地域ルポ 成増(東京・板橋区) 乗降客年2~3%の伸び

1995.12.18 91号 8面

東武東上線成増。東京・板橋区。池袋から急行、準急で一〇分の時間距離。西隣が和光市(埼玉県)、南は練馬区と接する東京北部のベッドタウンで、一日八万人の乗降者がある。昭和62年8月には営団地下鉄有楽町線が乗り入れるようになったので、有楽町や銀座ともつながるようになり、交通の利便性は大きく高まった。これにより住宅街としての機能も高まってきている。事実、駅の乗降者数も年二~三%ずつ増加する傾向を示している(東上線成増駅)。

地域の商圏人口は地元板橋区、練馬区および隣接の和光市を含めれば、第一次商圏が四〇万人、第二次商圏が一二〇万人。このため地下鉄の乗り入れに呼応してダイエー、西友などの大手量販店が開業、東上線でも有数の商業ゾーンとしての機能も発揮している。商業集積は主として駅南口(東上線)に進むが、この規模は小さい。駅から一〇〇mほど南側に川越街道が東西を貫いているので、物理的に面の拡がりが不可能であるのだ。また、北側は住宅街なので、ほとんど商店が進出する余地はない。しかし、飲食施設の出店は旺盛で、ハンバーガーチェーンのマクドナルドをはじめ、モスバーガー、吉野家、ケンタッキーフライドチキン、ミスタードーナツ、デニーズ、京樽ほか、居酒屋チェーンの村さ来、庄やなどの大手外食チェーンが目白押しで、東上線沿線でも一、二位を争う飲食ゾーンを形成している。

マクドナルドから西へ二〇mほどのところ。モスバーガーの第一号店が出店している。昭和47年6月オープン。

当時はわずか三坪の小さな店だったが、九四年度(3月期)出店数一三〇〇店、売上高一〇〇〇億円のモスバーガーも、この店を出発点にビッグ企業に成長したのだ。

現在は二階建て店舗で、一、二階合わせ約四〇坪、客席数五〇席。目と鼻の距離に強力なライバルチェーンマクドナルドが存在するので、賑わいがうすいという印象を受けるが、しかし、モスの手づくり的で温かみのある店舗運営は、独自の集客力を発揮しており、月商一〇〇〇万円前後をキープしている。

人気メニューは看板商品のテリヤキバーガー二九〇円、モスバーガー二八〇円、チリドッグ、テリヤキチキンバーガー各二九〇円など。

営業時間午前6時~翌朝2時まで。マックの吸引力に対しては営業時間の長さで、売上げをカバーするという営業戦略だ。

東上線成増駅南口。バスとタクシーの乗降場(ロータリー)になっており、この空間を囲むように商業ビルが林立している。

バスは練馬区のマンモス団地光が丘や大泉、石神井などの住宅街を結ぶ有力な交通手段になっているので、朝夕は地下鉄有楽町線成増駅の利用を含め、通勤、通学などの乗降者で、駅前は都心と変わらない混雑ぶりを呈する。

南口を出て西側に歩く。商店街のアーチがかかっており、「成増商店街」とある。この商店街を道なりに行くとダイエーにたどり着くが、入り口右側にマクドナルドが出店している。

