看板料理に学ぶヒットの秘訣:キラク「ビーフカツ」
◆ノウハウが詰まった直球勝負メニュー ベリーレアのおいしさが味わえるカツ
ポピュラーな料理でありながら、ビーフカツを売り物にする店は少ない。人形町「キラク」のビーフカツはその意味では、例外に属する看板メニューといっていい。終戦直後の創業以来守りぬいてきたスタイルは今も変わらず、カウンターだけの小さな店ながら、このビーフカツを求めるお客で常にウエーティングがかかる繁盛店だ。
料理自体は極めてシンプルで、何のひねりもない直球勝負の商品だ。ただ、それだけにこの商品には隠れたノウハウがギッシリと詰まっている。
ビーフカツという料理の最も難しい点は、肉の火通り加減の調整にある。牛肉のうまさはその肉汁にあるといわれるが、キラクのビーフカツは、その肉汁のうまさをどう損なわずに提供するかという一点にノウハウが集約されている。40g弱の小さめのものを3ピースにしているのは、小さなほうが火通りの管理がしやすいからだろうし、薄めのサラッとしたバッターミックスと、ごく細かくひかれたパン粉は揚げ油の温度が手早く、素直に伝わることを狙いとしたものといえる。
さらに揚げ方も独特だ。煙が立つほどの高温で、投入後は衣の揚げ色が付く程度。時間にして30秒ほどで引き揚げてしまう。中心部の品温は余熱で温まる程度で、切り口を見れば、衣からわずか1~2mmの色変わりが確認できる程度。ステーキでいえばベリーレアの状態だ。まるでステーキのような牛肉のおいしさが味わえるカツレツ。このコンセプトが60年の繁盛を支えるヒット商品を生んだのだ。
●「キラク」東京都中央区日本橋人形町2-6-6
●プロフィル
押野見喜八郎(おしのみ・きはちろう) FSプランニング代表。1946年千葉県生まれ。東京ヒルトンホテルを経て外食マーチャンダイザーに転身。多数の外食専門校で活躍するほか、外食企業の商品開発、食品企業の業務用食材開発を手掛けるなど、わが国のメニュー政策指導の第一人者として知られる。「外食新メニュー実用百科」(日本食糧新聞社)など著書多数。














