外食経営の視点 2005年業態トレンド

2005.07.04 302号 18面

今年2005年は、「外食元年」と呼ばれた1970年から、ちょうど35年目に当たる年である。「外食元年」とは、外資系の大手飲食店チェーンが続々と日本に上陸し、それまで飲食業が観光レジャー関連ビジネスを中心にして繁栄してきたという歴史を持つ、わが国の業界地図を塗り替える契機となった年を指す言葉だ。

(商業環境研究所所長・入江直之)

(1)飲食業界下克上の時代

「外食元年」以前の飲食業界の大手企業といえば、ホテル旅館や鉄道、百貨店、遊園地などといった、観光レジャー関連企業や大手小売業のグループ会社がその中心を占めていた。1970年以降に日本国内でチェーン展開を始めたマクドナルドやデニーズといったファストフード、ファミリーレストラン・チェーンのように、飲食業自体を事業の主体とする企業はほとんど存在していなかったのである。「外食元年」とは、わが国の飲食業界の構造を根底から変え、「外食」という言葉を一般に広く普及させることとなった始まりの年と言ってもいいだろう。

しかし、一般に企業の寿命は約30年と言われる。「外食元年」から35年を経過した現在、これまで外食業界を牽引してきた企業の多くが衰退の傾向を見せ始め、新たな企業グループが台頭しつつある状況は、すでに周知のこととなっている。

そんな中で、近年ひときわ目をひく傾向として、飲食業界で新たに起業する個人や中小の事業者を中心対象とした、飲食業向けの各種支援ビジネスの増加が挙げられる。こうした支援ビジネスは、もちろんこれまでにもコンサルティング会社などが中心となって数多く存在していたが、近年の動向として特徴的なのは、厳しい経済状況を背景に、「(1)店舗投資のファイナンス面をサポートする業務が組み込まれている」点や、外食マーケットの伸び悩みにより、「(2)既存の不採算店舗を再活用する仕組みを重視している」という点が挙げられる。また、個人開業希望者の増加を踏まえて「(3)フランチャイズ本部の設立に関する支援業務が増えている」という点も、これまでにはあまり見られなかった特徴と言えるだろう。

例えば、焼肉店「牛角」などをフランチャイズで展開するレインズインターナショナルは、撤退する飲食店を買い取り、改装リニューアルして開業希望者に貸し出すという新事業を始めたばかりだ。これは、開業時に大きな投資が必要な飲食店のデメリットを緩和するとともに、業績不振で早期に撤退する店舗が増えている現状から、まだ十分に使用できる店舗設備をムダにせず、再投資金額を抑えて店舗を再利用するという考え方から生み出されたビジネスモデルである。

いわゆる「居抜き店舗」として閉店する店舗の造作・設備を安く買取り、同社が家主と新たに賃貸借契約を行って、開業希望者から店舗使用料というかたちで家賃を徴収するという仕組みは、これまでにはあまり例のない、新たな店舗再活性化の仕組みとして注目を集めている。

(2)フランチャイズビジネスの変化

ベンチャー起業が大きなブームとなる中で、カフェや居酒屋といった個人店の新規開業でも、投資コストの低減を狙った「居抜き店舗の活用」という手法が広く一般に用いられるようになっている現在、このような新しいビジネスの仕組みが受け入れられやすい土壌は十分に育っていると言える。

そして、こうした個人の起業ブームを背景にしたもうひとつの飲食業支援ビジネスが「フランチャイズ展開支援」という分野だ。これは、かつてベンチャーリンクがレインズインターナショナルやサンマルクなどと提携して、短期間にスピーディーな多店舗展開を果たした仕組みからスタートしたもので、繁盛飲食店の経営者向けに、フランチャイズ本部の設立と加盟店の募集代行、店舗スーパーバイジング(運営指導)のサポートなどを行うビジネスである。

ここ数年、この分野には大手商社やコンサルティング会社など数多くの企業が参入しており、飲食フランチャイズ業界はこうした支援ビジネスの広がりで大きく活気づいている。また、飲食関連企業の新規事業としてだけではなく、当初から飲食フランチャイズ支援事業を本業としてスタートしたインターブレインズのような企業も生まれつつあり、さらには、中古厨房機器のリサイクル事業からスタートし、中小飲食店舗向けの活性化支援業務を展開してきたテンポスバスターズが、フランチャイズ支援事業に参入するという情報もあるなど、飲食店のフランチャイズ化支援ビジネスは、まだまだ大きく成長する可能性を見せる分野だ。

