お店招待席 ステーキ「三田屋本店」(池袋・西口) 子供ステーキも

1993.07.19 32号 22面

《創業者廣岡償治氏》 池袋西口は「SPICE2」の三階。この店は、兵庫県三田市の出身で、近畿大学農学部に学び、ドイツでハム作りを習得し、ついに独自の食文化を興こした廣岡償治氏の精神を受継いだ店だ。

その精神は、北大路盧山人に通じるものがある。食に関するものは食材はもとより、料理を盛り付けする器もすべて手造り。いわば食芸術(フードアート)の追求だ。

「料理は単においしければよいのか。食は生命活動のすべてだ。食はやすらぎ、また芸術でもある。だから心の創造に帰結する」という廣岡償治の精神を継承して、看板料理の牛肉は地元三田で肥育した三田牛。前菜のハムは自家製のオリジナル、米、野菜類も三田で穫れた無農薬のもの。そして、食器も三田で焼いた三田青磁という徹底したこだわりで、独自のレストランビジネスを展開している。

廣岡氏は、昭和62年8月、ガンのため惜しくも四三歳の若さで亡くなったが、氏の精神を引き継いだ形で、三田市の本店ほか、六年前に東京進出を果たした自由ヶ丘店、そして東京二号店目としてこの池袋店が存在する。

池袋店は約一〇〇坪。八〇~一〇〇席の規模で、内装は木造りの優雅な雰囲気をアピールしており、客席正面には能舞台を設け、格調高い気品さえ感じられる。

料理はコース料理のみで、これは三田牛のヒレ肉をメーンディッシュに、自家製ハムのオードブル、スープ、野菜サラダ、ステーキ、ご飯、フルーツという内容。

《従業員はワラジで》 アイテム数はAコース(ランチ‐九〇㌘)一九〇〇円、ダブル(同‐一八〇㌘)二二〇〇円、Bコース(一二〇㌘)、Cコース(一八〇㌘)五三〇〇円、Sコース八〇〇〇円ほか、子供ステーキ二五〇〇円、子供ランチ一二〇〇円があり、計七種類をラインアップしている。

人気メニューはCコースで、客層は主婦、女性客が全体の七割を占める。アルコールは直輸入のドイツワインほか、ビール、日本酒の大吟醸(冷酒)も揃えており、さらに食事の雰囲気をより豊かにするために、昼夜三ステージずつ、ピアノ、バイオリン、琴、フルートの生演奏を行っている。

その中を従業員が足音をたてないということで、ワラジ履きで接客するという気の遣い方をしている。客は地域、沿線はもとより、口コミで遠くからもやって来る。

「店の売りものは、味の芸術品といわれております三田牛のステーキですけど、これに関わるご飯も野菜も、すべて最高の品質のものをということを心掛けており、三田市には自前の農場も所有しております。また、食器類についても、幻の陶器といわれる三田青磁を甦らせて、自前の窯元で造らせております」(藤巻順一支配人)。

外食時代といわれるなかにあって、これだけトータル的に本物、本質を追求しているのも珍しい。口コミで客が広がっているというのも道理で、集客力の弱い東武のSPICE2にあっては、独自のファンを増している。

・住所/東京都豊島区西池袋一‐一〇‐一〇

・電話/03・3982・6541

・営業時間/午前11時~オーダーストップ午後10時

(しま・こうたつ)

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