世界の人気食材 「マンゴー」複雑な甘さと特異な香りで魅了

1996.06.17 103号 21面

マンゴーが大きな食材として成長してきた。日本ではエソニック・フルーツ、欧州ではエキゾチック・フルーツと呼び、ともに珍しい果物の意であるが、この珍しさが消えて親しまれる果物と変わってきた。

日本にはメキシコ、フィリピン、インドネシア、タイ、インドなどと産地を変えて周年供給され、しかも価格は一段と安くなって身近な存在となってきた。生食としても優れているが、加工適性が抜群で、いろいろな味が楽しまれる。

このマンゴーの原産地はマレー半島、ミャンマー、インド北部とみられ、アレキサンダー大王の遠征軍により、バナナとともにヨーロッパに紹介された。歴史の古い果物である。

品種は分化して、現在では五〇〇種以上、果実は卵形、長楕円形、腎臓形などとさまざま。インドのアルフォンソ、フィリピンのカラバオ、インドネシアのアルマニスが世界の三大優良品種として知られている。

味は複雑な甘さとともに、独特の香りがあり、松ヤニ臭がプンと感じられる。柔らかでねっとりとして、口に溶ける風合いは非常に濃厚のため、初めて食べる者には異様な味と感じられるが、慣れるとかえって魅力を増す。

果肉はこってりとして、酸味はみられないが、何ともいえぬうまみがあって、あとを引くようになる。これがマンゴーの醍醐味で、千金をはたいても食べる価値があるとして、熱帯を代表する味、トロピカル・フルーツの王者とよばれるゆえんである。

生食がポピュラーで、魚を三枚におろすように三つに切り、スプーンですくって食べる。少し手を加えると新しい味が生まれ、レストランや加工食品メーカーにとって興味深い食材と変わる。

●ジュース用=果汁が多いのでジュース用に。フレッシュジュース、缶詰ジュースともにうまい。インドではそのまま濃厚な味が楽しまれ、タイでは柑橘系を加えてさっぱり味に。

●アイスクリーム・シャーベット用=美味で味が引き立つ。彩りも美しい。これをレストランの名物としているところもあり拡大必至。

●プディング用=日本のメーカーでシンガポールや香港で大成功。レストランのデザートとして、マンゴー・オイル、マンゴー・エッセンスを加えると卓越した味となる。

●焼きマンゴー=三枚におろし、果肉に切れ目を入れ、ブランデーを注ぐ。焼くというよりオーブンで熱くなる程度にする。

●ジャム用=インド、ミャンマーではジャム加工が盛んである。単独でもよいが、柑橘系を加えてミックスジャムもよい。

●ムース用=マンゴーピューレ、オレンジジュース、ラム酒、ゼラチン、卵白、ホイップクリームを用意。本格的高級デザートとなる。

●チャツネ用=カレー料理には欠かせない薬味。未熟マンゴー、完熟マンゴー、唐辛子、ショウガ、ニンニク、赤砂糖、塩が主原料。イギリスからのびん詰製品も輸入されている。

●塩漬けや砂糖漬けの素材に=青いマンゴーは酸味が強く野菜として利用。ピクルスとして盛んに食べられ、パパイヤとのミックスもよい。

●その他=マンゴーソース、マンゴードレッシング、マンゴーペースト、マンゴーパイなどに活躍期待。缶詰、冷凍、乾燥品も。

加工性に優れ、また他の果物とミックスしても相性が良い。マンゴーは世界のフルーツのターミナル(終着駅)とよばれ、一度味を覚えるとファンは固定し消費は拡大に向かう。成長性大。

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