寒天特集

水産加工 2021.01.29
寒天特集

 冬場の天然製造が山場を迎えている寒天業界。今シーズンは、「何年かぶりの恵まれた天候」(長野県寒天水産加工業協同組合・五味徳雄組合長)で、順調な製造作業が進んでいる。一方で、需要は新型コロナウイルスの感染拡大が長期化する中、原料用途で大きなウエートを占める和菓子ニーズの停滞などで苦戦。内食化の追い風を受ける家庭用では、粉末寒天をベースにしたデザート製品などが順調な売れ行きを見せているが、業務用関連のダメージは大きく、川上と川下で寒暖差がくっきりと分かれている。
 製造現場に安堵(あんど)感をもたらしているもう一つの要因が、寒天の原料海藻、原藻価格の下落。テングサ科原藻の20年1~11月期輸入量は、コロナ禍に伴う製品需要の停滞などで前年同期を16.1%下回り、10kg当たりの平均価格も10.9%下がった。実際の取引では「2~3割は安い」(五味組合長)相場で動いており、国産天草の価格も製品需要の低迷でダウン。17~18年をピークとした原藻高騰は落ち着きを取り戻し、今後さらに安値へ進むと期待されている。
 コロナ禍で大きく変化した需要の形。トップメーカー・伊那食品工業の塚越英弘社長は、「原料素材としてだけでなく、寒天そのものをおいしく、楽しく、健康的に食べられる商品づくりが鍵」と話す。アフター・コロナの出口はいまだ見えないが、伝統に多彩な物性開発による先進性、豊富な食物繊維がもたらす機能性など、さまざまな価値を併せ持った“ニューノーマル”へ、寒天は進化を見せ始めている。(長野支局長=西澤貴寛)