クローズアップ現在:「米麺」店続々オープン 小麦粉急騰で米に期待感

2022.06.06 520号 07面
タムジャイサムゴー 「クリアスープ」の「クロスブリッジミーシェン」(いわゆる“全部入り”)1,100円(税込み)

タムジャイサムゴー 「クリアスープ」の「クロスブリッジミーシェン」(いわゆる“全部入り”)1,100円(税込み)

「タムジャイサムゴー」吉祥寺店は東急百貨店の向かい側の路地にあり、さほど待たずに入店できる

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88 Asia 「88 Asia」の「88フォー」(牛肉のフォー)980円。おつまみメニューもラインアップして居酒屋利用にも対応する

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二子玉川駅から徒歩10分ほどにある「88 Asia」。店名の「88」とは、「米」の文字にある「八八」、「8」が持つ末広がりの縁起のよさなどが由来となっている

二子玉川駅から徒歩10分ほどにある「88 Asia」。店名の「88」とは、「米」の文字にある「八八」、「8」が持つ末広がりの縁起のよさなどが由来となっている

コムフォー 「鶏のフォー」780円(税込み)。ランチタイムに選びやすい価格でバラエティーを構成

コムフォー 「鶏のフォー」780円(税込み)。ランチタイムに選びやすい価格でバラエティーを構成

オフィスビルのランチ需要に対応した「コムフォー」新宿フロントタワー店

オフィスビルのランチ需要に対応した「コムフォー」新宿フロントタワー店

ヌードルランドリー 15品目の米麺をラインアップ。フォーだけではなく東南アジア各国の米麺で構成している

ヌードルランドリー 15品目の米麺をラインアップ。フォーだけではなく東南アジア各国の米麺で構成している

「大衆酒場ビートル」を展開するプロダクトオブタイムでは、東京駅に「ストリート酒場」をうたう「ヌードルランドリー」をオープン

「大衆酒場ビートル」を展開するプロダクトオブタイムでは、東京駅に「ストリート酒場」をうたう「ヌードルランドリー」をオープン

 米麺を扱う店の新規開業事例が増えている。大手では「丸亀製麺」のトリドールホールディングスが香港で人気の「タムジャイサムゴー」の展開を開始。「喜多方ラーメン坂内」の麺食は「88 Asia」を出店し店舗展開を画策している。国内の食品事情では小麦粉の価格が急騰する一方、米価は安定傾向にある。米粉はグルテンフリーで汎用性が高く、情報的に埋没してしまいがちなラーメンと比較しても新しさを打ち出しやすい。米麺飲食店に今、期待が寄せられている。

 トリドールホールディングスでは、グループ企業を通じて香港の人気米麺店「タムジャイサムゴー」の日本展開を開始した。3月に新宿中央通り店、4月に吉祥寺店、5月には恵比寿店をオープンし、2年後の2024年3月には国内25店舗を想定している。同店は『ミシュランガイド』ビブグルマンの常連であり、グループ店舗を含めて香港、中国本土、シンガポールで172店舗を展開している(2月末時点)。特徴は「6種類のスープ」「10段階の辛さ」「25種類のトッピング」「米麺の米線(ミーシェン)」。シンプルなスープ麺は610円からだが、メニューをカスタマイズできるほか、代表的な具材が入った「クロスブリッジミーシェン」がスープ別に1100円、1160円、1220円となっている。

 「喜多方ラーメン坂内」(国内63店舗)をFC展開(うち40店舗)している麺食では5月、東京・二子玉川に新業態となるアジア料理店「88Asia(ハチハチアジア)」をオープン。「米麺」をメニューのメインに据えた。同社では若い世代を中心にアジアンフードへの関心が高まっていることなどから、アジアンレストランを展開したいと考えていた。そこで独自の「プレミアム国産生米麺」を完成させ、フォーを取り扱う業態を開発した。また、プロデューサーとして一つ星レストラン「sio」の鳥羽周作氏を起用し活発に情報を発信。「既存のアジアンレストランとは一線を画した、よい意味で“本場”の料理にとらわれない、日本人にとって最もおいしいと感じるアジア料理を提供したい」という。米麺は880円、980円、1280円。同店の動向を見て随時出店を予定している。

 既存の専門店の動向では、都内に国産フォー専門店「コムフォー」を8店舗展開しているシマダグループが4月にオンラインショップをオープン。飲食店で提供しているフォーを家庭で食べられるようにした。

 国内の食品事情として、小麦が急速に高騰している。農林水産省発表の家計調査によると、17年4月を100として、22年に入り140を超えている。一方、米の価格は90と安定。小麦製品の値上がりに対して不安が募る一方で、米粉が代替え商品となることに期待が寄せられている。また、麺類の新業態を検討する際にラーメンは多様性を極めていて、新規出店したところで情報が埋没しがち。そうした点からも米麺が注目されている。既存の麺類を扱う企業にとっても、米麺が加わることで事業ポートフォリオが豊かになる。

 米麺を日常食としている中国、東南アジア各国のそれぞれの呼称を別表にまとめた。これらの国々の人口を合算すると20億人となる。日本の人口のざっと16倍。しかも、東南アジア諸国の平均年齢は日本の47.7歳(2018年調査)よりも低く、今後市場が発展していくことが予想されるだろう。米麺はグルテンフリーで食の多様性にも対応している。

 これからの食のグローバルスタンダードを考えると、米麺が基軸となっていくのではないだろうか。

 (フードフォーラム代表 千葉哲幸)

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