すしの素市場に追い風 消費増税や恵方巻き廃棄問題で手作り提案活発に
すしの素はご飯と混ぜるだけで華やかなちらし寿司が調理でき、親族や友人と食卓を囲む、お祝いメニューが簡単にできる。市場は粉末タイプが発売50年、具入りが40年を超えて根強い人気を誇る。消費のハイシーズンは子どもの成長を家族で願う、3月のひな祭り商戦。直前の恵方巻きは近年、惣菜の廃棄が社会問題になり、すしの素の手作り提案には好条件となる。昨秋の消費増税後の内食回帰も追い風に働き、昨年末から市場は久しぶりに堅調な実績で推移し始めた。最盛期を前に販売とプロモーションの勢いを増し、一緒に食べる幸せ、調理の楽しさといった基本価値を伝える。
消費の多くを高齢層のヘビーユーザーに頼る
すしの素は全て手作りするより酸味が調整しやすく、味わいが決まりやすい。ご飯になじみやすい粉末、湯殺菌などで素材を生かし、低温加工された具材タイプに大別できる。両タイプとも炊きたてのご飯に混ぜるだけでちらし寿司が完成。魚介類などのメーン具材をのせればごちそうになり、海苔で包めば巻き寿司や太巻きが作れる。
市場は2020年3月期も減少しているとみられ長年縮小傾向を続けている。寿司人気は不変だが、にぎり寿司に人気が集中し、特に外食の安価な回転寿司、充実する中食・惣菜寿司に消費を奪われている。
ハレの日向きのパーティーメニューだけに小世帯で苦戦。消費者の健康、汎用(はんよう)志向も深まり、食酢も調味酢へ需要がシフト。すしの素と設計がバッティングし、急成長の勢いに押されている。
市場規模は以前の100億円以上からピークアウトし、現在は半減近い。パイオニアであるタマノイ酢の粉末酢が販売50年を上回り、具材入りの桃屋「五目寿司のたね」、トップブランドの永谷園「すし太郎」が40年超。消費の多くを高齢層のヘビーユーザーに頼る。若年開拓が長年の課題だが、ロングセラーの指名買いも多く、プライベートブランドの低い構成比も特徴となっている。
シェアは永谷園が5割を超え、Mizkanが3割、桃屋が1割とみられて主要企業で大半を占める。各社とも毎年、魅力的なメニュー提案を推進し、定着の兆しが見られるのがお茶わんや弁当の日常使いだ。
永谷園は専用の「お茶碗でも、すし太郎」を展開し、最近2~3年で急成長。Mizkanは食酢の健康価値を伝える「酢の力」提案を続け、用途を広げてお茶わん1膳の酢飯も浸透。個食化と健康志向が相まって以前では考えられなかったパーソナルユースが定着し始めている。
今期最大のトピックが10月からの好業績。桃屋が大幅に伸ばし、Mizkanも11月から2桁成長と例年にない好況に沸いている。もともと年末は親族の集まるハレの日需要が見込めるが、おせち以外でも焼肉やすき焼きなどほかのごちそうメニューに押されていたのが実情だ。
10月からの消費増税による生活防衛意識の高まり、内食回数の増加にすしの素も恩恵を得た。半面、原料高で改定した永谷園は主力品で苦戦し、減収分を追随で補う格好も見える。
ひな祭りには市場で少なくなったTVCMを永谷園が引き続き大量投下。桃屋も提供ラジオでメニュー紹介して、商戦を盛り上げる。Mizkanは特設サイトの「すしラボ」を開いて、キッコーマンとの共同販促「#すしパやってみた」も行って話題を提供。簡単な手巻きを紹介し、三世代で思いを伝える食文化、情緒メリットを伝える。恵方巻きも同様に食べる人を思う、手作りの価値を訴える。
※日本食糧新聞の2020年2月3日号の「すしの素特集」から一部抜粋しました。