名古屋版:繁盛店ルポ:中国四川料理「川菜」
四川料理といえば燃えるように真っ赤で、口から火が出るほど辛い料理を連想しがち。だが、そんな「常識」をくつがえし、さらに色にも辛さにも深い味わいを演出しているのが、名古屋市瑞穂区・石川橋の中国四川料理「川菜」だ。
「お客様には心地よく料理を楽しんでいただきたい」という久米社長の言葉通り、席数七〇席の店内は中華料理店にありがちなわい雑さがなく、静かで落ち着いたおしゃれな雰囲気。「ランチ時間のお客様の九〇%が女性」といわれるほど女性の支持を受けているが、その秘密は二種類のランチメニューにあるようだ。
「ウィークリーランチ」(一二〇〇円)は四種類の料理の中から二品を選ぶ。ほかにサラダ、ご飯、ザーサイ、杏仁豆腐が付き、手ごろ感がうけている。もう一方の「川菜ランチ」(二五〇〇円)は月に二回料理内容を変更、料理二品に前菜、点心、ご飯、ザーサイ、デザートのほかに、なんとフカヒレのスープが付く。
「一年目は多くの方にうちの店の味を知ってもらいたいですね」と語るのは佐竹秀公料理長。
「四川料理は辛いというイメージが先行しますが、辛さの中にも深みがあるというか、素材のうまさを引き立てる辛さですね」
こちらの人気メニューである「麻婆豆腐」は、四川料理を代表するものとして日本でも知られている。しかし一口食べてみても、一般的な麻婆豆腐の味はしない。その秘密はサンショウにあるとのこと。
「日本のサンショウは香りを楽しむものですが、中国では香辛料として使われています」
料理長が愛用しているサンショウのにおいをかいでみると、日本のそれと比べてツンと鼻を刺すほどに香りが強い。そのせいか、二口三口と口に運ぶたびに唐辛子とは違った、舌がピリピリとしびれるようなサンショウ独特の「辛み」を感じた。
さらに料理長は、「素材の新鮮さは当然ですが、ラー油や豆板醤などの調味料はすべて手作りです。またフカヒレは面倒でも乾燥したものをこちらで戻しています。よいものを提供するために当たり前のことをしているだけです。すべて手間のかかる作業ですが、この作業なしには味を保つことはできません」と、あくまでも味優先の立場を崩さない。
また、素材や自家製調味料へのこだわりは料理へも反映される。現在メニューに掲載されている料理は七九品目だが、予算に見合った料理を注文することもできる。
「メニューは無限大です。時間さえいただければいろんなバリエーションの料理を提供できますし、季節によってさまざまな材料とアイデアをもとにメニュー作りをしていきたい」と、型にはまらない、独創的なメニュー作りへの意欲を示す。
「料理長が料理のプロなら、私たちは接客のプロです」。都ホテル時代から佐竹料理長とともに仕事をしてきたというマネジャーの栗原さんは、ホールと厨房両方が持つプロ意識とその連係プレーこそが、客に心地よく食事を楽しんでもらうために大切なものであるという。そのため、都ホテル時代のファンがリピーターとしてオープンしたばかりの店を訪れることもしばしばあるとか。
しかし栗原さんは、「基本的には都ホテルにあった店を移転したことになりますが、今はその当時よりも上を狙いたい」と意気込んでいる。
4月21日にオープンして以来、三ヵ月の間に既に多くのリピーターを生んでいるという。中でも、ランチで来て味を知り、次回は夜に来店する客が多いそうだ。
「まずはいろんな人に食べていただきたい。そしてお客さんのよろこぶ顔が見たい。お金というのはおいしかったという言葉についてくるものではないでしょうか」
よいものを作るために妥協しない料理人の意識と、ホテルマンとして店内の雰囲気を作る接客のプロ意識とが一つになって、客に心地よいサービスを提供する。
〈一位〉麻婆豆腐(マーボトーフ・一二〇〇円)
〈二位〉担担麺(四川風ごま唐辛子スープそば・一〇〇〇円)
〈三位〉乾焼蝦仁(海老のチリソース煮込み・一八〇〇円)
◆中国四川料理「川菜」(名古屋市瑞穂区上山町一‐一六、052・839・1031)営業時間=午前11時~午後2時30分、5時~9時30分。毎週水曜日定休