DATAにみる外食マーケット動向 カレー専門店FC 大手参入で波乱含み

1995.08.21 83号 19面

「カレー」は言うまでもなく、日本人の最も好む食べ物の一つ。しかし、カレーを主力商品にしたFC(フランチャイズチェーン)を展開する企業は、つい最近までは少なかった。急に話題になってきたのは、昨年5月に牛丼の吉野家がカレー専門店「POT&POT」一号店を出したり、6月には持ち帰りずしの東京小僧寿しが「香辛飯屋」一号店を出すなど、FCの大手企業がカレー分野に乗り出してきた時あたりからであろう。

カレーFCは、一九七四年(昭和49年)に「カレーショップC&C」が始めたのが最初。同年暮れにはカレーハウス「ボルツ」もFCを始めた。

カレーFCのこれまでの推移をみると、八五年ごろまではチェーン数、店舗数、売上高ともにそれほど大きな成長はみられなかった。チェーン数は四ないし五チェーンどまりだったし、各チェーンをみても店舗数が五〇店舗を超えるところはなかった。それが八五年以降急に成長したようにみえるのは、「カレーハウスCoCo壱番屋」が登場してきたからである。

同社は八〇年(昭和55年)にFC一号店を出店、その五年後には五〇店舗を達成し、さらにその二年後には一〇〇店舗にし、FC開始後一四年目の九四年5月には三〇〇店舗に到達している。最新決算期(九五年5月末)では三二〇店舗、売上高二三一億円の規模となっている。しかも八〇年~九〇年の一〇年間は、既存店の売上高が前年比二〇%以上の伸びを残してきたというから、まさに驚異的な成長だったわけだ。カレー専門店分野では同社が突出、全体の約八割のシェアを占め、独占状態になっている。

カレーハウスCoCo壱番屋がなぜここまで急成長できたのか、その要因を探ると興味深い点が浮かび上がってくる。

同チェーンの特徴をあげると、まず味の点については「家庭で作られているごく普通の味」を守っている。よく外食関係者は「家庭で作れない味を提供してこそプロ」というが、カレーハウスCoCo壱番屋ではそれを否定、「繰り返し食べても飽きのこない味」を提供してこそ“産業”になれるという考え方をした。

なお、メニューはバラエティーに富んでいるが、トッピング方式をとっており、基本ラインは極めて簡素。また、食材はすべてCKで調理済みであり、店舗段階での作業効率は極めてよい。ついでに言えば、女性や子供、あるいは中高年者まで受け入れられるよう、ご飯のポーションは三つ用意されている。実際、女性客が全体の三割を占めているのは同チェーンだけである。

価格については、やはり繰り返し利用できるよう、低価格に設定されている。もっとも安いポークカレーは四〇〇円であり、客単価は八三〇円ほどである。

明るい店づくりという点も見逃せない。もともと喫茶店の出身であるだけに、客側からみれば、明るく落ち着ける雰囲気が演出されている。そして何より目立つのは、従業員の接客マナーのよさであろう。明るくハキハキした態度は、何度利用しても気持ちがいい。街なかで見る低価格のカレーショップは、店は暗くて汚く、従業員も無愛想。それと比べると雲泥の差である。

カレーハウスCoCo壱番屋では接客マナーを重視しているが、その理由は「味には特別特徴がない。店舗も、特別豪華に作っているわけでもない。何をもって他店と差別化するかとなると、従業員の接客マナーしかない」(宗次徳二社長)ということだ。

なお、立地は商店街や住宅隣接地など、いわゆる二等地である。この点はモスバーガーの行き方とよく似ている。

カレーハウスCoCo壱番屋と対照的なコンセプトでチェーン化を図ったのが「ボルツ」である。同店は本格的な高級カレーを提供、メニューも一〇〇〇円クラスを揃え、客単価は一五〇〇円前後であった。店舗は五〇坪ほどの中型店を中心とし、立地も駅前などの一等地に出していった。

同店は女性客にも人気があったが、いかんせん繰り返し利用するには余りにも特徴があり過ぎた。ボルツは八三年ごろには四〇店舗を超えるまでに拡大したが、その後はジリ貧状態になり、現在では直営店が十数店活動しているに過ぎなくなってしまった。

FCはよく「大衆的なゾーン、最も大きなマーケットゾーンを狙え」というが、カレーハウスCoCo壱番屋はまさにそれを地で行ったということであろう。

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