海外通信 外食ビジネスの新発想(42)ニューノーマル下の行方

2021.07.05 509号 13面
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 ●新しい食体験への関心 人気高まるテイスティング・メニュー

 6月半ば現在、総人口の過半数が少なくとも1回の新型コロナウイルスのワクチン接種を済ませ、コロナ禍の終息が見えてきたアメリカ。1年以上にわたってさまざまな自粛を強いられた外食産業にも、ようやく明るい兆しが見え始めた。中小企業局は、飲食店の活性化基金の受け付けを開始。条件を満たせば、事業所ごとに500万$までの支援金を提供する。1$=110円レートとすれば、5億5000万$という大型支援だ。2023年の3月11日までに承認された目的に沿って使用すれば返済を免除されるが、期限前に倒産したり、承認された目的以外に使用した場合は、返済が義務付けられる。

 アメリカの外食産業の売上げの4分の1が観光関連とされるが、観光都市のニューヨーク市では、飲食店の5軒に1軒が閉店している。今年の観光客数は、パンデミック前の19年よりも3000万人少ない見込み。そこで市当局は、3000万$を投じて観光客呼び込みキャンペーンを始めた。その一環で、主なスポットで無料のコロナワクチン接種を提供。ワクチン接種証明書をお土産にしようという触れ込みだ。ブロードウェーも9月に再開。元に戻るのに24年までかかると見込んでいるが、まるでゴーストタウンだった街が、明らかに行き交う人や車の数が増えて、活気が出てきた。

 コロナ禍の最中は、飲食店は、テイクアウトやデリバリー、ミールキット、家で温めればいいだけのヒート&イート(もしくはヒート&サーブ)などで何とか生き残りを図ってきた。苦肉の策でデリバリーにトイレットペーパーを付けた涙ぐましいサービスもあった。

 再開し始めたとはいえ、まだ過渡期にある目下の注目は、シェフお薦めの小ぶりの料理で構成されたおまかせコースの「テイスティング・メニュー」だ。有名なフランス料理レストラン「パー・セ」も、9品のテイスティング・メニュー(355$)のみで、2時間半かけてゆっくり楽しむ。ヒューストンの「ヒドン・オマカセ」では150$のテイスティング・メニューの予約が数週間先までいっぱいだという。ファイン・ダイニングだけに限らない。在庫を減らし、少数のスタッフで切り盛りできるメニュー開発をするようになった結果だ。ニューヨークのミッドタウンにある人気の居酒屋レストラン、「酒蔵」も、アラカルトメニューをやめ、5品のプリフィックス・メニュー(85$、酒ペアリングは135$)のみに絞っている。

 テイスティング・メニューの人気が高い理由は、手料理やテイクアウト、デリバリーで過ごした後、プロの料理人が丹念に時間をかけ、創意して作るコース料理を、日常とは異なる空間で堪能してみたいという思いがある。料理人側にとっても、腕前を発揮できる上に、客全員に一律の料理を出すわけだから、コストも労力もセーブすることができる。市場が完全に戻りメニューが拡充されてからも、テイスティング・メニューは定番になるだろうと見込まれる。ミールキットやヒート&サーブも引き続き需要が予想されるという。また、食事の一部を手作りし、一部を外食店から購入するブレンド食もニューノーマルになりそうだ。

 大勢でシェアする料理ではなく、シングル・サービングが主流になるという予測をする専門家もいる。メイソンジャーのサラダやカップケーキも人気復活となるかもしれない。

 クイックサービス業界では、コロナ禍の最中も、グルメなチキン・サンドイッチが次々に新登場していたが、植物ベースの代用肉メニューも、ますます伸びるとされる。

 ヘルシーな食事に対する意識もより高まったが、今後は、炭水化物をまったく食べないというような極端なダイエットではなく、例えば玄米やキノーラなどの炭水化物などを取り入れ、包括的に食べようという意識が強くなるだろうという。つまり、好きなものをシャットアウトするのではなく、好物をもヘルシーに食べようというのが新しいトレンドだ。

 「コンフォート・フード」と「ノスタルジア」もキーワードとなり、古き良きアメリカ料理も見直されるが、同時に、新しい食体験への好奇心が高まり、珍しい食材や世界各国の料理にも目が行くことが予想される。

 自宅で過ごすことの多かった1年余り。自分で料理をすることが多くなり、食に対する関心や知識も増えた。再開が始まった今や、消費者は、長い間味わうことのできなかったさまざまな外食体験に期待している。

 【写真説明】

 写真1:コロナ禍の最中も衰えることのなかったチキン・サンドイッチ戦争。今年になって「マクドナルド」もクリスピーチキン・サンドイッチ3種を新登場させた。バーガーキングも「Ch’King」と呼ばれるチキン・サンドイッチを新発売。チキンは今や外食業界の花形だ (C)MacDonald’s Corporation

 写真2:今年2月に「マクドナルド」とパートナーシップを組んだ「ビヨンド・ミート」。「バーガーキング」「ダンキン」「ケンタッキー・フライド・チキン」「カールズ・ジュニア」「ハーディーズ」などはすでに代用肉を採用。今後、植物ベースの代用肉市場はさらに広がっていくと予想されている (C)Beyond Meat

 写真3:外出規制が続いた1年余り。「クリスピー・クリーム・ドーナツ」のトロピカルなドーナツ3種。「ピナコラーダ」「アイランドタイム」「キーライム」で気分は南国へ。各1$89¢。同店では、ワクチン接種済みの証明書を見せると、ドーナツ1個無料のサービスを展開中 (C)Krispy Kreme

 写真4:「スイートグリーン」のメニューに新登場した「ナオミ・オーサカ・ボウル」(12$95¢~14$95¢)。同チェーンは、大坂なおみ選手とパートナーを組んで食のあり方を追求することになった (C)Sweetgreen

 写真5:「ダンキン・ドーナツ」の新メニュー、ココナツ・リフレッシャー3種。ココナツ、オーツ、ソイなどのノンデイリー・ミルクがますます広まるとされる中、定番メニューに加わった (C)Dunkin

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