アパレルに学ぶ盛り付けのヒント:暑い秋に“シアーベロア”
●異素材の組み合わせが多彩に
猛暑が続くなかでも、ファッションの秋物は8月には店頭に並び始めます。前回、“バレエコア”のトレンドで紹介したように、透明感や光沢のある素材が人気ですが、そこにベロアを組み合わせる傾向が出てきました。
ベロアは英語のvelourで、本来は生地の表面が毛羽立つウールのパイル織物の意味でした。しかし、時代の移り変わりのなかで、最近は光沢のあるベルベットに似せたニット(編み物)生地を指すことが多くなりました。
今秋冬物で浮上しているベロアは、かなり薄手の“シアーベロア”と呼ばれます。ブラウスやカットソーアイテムをシアーベロアで作るだけでなく、チュールのような透ける生地に微細な毛羽を吹き付けて接着させるフロッキー加工という手法も多く見られます。フロッキー加工は、毛羽のある立体的な模様をさまざまに作れるので、ベースになる生地とのコントラストの違いが楽しめる利点があります。
透ける素材を使ったシアートップが流行し始めたのが2020年~21年ごろで、おしゃれと気温調整の面もあって定着しました。この流れでチュールのトップも広がりましたが、夏っぽい印象が強いのも否めません。このため、秋らしさを出すのに、ベロアが着目されました。透けて、涼しい生地を土台にしつつ、リッチな感じのある毛羽立ちと肌ざわりのよさを両立します。異素材の組み合わせの応用は、まだまだ続きそうです。
(繊研新聞社 取締役編集局長 若狭純子)