特集・イタリア料理 バブル弾けて健全化

1994.04.04 49号 10面

イタリア料理が元気だ。かつての“イタメシブーム”とは違って、古典的な料理にこだわる店や、和の食材をたくみに利用して“和風”に仕上げたり、またフランス料理風に盛りつけたりするなど、きわめてバラエティーな広がりをみせている。「長びく不況の影響で値ごろ感のあるイタリア料理が見直されている」という指摘もあり、ホテルでも“イタリアフェア”を催して人気を集めている。

「バブルが崩壊して、イタリア料理はかえって健全になった」(「モランディ」奥村忠シェフ)といわれている。「バブル時代にイタリア料理店が雨後の竹の子のように出店した。その結果、イタメシがメジャーになった。その後バブルが崩壊して、しっかりした店が残り、新たな展開をみせている」というわけだ。

料理だけでなく、イタリアワインの良さも見直されている。「バブル時代にはイタリア料理を食べながら、高価なフランスワインを注文するお客さんが多かった」(奥村氏)。見栄を張って、料理に不釣り合いな高級フランスワインを飲んでいた客が減り、実質価値のあるイタリアワインを楽しむ客が多くなっていることだ。

料理だけでなく、イタリアの文化をトータルで日本に紹介している「文流」の近藤芳郎取締役総調理長は「イタリア料理が人気になっている理由はイタリアのもっている豊かで大らかなイメージだ」と説明する。本来のイタリア料理は土地に根ざした家庭料理で、その土地で産出した食材を利用して家庭のぬくもりの味に仕上げるのが特徴。したがって、イタリア本国でも北と南では食材も異なり、調理法も違ってくる。「本格的イタリア料理」と銘打っても、魚介や野菜の質はイタリアと日本では異なり、できあがった料理の味も、似て非なるものになってしまう。「日本人が必死に頑張ってもイタリア人の作るスパゲティには勝てない。そのことを知るべきで、そうすれば、もっと楽しく料理することができる」(近藤氏)という。「ただ、日本の料理人は流行に走り過ぎるきらいがある。流行を取り入れても味のハーモニーを失わないようにしなければいけない」と意見する。

イタリア料理の特徴は気どらずに、家庭的な雰囲気の中で食べるところにあることから、店構えはトラットリアにしているところが多く、今後の展開もそれが主流のようだ。その一方で、不況を反映して値ごろ感を出した居酒屋風の店も多くなるだろう。昼はレストラン、夜は居酒屋といったイタリア料理店の“二毛作”の新業態である。夜の客をどう取り込むかはイタリア料理店にとっても課題で、接待費でなく自腹で手軽に食べられる店作りがひとつのコンセプトになりそうだ。

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