向どころではなく、インスタント麺や缶詰など簡便性や保存性の高い食品に消費者の関心が向いた。事態が落ち着けば、健康志向が再び高まるはず。ニーズの変化をとらえ、親子で楽しめる寒天デザート、手軽でヘルシーな寒天製品の展開に取組みたい」

 北原産業の伊藤宗登社長も「コロナを機に粉末寒天を使った家庭のデザート作りが見直された」と説明。4月後半から6月初めにかけた粉末寒天の売上げは、前年の2倍以上に伸びた。「粉末寒天を使えば、市販のゼリーなどを買うより少し手間でも楽しみながら安く作ることができる。こうした需要復活を消費拡大につなげたい」とする。

 一方、角寒天は「高齢者層が需要の中心なので、外出自粛で近所の集まりなどが中止になった影響を受けて需要は停滞気味」。内食化で調理機会が増えたことで、調理が簡便な粉末寒天への切り替えも進んでいると見る。

 記録的な暖冬の影響で19~20年の天然製造が滞った角寒天業界。製造業者でつくる長野県寒天水産加工業協同組合によると、19~20年期の角寒天製造量は69tで、前期を7t、9.8%下回った。

 「暖冬続きで各業者とも在庫が薄い中で、さらに減産となったことで供給への課題が浮き彫りになっている。棚の欠品は需要そのものの低下に直結する問題で、粉末寒天への切り替えにも拍車がかかってしまう。安定供給が維持できるよう、対策を急ぎたい」(五味徳雄組合長)

 北原産業は、暖冬がさらに進んで製造減退の加速を想定し、韓国産角寒天の展開を始めている。「万が一に備えた対策。需要基盤の維持に向けては多彩な寒天製品と並行して提案していきたい」

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