地域ルポ 南阿佐ヶ谷(東京・杉並区)大手外食チェーンが集積

1995.11.20 89号 16面

営団地下鉄丸の内線南阿佐ヶ谷駅。一日の平均乗降者数二万一〇〇〇人(平成6年度)。杉並区の住宅街および商店街に近接する小さな駅だが、ホームから地上に出れば、東西に青梅街道が貫き、また、青梅街道に結節して北側に中杉通りが延びる。交通の利便性が高い地域だ。青梅街道から中杉通りの先約四〇〇m、JR阿佐ヶ谷駅南口に行き着く。中杉通りはケヤキ並木が美しい通りだ。集積は少ないが、物販、飲食などの店舗も並ぶ。中杉通りの東側には「阿佐ヶ谷七夕祭り」で知られる地域最大のショッピングゾーン「パールセンター街」が南北に展開、物販、飲食、サービスなど約三〇〇店舗を集積する。飲食についてはここ数年青梅街道や中杉通り沿いにも集積が進んできており、デニーズをはじめ、ジョナサン、ミスタードーナツ、吉野家、珈琲館といった大手外食チェーンが目につく。

地下のホームから地上に出る。そこは青梅街道と中杉通りがT字型に結節する交差点だ。阿佐ヶ谷界隈では車と人の往来が最も激しいところで、朝夕は車、人の流れがピークに達する。

このエリアは杉並の“官公庁街”でもある。杉並区役所をはじめ警察、消防、税務署、郵便、水道局、NTTなどが散在しており、区民の行政、生活ラインに対応している。

区役所側の出口。青梅街道に面して、ビル一、二階にらーめん、餃子「味の吉」、弁当ショップ「茶月」、珈琲「ポトロ」、ドーナツチェーン「ミスタードーナツ」などが出店している。

ミスタードーナツは昭和59年3月に開店したFC店で、店舗面積三〇坪、客席数三一席。

営業時間は午前7時から深夜12時まで。定休日なしの営業時間で、客層は主婦、OL、ファミリー客などが主体。平日を一〇とすると、金曜日から土曜日にかけて三、四割ほど客数が増加する。平均客単価五六〇円。

人気商品は一年前から導入した飲茶チャイナタウンセット五八〇円、フレンチクルーザ、オールドファッション各一一〇円、エンゼルフレンチ一三〇円など。

イートインに加えてはテークアウトの需要もあり、これは四割のウエート。テークアウトの客単価は八〇〇円前後。

ミスタードーナツの東隣は杉並区役所の南側出入口になり、商店はここをジャンプして東側に展開する。

区役所の向かい側は青梅街道に面して警察署、郵便局が軒を連ねている。店舗が出店する余地はないが、小さな路を挟んで西側に珈琲館が出店している。

ビルインの半地下方式での出店で、一〇年前のオープン。ミスタードーナツと同時期の開店で、同じくFC店だ。店舗面積三〇坪、客席数六四席。

店舗周辺のオフィスワーカーから地域の住民まで客層は多様で、営業時間は平日が午前8時から午後10時。日曜日は午前9時から午後9時まで。客単価五〇〇円。日商三〇万円前後。

同じビル、珈琲館の右隣にコンビニのミニストップが出店している。ミニストップはハンバーガー二〇〇~二八〇円、フライドチキン一本一八〇円なども提供しているので、飲食(ファストフード)機能も有している。

このビルの二階は物販の「東京靴流通センター」(チヨダ)、ブックショップ「書原」などが入居、独自の集客機能を発揮している。

青梅街道沿いに西に歩く。交差点のエリア内だが、ビルの二階に居酒屋チェーン「すずめのおやど」(事業本部/杉並区高円寺)、その西隣のビル一、二階に喫茶室を併設した焼き立てクロワッサンの店「サンエトワール」、江戸前「大助寿司」などが出店している。

すずめのおやどは東京、神奈川、千葉、埼玉を中心に直営、FC合わせ約三〇店をチェーン化しており、南阿佐ヶ谷店は一〇年前のオープンだ。

店舗面積四〇坪、客席数八五席。民芸調手づくり感覚と温もりのある店で、地域唯一の居酒屋チェーンだ。

このため、役所関係の勤め人から学生まで幅広い客層に支持されている。この店はまたメニューづくりが、たとえば、野菜類は無農薬、低農薬、有機栽培のもの、ダシは化学調味料を排して天然素材、醤油も国産丸大豆と自然塩を材料にした天然醸造というように、自然志向に徹しているので、この面での集客力も発揮している。

