釜めしの素特集

◆釜めしの素特集:市場、久しぶりの増大 課題の購入率も向上

調味 2020.09.02 12108号 05面

 釜めしは旬の食材が主食のご飯と一緒に味わえる、ごちそうメニューとして人気がある。釜めしの素は常温・長期保存ができ、コメと炊くだけ、炊きあがったご飯と混ぜるだけで支持されて長年、根強い需要を誇る。新型コロナによる内食増で今年は久しぶりに大幅増。好機を今後の成長につなげられるか。市場と大手製造業の動向を追った。(吉岡勇樹)

 ●コロナが追い風に 野菜高で成長期待

 釜めし・炊き込みご飯の素は今年、前年比2桁増に近い大幅な伸長率で推移している。最近2~3年は縮小続きだったが、コロナ対策の内食・ご飯食増が追い風になった。購入率の低さが課題であり伸びしろだったが、着実に向上。簡単調理で家族が喜び、経済的といった商品力が評価された。一部商品の休売も解消され、天候不順による野菜高も本市場には好条件。最盛期の秋商戦のさらなる成長が期待できそうだ。

 新型コロナウイルスの感染を防ぐ、外出自粛や巣ごもり需要を得た。コメが拡販されて関連商材の釜めしの素も備蓄需要を中心に市場拡大。特に緊急事態宣言下の4月に大幅に伸ばし、大手メーカーには過去類を見ない注文が寄せられた。一部限定品などを休止して定番集中の受注、消費急増に応えてきた。

 緊急事態宣言が解除された5月以降は発注も落ち着いて市中在庫が行き渡った。メーカー出荷は反動減に陥ったが店頭販売は順調。家庭内食が増えたまま、釜めしの登場頻度も高止まり。購入率も前年比5%増で推移、市場の間口を広げた。

 市場は長年漸増。既存は200億円弱ながら、安定して数あるご飯周り商材の中でも優等生的存在といえる。半面、高齢層中心のヘビーユーザーに支えられ、購入率は2割ほどにとどまって長く今後成長の可能性とされてきた。

 コロナ禍でノン・ライトユーザーにも商品価値が浸透。ご飯と一緒に炊く、混ぜ込むだけで具だくさんの主食ができて家族が喜ぶ。おかず1品が減らせ、ワンプレートに適して現代ニーズにも合う。野菜高が続き、副菜などの代替需要が市場を長年押し上げてきたが18~19年は野菜価格が下落。20年も生鮮相場は比較的安定していたが、コロナ特需が貢献した。

 巣ごもり需要を着実に得たのは、主力商品の大量・安定生産によるところも大きい。今年はトップブランドである丸美屋食品工業の「とり釜めしの素」が発売50年を迎えて年初から新CMや包装一新で認知度を高めていたのも奏功。増産体制を敷き、さらに定番品の安定供給に努めてロングセラーの安心感を伝え、社会不安を抑えてきた。

 ユーザー拡大に寄与したのが子育て世帯向けの商材。相対的に安価で甘め味付けの丸美屋「炊き込みめし」、ヤマモリ「ご当地釜めし」が休校の子どもニーズを得た。近年、人気のレトルト具材の混ぜご飯も混ぜるだけの簡便性、具材感で新規需要を喚起。感染拡大が喧伝された2月末から支持され、一時欠品も余儀なくされた。

 市場を支える高齢層にはヤマモリの2合用「ちょい炊き」で小世帯対応、江崎グリコの「炊き込み御膳ごろっとストレート」でこだわり志向に対応。グリコは主力品を減塩して健康志向の対応も加速した。指名買いの少ない市場で徐々に差別化が進み、価値・単価向上による奥行きの広がりも感じられる。

 休売商品は5月ごろから再開され、数は多くないが秋の新商品も登場。具材の旬が訴えやすく、新米フェアでの展開、買い置きが望めるハイシーズンの秋商戦が間近に迫る。7月豪雨と酷暑で野菜価格は高騰。簡単で具だくさんという普遍価値が伝えられれば、コロナ共存でさらなる成長が確実視できそうだ。

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