榊真一郎のトレンドピックアップ リニューアルで甦った「アークヒルズ」

1998.10.05 163号 14面

六本木アークヒルズ。皆さんはどんなイメージをお持ちですか? 全日空ホテルのある街・サントリーホールのある街・外資系のオフィスビル・久米宏のニュースステーションはここのスタジオから‐‐などなど、まあ言ってみれば東京的部分天こ盛りの場所ではあるのですが、なぜだか「食べる」という要素だけパッとしなかった。

ここに続いてできた恵比寿ガーデンプレイスだとか臨海副都心だとかの再開発都市のほとんどが、集客と差別化の軸として「(ここだけにある)今日的レストラン」を配し、それなりに成功していることからでしょうか、最近、アークヒルズも大々的にリニューアルした、というので行ってきたのですが想像以上にすんごいことになっている。

外人度の高さナンバーワン

まず代表的なテナントを挙げます。バブルの影引きずるコンチネンタル料理の「クラブD」(悪くはないですが、鼻高々の客あしらいがバブルの時代真っただ中?)。注目の「ヌーベルシノア・トゥーランドット」は、ダイニング部分よりも本格的なファストフードカウンターを持っていて、そっちの方がお勧め(何たってアメリカでよくある紙パッケージに炒飯ブッ込んで貧乏臭くないんだからやっぱりここは六本木?)。

おしゃれスポットの定番、オープンエアカフェの「オー・バカナル」は多分チェーン一番の外人度の高さで、もうここだけはシャンゼリゼな気分(これらの飲食店が面している広場にすべての客席が向いていて、チョッと客観的に考えれば、かなりお間抜けな雰囲気ではあるのですが、まあここは六本木ですから)。

そしてそこに漂うのは、そこはかとない「マンハッタンな感じ」。これがアークヒルズの今の特徴でしょう(黒いスーツが似合うという意味でです)。

パフェグラスに和風サラダ

そしてこの中でもひと際ものすごいのが「バサラ」って店で、徳島に本店を置く料亭「青柳」さんがプロデュースした新解釈の割烹料理店という位置づけなのだけれど、これが正しくマンハッタンな感じで、悪くない。

夜は七〇〇〇円と一万円の会席コースを出すというお高い店でありながら、オープンキッチン。しかも回転ドアを押して店に入ると目の前がいきなり厨房という店作りが、かつてニューヨークではやったオイスターバーっぽい感じで、これを今、洋食でやってしまうとダサダサになるのでしょうが、和食でやるところがいい感じ。

で、そこで何を作っているか、というと魚を焼いてる。トレトレの魚の切り身とか、焼津から運んできたばかりの一夜干しとか、何やらうまいもん屋のまかないみたいな料理で、言ってみれば炉端焼きのノリですかネ。悪くないです。

料理も自然な和洋折衷を試みていて、どんな感じかと言えば、和風サラダをパフェグラスに盛り付けて出すといった風に、今まで和食のプレゼンテーションには高さがなかったのを、これで解消したかった、という具合の独創性ですネ。

これはこれで分かりやすい。最大の売り物がすべてのコースの最後につく丼なんですが、親子丼なんかフワフワのツユダクでもう、おいしいったらありゃしない(ランチはこの丼をメーンディッシュ代わりにお値打ちなコースを提供してます。デザートの昔プリンもなかなかのノスタルジーでコストパフォーマンス高しです)。

行ってみて。きっと楽しめる! 何より気軽な疑似ニューヨーク体験が約束されています、お得です。

それにしても一度死にかけた街を救ったのが外食施設だった(これまでもマルチメディアセンターとか知育センターとか最先端をいろいろ試みてどれもがダメで、たどり着いたのがこの手だった)というところが何やら今の生活者の空気を象徴しているようで、私たちにとって二一世紀への何よりのはなむけと言えば言えなくもない。いかがなものでしょうかしら。

((株)OGMコンサルティング常務取締役)

レストランリスト

「トゥーランドット赤坂店」…………Tel03・3568・7190

「オー・バカナル」……………………Tel03・3582・2225

「バサラ」………………………………Tel03・5549・7518

「D(レストラン・バー・クラブ)」Tel03・3505・0561

「パティスリーKIHACHI」……Tel03・3584・6138

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