人気メニューの魚介類や焼とりも冷凍ものを使わず、産地直送、チルドものを使っている。全メニューということではないが、この自然、ヘルシー志向が店のプレステージを高めているのだ。

メニュー単価は三〇〇~四〇〇円前後がボリュームゾーン。平均の客単価は二三〇〇円。

江戸前大助寿司の西隣に牛丼チェーンの「吉野家」が存在する。一七年前のオープンで、店舗面積二〇坪、客席数二〇席。

この店も二四時間営業で、学生、サラリーマン、ドライバーなどに利用されており、月商一〇〇〇万円を確保している。

中杉通りに出る。片側二車線。JR阿佐ヶ谷駅まで約四〇〇mを隔て、阿佐ヶ谷北四丁目の交差点から西武池袋線中村橋(練馬区)まで続く。

青梅街道から中杉通りを北に約二〇m、ビル一階にデニーズが出店している。昭和61年12月オープン。店舗面積一〇〇坪、客席数一五〇席。

二四時間営業の店で、客層は日中はサラリーマン、OLほか、主婦層、夜はカップルや女性グループ、ファミリー客など。客単価は一〇〇〇~一五〇〇円前後。

年商三億円。地域のレストランおよびダイニングルームとして利用されている。

中杉通りを挟んで左向かいにカレー専門店「ココ壱番屋」が出店。平成5年4月に開店したFC店だ。店舗面積二五坪、客席数はカウンター一〇席、テーブル席二〇席を合わせ三〇席。

ビーフ、ポーク、チキンカレーなど三〇品目を提供するが、人気メニューはロースカツカレー、チキンカツカレー各六五〇円、野菜カレー六〇〇円など。

客単価八〇〇円。客層はサラリーマンから学生までと多様だが、売上げは月商八〇〇万円と目標を一割ほど下回っている。客数が少ないということだが、独自の販促、イベントなどで集客力を強化したいところだ。営業時間は午前11時から午前〇時まで。無休。

ココ壱番屋から三〇mほど北側。ビルの一階にラーメン専門店の「げんこつ屋」が出店している。

この店は麺からスープづくりまで、徹底してオリジナルを追求したこだわりのラーメンショップで知られ、高円寺、阿佐ヶ谷北、永福町、渋谷、新横浜などにも出店している。

中杉通りの店(南阿佐ヶ谷店)は今年8月にオープンした新装店で、店舗面積約二〇坪、客席数三六席の規模。

げんこつラーメン七〇〇円、チャーシュー麺一二〇〇円、ごまだれつけ麺八五〇円、豪快塩ラーメン九〇〇円などが看板メニューで、地域一番店としての味づくりをアピールしている。

客単価一〇〇〇円。単品ラーメンメニューとしては高いという印象だが、「うちのラーメンは料理。食べてもらえればわかります」とオーナーの関川清氏の自負どおり、げんこつ屋のラーメンはすべてに本格的なものだ。営業時間午前11時から翌朝1時まで。無休。月商八五〇万円。

げんこつ屋からさらに北側へ。阿佐ヶ谷南一丁目三四番地になるが、コーヒーショップ「ジョナサン」が展開している。八年前のオープンで、すかいらーくグループが近接地のデニーズに対抗しての出店だ。

店舗面積約八〇坪、客席数六五席。ジョナサンの店舗スケールとしては小さいが、デニーズ同様二四時間営業で、月商一四〇〇万円をキープしている。

貢献度の高いメニューはトンカツ定食九八〇円、スパゲティ(四種)七八〇円~、フルーツデザート(マロンパフェ)四八〇円など。

客層はオフィスワーカー、主婦、カップル、学生で喫茶利用からディナー客まで多様だ。客単価九〇〇円。ロードサイド立地だが、駐車場はない。

今年8月オープン。こだわりのラーメン専門店「げんこつ屋」。目標月商一〇〇〇万円だが、現在八五〇万円。一年内に目標クリア

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