糖質最前線バランス食特集

糖質最前線バランス食特集:東北大研究グループの糖質制限実験

総合 2019.04.10 11860号 06面

●健康で有益な食事療法探る

東北大学農学研究科都築毅准教授らの研究グループは、糖質を抑えた食生活を続けると、老化を促し、健康にも悪影響を与える恐れがあることを示した。マウスを用いた実験だが、ブームともいえる糖質制限のあり方に警鐘を鳴らす内容ともいえる。

低炭水化物・高タンパク質食は、糖質制限食として知られ、食事の量を減らすことなく炭水化物の摂取を制限し、タンパク質などで補う。炭水化物(コメ)中心の日本食と対極にある食事療法で、内臓脂肪減少効果で注目されている。

ただ、老化を促進するという説もあり、同研究グループは1年間にわたり、これを明確にするため、マウスを用いて実験を開始した。

このマウスに、日本人の一般的な食事に相当する餌と、高脂肪食、糖質制限食を与え比較した。糖質制限食のマウスは24週間経過したころから、平均食や高脂肪食のマウスより、外観的な老化が顕著に現れ、特に皮膚や毛の状態の悪化が目立った。寿命もマウスの平均より短かった。

研究の背景について都築准教授は「日本食の健康有益性を研究する中で、すでに1970年ごろの日本食が最も健康に良いという結果を得た。だが当時、コメ消費量は現在より多く、総エネルギーの多くを炭水化物から得ていたが、糖尿病患者は現在よりも少ない。この点に着目した」ことがある。

糖質制限マウスの老化促進理由については、「糖質摂取を減らすことで、アミノ酸に分解されるタンパク質の割合が増加する。その結果、『オートファジー(不要になったタンパク質などを細胞自身が分解し、新たなタンパク質を生成する作用や、細胞内をきれいに保つ作用)』が抑制されやすくなり、不要なタンパク質が蓄積されるため」と解説する。

そのほか、学習・記憶能力や腸内細菌機能、脳機能などでも、糖質制限食のマイナス影響が実験で確認されたという。

ただし「現時点でオートファジー抑制の詳細なメカニズムは不明で、糖質制限を否定するわけではない」とし、「今後はこの解明とともに、糖質制限の度合いを四つのレベルに分けた実験や、実験動物だけではなくヒトを対象にした実験を行いエビデンスを示したい」とする。

結果「健康な人が、今後も健康でいられるような食事のあり方を示したい」とし、今後の研究結果に期待される。

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