花かつお・削り節特集

◆花かつお・削り節特集:市場拡大も業務用の回復に遅れ 料理用途広げる好機に

水産加工 2020.11.09 12144号 08面

 削り節市場は500億円規模を近年維持し、今3月期は久しぶりの拡大を果たしている。新型コロナウイルス対策の内食増で主にトッピング用途で支持された。半面、だし取り需要は多くを他カテゴリーに奪われて既存業務用の苦戦も続く。コロナ共存を料理用途を広げる好機にして、新たなトレンド、業態開発・開拓につなげたい。(吉岡勇樹)

 花かつお・削り節市場は9月までの今上期、前年比約3%増で推移しているとみられ、久しぶりに増大した。新型コロナ感染拡大を防ぐ巣ごもり、家庭内食の増加が追い風になった。近年は以前より価格競争が控えられ、小世帯化に応じた適量、使い切り提案で売価と収益を改善。市場全体で規模安定が続き、コロナ特需で拡大へステップアップした。

 形態別シェア6割の小袋のかつおパックが前年比4%増、3割で続く花かつおが微増。混合削り節の減少を補い、上回った。パックは内食増で加速して健康感のある野菜のおひたし、子ども人気の高いお好み焼きといったトッピングが増えた。

 1~1.5gの少量使い切りパックへの需要シフトも進んだ。主要世帯になった1~2人世帯で余すこと無く使える現代ニーズは絶対的。以前は5g中心だった小袋容量は半減以下の2~2.5gが主流になり、トップメーカーのヤマキの1g展開で使い切りが一気に全国化した。香り豊かな本枯れ節の少量提案も増えて付加価値と単価を高めている。

 袋物の花かつおはトッピングの併用商材が支持を得ている。混合節は原料高による改定が各社で続き、だし取り需要も減ってダウントレンドに変わりは無い。花かつお・混合節は特に数量ベースで業務用市場に多くを頼り、コロナ共存による需要回復の遅れの影響は甚大。500g~1kg大袋は苦戦が続き、従来からの外食チェーン向けは30~40%減のままという企業も多い。

 業務用構成比の大きいメーカーでは在庫も次第に飽和状態。漁港生産者の操業率も落ち込んで原料のだぶつきを指摘する声も出てきた。一時急伸して暴騰につながった缶詰の世界需要も今は安定。カツオの世界的な使用量で圧倒する缶詰が相場を左右するが、今は在庫も豊富で静観とする向きが大勢のようだ。

 せっかくの巣ごもり志向、内食増だが、家庭用削り節全てで恩恵を受けているわけではない。削り節より高い伸び率を示し、秋商戦も勢いを失っていないのがつゆ、白だしといった液体調味料。だしパックも成長傾向を早め、高価な中容量や付加価値品を若年層といったノン・ライトユーザーが支持する潮流が見え始めた。だし取りは競合する簡便商材に需要を奪われている。

 もともと削り節は成形やカビ付けといった製造に長い時間をかけ、だし取りを瞬時、長期保存を可能にした商品。煮物や汁物向けのだし用途を失い続けるのはレシピや使い方提案といったマーケティング不足の感もある。成熟社会の現代では発酵食品である鰹節の歴史、伝統製法、国内外で行われてきた漁など、ものづくりの物語が好まれやすい。情報発信、共有が容易な今こそ伝統乾物ならではのエシカル消費も期待できる。

 新型コロナウイルスのワクチン開発のめどは依然立たず、自己防衛のコロナ共存は今後も続く。増えたままの家庭内食を好機にして主用途のトッピング拡大、だし取り復権を果たしたい。ヤマキは「だしの7つのいいところ」を明示する「だし活」を深化。野菜摂取が進む価値をレシピ動画などでスムーズに浸透させる。市場2番手のマルトモは独自の「プレ節」でサラダ提案を推進。直販で先行するにんべんはだし惣菜の専門店を増やし、消費者へだしの魅力を直に伝えている。

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