昭和53年9月開店。地下一階、地上一、二階の三フロア合わせて店舗面積約五〇坪、客席数一二三席の規模で、駅前の賑わいに大きく花を添える存在だ。

平日は昼が主婦、OL、サラリーマン、夜(夕方)が学生、OL中心、といった客層で、客単価は五三〇円。

土・日にはファミリー客の利用も増えるが、客数は平日を一とすれば、土・日は一・五倍の増加になる。

ハンバーガー商品であること、マクドナルドの絶大なストアブランドが吸引力となって、平日、土・日の客数に大きなギャップはないということだ。

平均日商六〇~七〇万円。イートイン七割に加えては、テークアウト三割もある。営業時間午前7時~午後10時。

12月6日までベーコンチーズ・ダブルバーガー一九〇円の「マックグルメスペシャル」(低価格)のキャンペーン中。

モスバーガーの前から道なりに行く。道がT字型になって左に折れるが、即左側にケンタッキーフライドチキンが出店している。

昭和58年11月のオープン。五階建てビル一、二階での出店で、店舗面積二〇坪、客席は一階がサービスカウンター、二階五〇席の規模。

駅前から離れた立地で、しかも裏通りであるので目立たない存在にあるが、月商七五〇万円とペイラインは越えている。

客層は昼がOL主体、夕方から夜にかけては学生、カップル、主婦など。客単価八五〇円。

客の利用形態は、土・日は終日安定した客の流れがあるので、平日の一・八倍に増加する。営業時間は午前9時30分~午後9時。

駅南口に戻る。ロータリーを南側に進む。正面に地上五階、地下一階建ての商業ビルが展開する。

地下一階に居酒屋チェーンの村さ来、庄やが出店している。競合店同士が“呉越同舟”するという図式だが、地域には集客力の大きい居酒屋チェーンは少ないので、現在のところ“共存共栄”しているという状況だ。

村さ来はFC店で一〇年前のオープン。オーナーはホットウェーブ(本社・志木)で、東上線沿線には成増店を含め五店舗を出店している。

成増店は店舗面積二五坪、客席数六〇席。中高年のサラリーマン層に多く利用されており、固定客が五、六割を占める。

天ぷら、焼魚、刺身類が評判の店で、チェーン店でありながら、ベテランの料理スタッフを置いている。

味づくりは素材を引き立たせるためにうす味、ソース類も自家製と店の個性をアピールしているのだ。

「チェーン店だからといっても、どこかに個性がなくては客に飽きられてしまう。客数をとるために無理して価格を引き下げても、自分の首を締めるだけ。やはり、料理の質と値ごろ感でお客さんにアピールしていくということじゃないでしょうか」(鈴木店長)

月商七〇〇万円。営業時間午後5時~翌朝1時。

庄やのオープンは昭和61年3月。村さ来と同時期の出店だ。店舗面積三四坪、客席数八〇席。

村さ来に比べやや大きい店舗規模だが、農家風の店づくりは同じだ。客層もほぼ変わらないが、ゆったりとした座敷席があるので、宴会・グループ客の利用が多く、独自集客力を発揮している。

月商八〇〇万円前後。営業時間午後5時~翌朝4時。庄やは食事メニューのバリエーションもあるので、深夜までの営業で二次会客や商店従業員などの飲食ニーズに対応する店舗運営だ。

ロータリーから川越街道に出る。ケヤキ並木の成増商店街を八〇mほど南へ。成増交差点で、東西を貫くのが川越街道、さらに南に伸びるのが成増商店街で、光が丘団地や石神井方面に行くバス道路にもなっている。

この交差点の周辺にデニーズをはじめ、京樽、ミスタードーナツ、吉野家といった大手外食チェーンが展開している。

デニーズは平成元年12月の開店。交差点角のビルの二階での出店で、店舗面積八〇坪、客席はカウンター、テーブル、ボックス席とあり、計四〇人を収容できる。

二四時間営業で、客層はサラリーマン、OL、主婦、ファミリー、カップルと多様。

平均客単価一〇〇〇円前後。人気メニューは日替りパスタランチ八八〇円、ハンバーグ、カキフライ各一〇八〇円などで、地域唯一のファミリーレストランだけに、集客は平日、土・日ともに安定している。年商二九〇〇万円。全デニーズの中でも売上げ水準の高い店だという。

同じビルの一階に京樽が出店している。八年前のオープンで、イートイン主体の江戸前すしの店だ。店舗面積四〇坪、客席数八〇席。

客層は昼が主婦、サラリーマン、OL、グループ客など。夜は会社帰りのサラリーマンやグループ、ファミリー客など。

客単価は昼八五〇~九五〇円、夜はアルコールが出るので一五〇〇~一九〇〇円、とくに金曜日には二五〇〇円にハネ上がる。

昼はランチ七五〇円が人気。八割がランチ客で占められる。夜はすしに茶わん蒸し、汁物付き一五〇〇円がよく出る。

月商一二〇〇万円。土・日は地域のファミリー客が増えるので、平日の三割アップの客数増になる。

ミスタードーナツも交差点角地、ビル一階での出店だ。オープンは昭和55年4月。FC店で店舗面積四〇坪、客席数四二席。

客層は若い女性や主婦、サラリーマンなど、客単価五〇〇~六〇〇円、月商一四〇〇万円。営業時間午前6時~翌朝2時。

ミスタードーナツから二〇mほど西側、牛丼の吉野家は平成5年5月開店の直営店。店舗面積二〇坪、客席数三八席。二四時間営業で、客層は若いサラリーマンや学生、ドライバーなど。月商一二〇〇万円を確保している。

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