厨房のウラ側チェック(19)食品添加物の手品(その8)

1993.01.04 19号 19面

問題のある添加物について、リン酸塩、亜硝酸ナトリウム、合成着色料と進めてきたが、今回はサッカリンとそのナトリウム塩について安全性を述べる。

読者もサッカリンが、昔一度禁止されたことを覚えていると思うが、再び使用許可がおりて、現在、チューインガムで〇・05㌘/㎏使用料の最大限度がある。また、水に良く溶けるサッカリンナトリウムは、アイスクリーム類、あん類、発酵乳、魚介加工品の缶詰などへの使用料の最大限度0・2㌘/㎏から、こうじ漬、たくあん漬の漬物への2㌘/㎏までと使用制限されているが、栄養改善法の特殊栄養食品の許可・承認を受けた場合はこの限りではないと明記されている。

これらの使用理由としては、糖尿病用の甘味料やダイエットフードなどの低カロリー甘味料などに砂糖の代替品とされているためである。サッカリンの甘味は、しょ糖の五〇〇倍といわれており、価格は超安価である。

では、安全性について「アメリカ科学アカデミーのサッカリンの危険性と便益性に関する評価報告」のデータからまとめてみると、サッカリンの生体内変化は、ヒトにおいても全く見られないが、若干の酵素的変化は受けるかもしれない。サッカリンは、胃腸から速やかに吸収され、主に尿中に排泄される。膀胱を含む発ガン性効果が未代謝のサッカリンによるのは、サッカリンが一般的でないものかまたは、少量の未知の代謝物によると結論している。

膀胱上皮へのサッカリンの蓄積は、膀胱ガンの形成にある役割を示すのかもしれない。ラットを用いて二世代にわたる毒性試験で、サッカリンは雄ラットでは膀胱ガンの発ガン物質である。他の化学発ガン物質とサッカリンを併用した研究では、サッカリンはラットの膀胱で腫瘍発生の促進をすることが分かった。しかし、ヒトに対する危険性の判断は現在のところ不可能である。

これは、動物実験からヒトに対する危険度を確信をもって言えないとしている。また、サッカリンに不純物であるオルトトルエンスルホン酸は、ラットの実験で発ガン性はない。だが、より少ない不純物が市販サッカリンの中の発ガン物質である可能性を削除することはできないが、確率は非常に少ないといえるだろう。

遺伝学的に影響に対する短期間試験をサッカリンと、その不純物にいくつかを用いて行った一六の分析評価の結果は否定的だが、五つは肯定的だった。

次に、ヒトの疫学的研究からの要約は、サッカリンは膀胱ガンの関係及び流産との関係を再評価したが、一つの例外を除いて、それらの知見はいずれの性に対しても健康を害するものではないことを示していた。しかしながら、無関係であると結論するには、それらの研究方法に不備な点も多々あった。ちなみに、サッカリンの急性毒はウサギの経口で、LD50が5~8㌘/㎏である。ADIも0~2・5㎎/㎏体重/日の暫定数値がある。

以上のようなデータから読者が不安を感じれば、摂取しない努力をし、また、糖尿病、肥満、ムシ歯などの利益を得るのであれば、ADIの数値をチェックしながら用いればよいのではないかと思う。ここは、損得勘定のバランスで一考してほしい。

食品衛生コンサルタント

藤 洋

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