従来、飲食フランチャイズビジネスは店舗指導の難しさから、商品アイテムが絞り込まれ、小型で従業員をあまり多く必要としないファストフードなどの業態が中心となってきた。しかし、テーブルサービスのファミリーレストラン業態「サンマルク」や、居酒屋業態に近い焼肉店「牛角」などがフランチャイズ展開を成功させたことによって、飲食業界のフランチャイズ化に対する認識は大幅に変化しつつある。

現在、こうしたフランチャイズ支援ビジネスを活用しての展開も併せて、新興フランチャイズ本部の提供する業態としては比較的客単価の高い「アッパー居酒屋」や「ダイニング・レストラン」など、これまではフランチャイズ展開が難しいとされてきたスタイルの店舗も数多く含まれている。

しかし、飲食業は開業よりもその後継続して業績を伸ばしていくことの方がはるかに難しいビジネスであり、当面は縮小の見込まれる外食マーケットの中で、今後こうしたフランチャイズ各店舗が、どこまで発展を続けられるかが、この分野の拡大のカギを握っていると言えるだろう。

(3)飲食店舗支援ビジネスの可能性

前述のような飲食店支援ビジネスのほかにも、主に店長など人材の育成や派遣などのサポートを中心にしたリンクワンや、本業である飲食店舗向けの集客ビジネスをベースに不振店舗の再生支援を行うモック、飲食店の情報システム開発とASPサービスをもとに効率的な物流システム構築のコンサルティングを行うジャストシステム、開業支援からファイナンス、ホームページを制作しIT化支援を行う業務までをパッケージ化したテレウェイブリンクスなど、さまざまなスタイルの飲食店支援ビジネス業務を行う企業が続々と名乗りを上げている。

また、2000年にこうした店舗支援ビジネスの先駆けとも言える事業スタイルで設立されたフューチャークリエイトは、店舗流通ネットと社名を変更し、業務委託による店舗運営から開業サポート、ファイナンスなどまでを含めて総合的な店舗支援ビジネスを展開し、名古屋セントレックスへの上場も果たした。

それでは、こうした飲食店支援ビジネスの将来は、どのようなものになるのだろうか。これまで述べたように、こうした飲食店支援ビジネスが興隆している背景には「(1)厳しい景況を踏まえた既存店の不採算化」と「(2)企業に頼らず独立を望む起業志望者の増加」というふたつの状況が存在する。(1)によって、活性化を望む既存店舗や売却せざるを得ない不振店舗は増加する一方であり、そうした店舗と(2)の人材をマッチングさせ、改装リニューアルや業態変更、商品企画、販売促進手法といった付加価値を加えて新たな価値を生み出すというビジネスのコンセプトは、「再生の時代」とも言われる現代にふさわしいビジネスであると言えるかも知れない。

だが、そうした店舗と人材をマッチングさせて新たな繁盛店舗を生み出すためには、店舗開業~運営指導にいたるまでの継続したノウハウと強力な指導力が不可欠だ。店舗経営とは、店のつくりや主力商品、集客のための販促活動だけでは継続して業績を伸ばし続けることは難しい。そこには、店舗を運営するスタッフの継続的なモチベーションの維持やスキルのブラッシュアップ、消費トレンドの変化に即した戦略の対応といった要素がなくてはならないからである。

そして何よりも、外食マーケット自体が今世紀に入って以降、大きく地盤沈下しつつあるという現実を踏まえなくてはいけない。再生を望む店舗が増加しているのは、そもそも外食のマーケット全体が縮小しているからにほかならないのだ。

このような状況の中で、やがてトータルな店舗再生~運営ノウハウを有する企業とそうでない企業との格差が表面化することになるだろう。そして、そのノウハウの差とは、最終的に店舗を運営する人材を活性化できるかどうかの違いとなって表れてくるに違いない。

◆入江直之(いりえ・なおゆき)=各種飲食店のマネジャー、インテリアコーディネーターを経て、商業環境研究所を設立し独立。「情報化ではなく情報活用を」をテーマに、飲食店のみならず流通サービス業全般の情報化支援を幅広く手がける。各商工会議所で多数講演を開催するなどして、中小企業の業務サポーターとして活躍している。

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