高成長の宅配ピザ 低い出店コストが強味、2000億円の市場規模を形成

1994.02.21 46号 10面

マンションやオフィスの郵便受にカラフルな宅配ピザのチラシが投げ込まれ、街中をデリバリー中の三輪バイク(ジャイロ)を目撃することが多くなった。それだけピザの宅配ニーズがあり、また、サプライヤー(チェーン企業)が数多く存在するということを物語っているわけだが、しかし、一方においては競合が加速してきている面もあり、チェーンオペレーションや商品開発力の乏しいところは、淘汰されるという厳しい状況になってきている。

宅配ピザが登場したのは一九八五年のことで、これはドミノ・ピザ((株)ワイ・ヒガ・コーポレーション)がそのパイオニアとして知られている。

アメリカドミノ・ピザとのFC契約によって、日本市場に上陸してきたものだが、その後このドミノ・ピザをモデルに多くのチェーン企業が出現し、外食ビジネスの新たな業態として市場を創造し、消費者ニーズに応えていくことなった。

大手チェーンはドミノ・ピザはじめ、ピザ・カリフォルニア、ピザーラ((株)フォーシーズ)、シカゴピザファクトリー((株)トロナジャパン)など四社だが、この企業数は大小合わせれば全国に三〇〇社(出店数約二〇〇〇店)近くあるといわれ、まさしくピザデリバリーの花盛りといった様相を程している。

しかし、チェーン数一〇〇店を超える企業は前記の四社くらいで、大半は二、三〇店以下のスモールチェーンだ。しかも、ハンバーガーなどのFFチェーンに比べても、まだまだ出店数は小さい。

もっとも、それだけチェーン(デリバリー)ビジネスとしての歴史が浅く、やっと第一段階を終わったという状況なわけで、市場はこれから拡大発展していくという方向にあるわけだ。

ファストフードは客数を多くとる“マスビジネス”であるので、駅前や繁華街といった“一等地志向”での立地戦略が基本になる。

当然のことながら出店コストが高くつくわけだが、この点、宅配ピザは人通りの少ない裏通りや郊外立地でもよく、ある一定の商圏内に基準とする世帯数(人口、客層)があれば、立地に制約を受けることはない。

しかも、店舗規模も一五坪から二〇坪程度と小さくてよい。店舗は大まかにいえば、食材のストック設備、受注と調理、バイクさえ備えていれば、十分に機能するわけだ。

商圏設定は二kmから三km圏内で、無風の競合状態であれば、一万五〇〇〇世帯以上、人口四万五〇〇〇人というのが一般的な基準で、一店舗当たりの月間売上げは六〇〇~七〇〇万円前後が標準だ。

一オーダー当たりの消費単価は二三〇〇~二六〇〇円の範囲で、ファストフードやファミリーレストランの一人当たりの客単価と比べてみても、はるかに高い金額だ。

店舗の出店コストは物件取得費を除けば、二〇〇〇~三〇〇〇万円前後で、デリバリーの主役であるバイクは、一店舗当たり五~一〇台を備えるというのが一つのパターン。

店舗の営業コストは食材原価二五~三〇%前後、人件費二五、六%の水準で、人件コストは一般的としても、食材コストはやはりピザ(小麦粉)商品だけに低い。

収益力の大きいビジネスといえるわけだが、この具体的なウラ付けを国内最大のデリバリーチェーン、ピザ・カリフォルニア(三〇五店=FC九割)の例でみると、まず初期投資が二八〇〇万円。

この内訳はFC契約金二八〇万円、保証金二〇〇万円、デザイン・研修一一五万円、厨房設備七二五万円、店舗内装・看板八〇〇万円、コンピュータシステム二八〇万円、バイク二五〇万円(六台)、その他、雑費一五〇万円。

これに対して、月間売上げを五〇〇万円の例でみると、仕入れコスト二五%、人件費、販促、家賃、水道光熱費を含む一般管理が約五五%、営業利益(償却前)二〇%という数字で、高い収益力をみせている。

同チェーンの月平均の売上げは六〇〇万円を突破しているので、実際の収益力はさらに高まることになるが、宅配ピザ成功のキメ手は、確実性の高い商圏を設定して、出店コストや営業コストをおさえ、どう損益分岐点を低くしていくかということにかかってくる。FC展開であればなおさらのこと、加盟店(フランチャイジー)に対し、収益の上がる「ノウハウ」と「システム」を提供するのは当然のことだ。

宅配ピザはたしかに生活の洋風化と、商品のもつファッション性、スマートさに支えられて好調に市場を伸ばしてきた。極論すれば、ピザを焼くスペースがあれば電話とバイクで成り立つビジネスであるので、新規参入が容易でそれだけピザニーズを喚起し、市場を賑わせている状況にもある。

だが、トータル的にみて出店は順調なものの、地域によっては売上げの伸びが鈍化してきているところも出てきている。

市場規模二〇〇〇億円というのは業界関係者の推計だが、これはマクドナルドの九一年度(12月決算)の売上げ程度で、宅配ピザはこれからのビジネスということが理解できる。

日本とアメリカのマーケットを簡単に比較するわけにはいかないが、たとえば、米ドミノ・ピザは一九六〇年にFC展開を始めて以来、着実に出店数を伸ばしていき、現在は米本土に約五〇〇〇店、米国以外カナダ、オーストラリア、フランス、ドイツなど世界三〇ヵ国に一〇〇〇店の計六〇〇〇店舗をチェーン化しており、年間売上げ五〇〇〇億円以上のビッグビジネスを創造する企業に成長している。

今から三十数年前、アメリカ・ミシガン州の小さな街からスタートしたピザショップは、「ハンドメイドのピザを食卓に届ける」「三〇分を超えた場合は五〇セント引き」というシステムをアピールして、巨大企業に発展し、創業者のトーマス・S・モナハン氏(現会長)はアメリカンドリームを実現したわけだ。

このアメリカンドリームに刺激されて、日本のドミノ・ピザも「二〇〇一年までに店舗数五五〇店舗、売上高五五〇億円、社員数一六〇〇人、クルー数一万一〇〇〇人を達成する」(アーネスト・M・比嘉社長)という目標を掲げており、店舗展開には意欲的だ。

ピザの宅配ビジネスはあらためて説明するまでもなく、客からの電話注文を受けて生地を作り、その上にチーズとトッピングをのせて、オーブンで焼いてパッケージしてバイクで届ける‐‐という図式のもので、基本的にはオーダーを受けてから、三〇分以内にデリバリーするというビジネスだ。

このニュービジネスを日本に登場させたのが、ドミノ・ピザであるわけだが、このビジネスはハンバーガーやドーナツ、フライドチキンなどのFFテークアウト商品と異なって、客がくるのを待って売る立地優先の出店形態ではないので、それだけ出店コストも低くおさえられ、またバイクの活用によって機動力も発揮できるわけだ。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら

関連ワード: マクドナルド